A Study about the Effects of Jigsaw-JPE in Physical Education in the Middle Grade of Elementary School

Saki Tohkairin, Hidenori Tomozoe, Takeshi Yoshinaga
{"title":"A Study about the Effects of Jigsaw-JPE in Physical Education in the Middle Grade of Elementary School","authors":"Saki Tohkairin, Hidenori Tomozoe, Takeshi Yoshinaga","doi":"10.7219/JJSES.38.1_1","DOIUrl":null,"url":null,"abstract":"The purpose of this study was to examine the effects for facilitating student interaction in physical education which applied Jigsaw-JPE proposed by Tohkairin et al. (2017) in Japanese elementary school. The participants were nineteen students of 4 grade and a male teacher who have experienced 16-year teaching, and the unit focused on modified prell ball. As the results, the student interaction was facilitated by using JigsawJPE in the unit, and implementation in 4 grade was possible although few studies have focused on younger children as participants for Jigsaw method in PE. However, it should be emphasized that to set easy and clear tasks for student learning is needed when Jigsaw method is implemented in PE. Furthermore, equal occasions to perform their skills would be important for every student regardless the motor-skill ability or personality. In other words, it would be important to facilitate children’s interaction which in a chance to perform their skills with ensuring two important elements of Jigsaw method, individual accountability and equal contribution. In addition, implementation of Jigsaw method in units which focus on corrective game could be smooth to use it because teamwork would be important in both of corrective game and Jigsaw method. ス ポ ー ツ 教 育 学 研 究 <原著論文> 2018. Vol.38, No.1, pp. 1-20 スポーツ教育学研究 第 38巻 第 1号 平成 30年 5月 ─ 2 ─ 1.はじめに 2008(平成 20)年に改訂された現行の小学校 学習指導要領では、その改善の基本方針として、 体育が身体能力を身に付けることだけでなく、集 団的活動や身体表現などを通じたコミュニケー ション能力の育成や、練習や作戦を改善するため の方法を話し合う活動による論理的思考力の育成 にも資するとの内容が示されている(文部科学省, 2008)。この内容からは、体育授業において他者 との関わり合いを保障していくことの必要性がう かがえる。そして、例えば、21世紀型能力(国 立教育政策研究所,2015)や社会人基礎力(経済 産業省,2006)等、体育以外の様々な場面におい ても、他者との関わり合うための力が同様に強調 されていることに鑑みれば、今後の体育授業にお いて、そのような力を育成する授業づくりへの視 点は、より一層重要なものになるといえよう。 上述のような授業の実現に有効な方策の 1つ に、「子どもたちに、自分自身と他者の学びの向 上を支え合うために、小グループで共に活動す ることを求める学習」 (Jolliffe, 2007, p.3) である、 Cooperative Learning(以下, 協同学習モデル) が 挙げられる。Dyson and Casey (2016) は、体育授 業における協同学習モデルの研究はこの 10年ほ どで着目されるようになり、その実践の際には、 協同学習モデルの理論的基礎となるアプローチ の 1つを作ったジョンソンらによる 5つの基本 的構成要素を取り入れることが重要であると述べ ている。その要素とは、1肯定的相互依存、2個 人の役割責任、3促進的な相互作用、4社会的ス キル、5グループによる改善手続き、の 5つで ある(ジョンソンほか,2010)。また、Casey and Goodyear(2015)は、体育授業における協同学習 モデルが、身体、認知、社会性、情緒の 4領域す べての発達を促すことを、体育授業や体育的活動 に協同学習モデルを適用した実践研究に関する先 行研究のレビューによって明らかにしている。 協同学習モデルは、体育授業における学習指導 モデル論を展開したMetzler(2011)によっても 効果的なモデルの 1つに挙げられているが、実際 の授業への適用については、検討しなければなら ない課題もいまだ多く残されている。その 1つ が、「ストラクチャー」に関する課題である。体 育授業における協同学習モデルの適用の際には、 授業者は「ストラクチャー」と呼ばれる学習者同 士の関わり合いを生み出すための構造化された手 順を理解し、取り入れることが重要であるとされ ており(Dyson and Casey,2012)、また、それら のストラクチャーは、単元や授業のゴールを見据 えた上で選択されることが望ましいとされている (Metzler,2011)。そうであるにも関わらず、各 ストラクチャーがもたらす成果について明確に なっているとは言い難い。 ジグソーと日本へのその紹介 Metzler(2011)が体育授業において有効な 5 つのストラクチャーとしたうちの 1つに「ジグ ソー」と呼ばれる手法を挙げることができる。ジ グソーは、学習者が特定の 1つの課題の達成に向 けて、少人数の異質グループで活動する手法であ り、1970年代に Aronsonらによって考案された (Aronson et al.,1978)。このジグソーでは、実施 の前段階において、課題全体がグループの人数分 に分割される。オリジナル版では、例えば、各グ ループのリーダーの養成などの細かな活動も含ま れるが、メインの活動の手順は大きく 3段階に分 けられる。第 1段階では、各グループでそれぞれ の部分の担当(エキスパート)を決定する。続く 第 2段階では、他のグループの同エキスパートと、 担当部分を深く理解する(エキスパート活動)。 そして最後の第 3段階では、各エキスパートは 学習した内容を元のチームに持ち帰り、他のメン バーに教える(ジグソー活動)。第 3段階の活動 をグループの人数分繰り返すことで課題全体の理 解が可能となる。 日本においては、蘭(1980)によるジグソーを 紹介する論文と、その後の、小学生を対象とした 行動特性への影響に関する研究(蘭,1981)、お よび学業成績への影響に関する研究(蘭,1983) が初期の先行研究として挙げられる。また、松山 によって翻訳されたアロンソンらの著書(1986) や、授業実践をまとめた筒井(1999)によっても 紹介された。現在では三宅ほか(2011)の取り組 みをはじめとして、知識構成型ジグソー法 が 協調学習の一手法として現場で受け止められてい る(友野,2016)。 スポーツ教育学研究 第 38巻 第 1号 平成 30年 5月 ─ 2 ─ 1.はじめに 2008(平成 20)年に改訂された現行の小学校 学習指導要領では、その改善の基本方針として、 体育が身体能力を身に付けることだけでなく、集 団的活動や身体表現などを通じたコミュニケー ション能力の育成や、練習や作戦を改善するため の方法を話し合う活動による論理的思考力の育成 にも資するとの内容が示されている(文部科学省, 2008)。この内容からは、体育授業において他者 との関わり合いを保障していくことの必要性がう かがえる。そして、例えば、21世紀型能力(国 立教育政策研究所,2015)や社会人基礎力(経済 産業省,2006)等、体育以外の様々な場面におい ても、他者との関わり合うための力が同様に強調 されていることに鑑みれば、今後の体育授業にお いて、そのような力を育成する授業づくりへの視 点は、より一層重要なものになるといえよう。 上述のような授業の実現に有効な方策の 1つ に、「子どもたちに、自分自身と他者の学びの向 上を支え合うために、小グループで共に活動す ることを求める学習」 (Jolliffe, 2007, p.3) である、 Cooperative Learning(以下, 協同学習モデル) が 挙げられる。Dyson and Casey (2016) は、体育授 業における協同学習モデルの研究はこの 10年ほ どで着目されるようになり、その実践の際には、 協同学習モデルの理論的基礎となるアプローチ の 1つを作ったジョンソンらによる 5つの基本 的構成要素を取り入れることが重要であると述べ ている。その要素とは、1肯定的相互依存、2個 人の役割責任、3促進的な相互作用、4社会的ス キル、5グループによる改善手続き、の 5つで ある(ジョンソンほか,2010)。また、Casey and Goodyear(2015)は、体育授業における協同学習 モデルが、身体、認知、社会性、情緒の 4領域す べての発達を促すことを、体育授業や体育的活動 に協同学習モデルを適用した実践研究に関する先 行研究のレビューによって明らかにしている。 協同学習モデルは、体育授業における学習指導 モデル論を展開したMetzler(2011)によっても 効果的なモデルの 1つに挙げられているが、実際 の授業への適用については、検討しなければなら ない課題もいまだ多く残されている。その 1つ が、「ストラクチャー」に関する課題である。体 育授業における協同学習モデルの適用の際には、 授業者は「ストラクチャー」と呼ばれる学習者同 士の関わり合いを生み出すための構造化された手 順を理解し、取り入れることが重要であるとされ ており(Dyson and Casey,2012)、また、それら のストラクチャーは、単元や授業のゴールを見据 えた上で選択されることが望ましいとされている (Metzler,2011)。そうであるにも関わらず、各 ストラクチャーがもたらす成果について明確に なっているとは言い難い。 ジグソーと日本へのその紹介 Metzler(2011)が体育授業において有効な 5 つのストラクチャーとしたうちの 1つに「ジグ ソー」と呼ばれる手法を挙げることができる。ジ グソーは、学習者が特定の 1つの課題の達成に向 けて、少人数の異質グループで活動する手法であ り、1970年代に Aronsonらによって考案された (Aronson et al.,1978)。このジグソーでは、実施 の前段階において、課題全体がグループの人数分 に分割される。オリジナル版では、例えば、各グ ループのリーダーの養成などの細かな活動も含ま れるが、メインの活動の手順は大きく 3段階に分 けられる。第 1段階では、各グループでそれぞれ の部分の担当(エキスパート)を決定する。続く 第 2段階では、他のグループの同エキスパートと、 担当部分を深く理解する(エキスパート活動)。 そして最後の第 3段階では、各エキスパートは 学習した内容を元のチームに持ち帰り、他のメン バーに教える(ジグソー活動)。第 3段階の活動 をグループの人数分繰り返すことで課題全体の理 解が可能となる。 日本においては、蘭(1980)によるジグソーを 紹介する論文と、その後の、小学生を対象とした 行動特性への影響に関する研究(蘭,1981)、お よび学業成績への影響に関する研究(蘭,1983) が初期の先行研究として挙げられる。また、松山 によって翻訳されたアロンソンらの著書(1986) や、授業実践をまとめた筒井(1999)によっても 紹介された。現在では三宅ほか(2011)の取り組 みをはじめとして、知識構成型ジグソー法 が 協調学習の一手法として現場で受け止められてい る(友野,2016)。 ─ 3 ─ 東海林:小学校中学年の体育授業におけるジグソー JPEの成果に関する研究 なお、本研究では、オリジナル版のジグソーを 指すときには「ジグソー」という語を用いること とし、その手法から発展した手法を全般的に表す 語として、「ジグソー法」という語を用いて論を 進めていくこととする。 体育授業におけるジグソー法あるいは知識構成型 ジグソー法を用いた研究 これまでの体育の授業実践では、ジグソー法の 成果に焦点を当てた例は僅かである。というのも、 ジグソー法を含む、協同学習モデルという大きな 視点からテーマを設定している事例がほとんどを 占めているためである。それらの先行研究で報告 されている主な成果としては、学習者のコミュニ ケーションスキルや社会的スキルの向上(Dyson, 2002;Goudas and Magotsiou, 2009)、他者との 協同的な作業への態度の向上(Polvi and Telama, 2009;Goudas and Magotsiou, 2009) や授業中の役 割の明確化(Dyson, 2001;2002)、個人の責任の 明確化(Dyson, 2002) 等が挙げられる。一方で、 Dyson(2002) は、その実施の際には問題が発生 しやすいことについても言及している。例として、 授業者側は容易に授業のイニシアティブを離せず に戸惑い、また、学習者側は他者との協同的な活 動の仕方を学ぶまでにしばしば対立を起こしてし まう等の問題である(Dyson, 2002)。しかし、こ れらの実践ではジグソー法を含めた複数のストラ クチャーを併用しているため、それらがどのスト ラクチャーによる成果なのかという点については 不明瞭な点が多いといえる。 では、少数ではあるものの、ジグソー法の成果 に着目した先行研究からはどのような成果と課題 が挙げられるであろうか。Barrett(2000)は、ジ グソーIIを体育授業用にアレンジした JigsawII -PEを用いた際の、学習者の試行回数の増加を報 告している。大学生の器械運動の実技実習を対象 にした O’Leary and Griggs(2010) は、技能レベ ルの低い学生の認知的および情緒的領域にはジグ ソー法が効果的であった一方で、技能レベルの高 い学生にとっては有効とはいえず、教え合いの過 程に問題が残ったことを明らかにしている。さら に、O’Leary et al.(2015) では、教師教育の観点 から、大学生による中学校でのジグソー法を用い た体育の授業実践を通し、授業の対象であった生 徒の技能、教授能力、社会的スキルの不十分さと いう問題が生じたこと、また、それらへの解決策 として、大学生側が持つ社会的スキルやチーム作 りのための手段に関する知識の向上や、生徒の学 習を支援するための準備に関する理解の必要性を 指摘している。 日本での事例として、垣内(2016) や兼城ほか (2015,2016)、また、栗田(2015a,2015b)や東 海林ほか(2017)が挙げられる。垣内(2016)は、 知識構成型ジグソー法を用いて役割分担を明確に したことによって、小学校 2年生の体づくり運動 においても、すべての学習者が能動的に学習を進 められたことを報告している。兼城ほか(2015, 2016)は、知識構成型ジグソー法を用いた中学校 での実践から、その適用が学習者の主体的な学習 を促し、学習内容への理解の深化と技能の向上へ とつながったことを報告している。 他方、栗田(2015a,2015b)は一連の研究にお いて、授業者が、単元進行に伴って授業への手応 えを感じながら協同学習モデル適用時の授業者と しての行動への理解を深め、学習者は、主に技能 習熟に関する相互作用を通して、社会・情意領域 の学習をもっとも実感していたことを報告してい る。 東海林ほか(2017)は、日本の体育授業にお ける協同学習モデルの実践研究における課題と して、3つを指摘している。1点目は学習者によ る授業評価に特に着目した検討の不十分さ、2点 目が個々のストラクチャーの適用の成果検証の 不十分さ、そして 3点目が日本における実践の 乏しさである。そして、これらの課題を踏まえ、 Metzler(2011)が有効なストラクチャーとして 5つ挙げたうちの 1つであるジグソー(Aronson et al, 1978) と、その発展形であるジグソーII 2) (Slavin, 1978) をアレンジしたジグソー JPEを用 いてその成果を検証している。ジグソー JPEは 「Japan」の「J」および「physical education」の「PE」 を表したものである。海外における先行研究では、 Barrett(2000)が JigsawII-PEを含む単元に 18 時間という長い期間を設定していたり、あるいは、 Aronson and Patnoe(2011) ではグループのリー ダーの養成の時間を設けているが、日本において スポーツ教育学研究 第 38巻 第 1号 平成 30年 5月 ─ 4 ─ は、小学校段階での 1つの単元は 8時間から 10 時間程度が一般的であるといえる。その点に考慮 し、短い時間でジグソー法の成果を挙げられるよ う、手順の簡略化による学習者への負担の軽減と、 授業者の活用のしやすさが意図されているのがジ グソー JPEである。その手順を図 1に示す。 東海林ほか(2017) の結果からは、体育授業に おけるジグソー JPEの適用は学習者同士の関わり 合いを促し、また、ジグソー JPEでの学習経験を 重ねることで、よりその効果が高まることが示唆 されている。学習者が単元を肯定的に受け止めて いたということに鑑みれば、ジグソーおよびジグ ソーIIからジグソー JPEへのアレンジは、その 実施段階では概ね妥当であったと考えられる。し かしながら、対象が小学校高学年 2学級のみであ り、扱った内容も器械運動のみであったため、ジ グソー JPEでの学習にどのような条件を設定する ことがこのような成果につながるのかについて検 討するには、データが不十分であると言わざるを 得ない。 以上の先行研究をまとめると、ジグソー法を用 いた体育授業は、他者との関わり合いの促進や学 習者の主体的な学習、技能の向上に寄与すると考 えられる。その一方で、教え合いの活動が中心と なるその実施においては、技能レベルや教授能力、 社会的スキルの差によってその効果に差が生じや すいともいえる。学習者同士の関わり合いを促す 授業づくりのための一手段としてジグソー法の活 用を視野に入れると、扱う内容や学年段階など、 どのようにジグソー法を適用することが効果を高 めることにつながるのか、その具体的な方策を明 らかにしていくことが必要であるといえる。 東海林ほか(2017) は、ジグソー JPEを適用し た実践を通して、今後の課題として以下の 4点を 述べている。1点目が、5年生以下の学習者と対 象とした実践における成果の検証、2点目が、器 械運動以外の運動領域における成果の検証、3点 目がエキスパートに与える課題の設定方法の検 討、そして 4点目が、実践の一層の蓄積である。 Aronson and Patnoe(2011) は、ジグソー法を 適用した授業の実施時間について、円滑な実施に は十分な時間が必要であることを述べ、加えて、 対象となる学習者の学年段階に関しては、教え合 いの活動が中心となる学習であることから、4年 生以上での実施を勧めている。しかし、中学年段 階での実践の可能性が検証されれば、早い学年段 階から授業に取り入れ、その適用の成果を一層高 められることも想定される。このことに鑑みれば、 特に小学校中学年以下での実践研究は、体育授業 のみならず少ない現状があるものの意義があると いえよう。 そこで本研究では、東海林ほか(2017)が残し た課題の 1点目および 2点目に主に着目する。し たがって、本研究の目的は、小学校中学年の集団 種目を対象としたジグソー法を適用した学習者同 士の関わり合いを促すため授業の検証を通し、そ の成果を明らかにすることである。 2.研究の対象・方法 本研究の対象は、東京都内 A小学校 4年生の 学習者 19名(男子 9名、女子 10名)、授業者は 教師歴 16年で体育科を専門としない男性教師で あった。実施期間は 2014(平成 26)年 11月 25 日から 12月 19日で、全 10時間のプレルボール を基にした易しいゲーム(以下, プレルボール) の単元にジグソー JPEを適用した。プレルボー ルはドイツ生まれのネット型のスポーツで、「低 いネットを挟んだコートで、ボールをワンバウン ドさせてパスしたりアタックして競い合うゲー ム」(岩田ほか, 2009, p.59) である。ワンバウン ドさせるため状況判断の時間が長く、また、身体 接触を伴わないというネット型の特徴により、運 図 1 ジグソー JPEの概略図 スポーツ教育学研究 第 38巻 第 1号 平成 30年 5月 ─ 4 ─ は、小学校段階での 1つの単元は 8時間から 10 時間程度が一般的であるといえる。その点に考慮 し、短い時間でジグソー法の成果を挙げられるよ う、手順の簡略化による学習者への負担の軽減と、 授業者の活用のしやすさが意図されているのがジ グソー JPEである。その手順を図 1に示す。 東海林ほか(2017) の結果からは、体育授業に おけるジグソー JPEの適用は学習者同士の関わり 合いを促し、また、ジグソー JPEでの学習経験を 重ねることで、よりその効果が高まることが示唆 されている。学習者が単元を肯定的に受け止めて いたということに鑑みれば、ジグソーおよびジグ ソーIIからジグソー JPEへのアレンジは、その 実施段階では概ね妥当であったと考えられる。し かしながら、対象が小学校高学年 2学級のみであ り、扱った内容も器械運動のみであったため、ジ グソー JPEでの学習にどのような条件を設定する ことがこのような成果につながるのかについて検 討するには、データが不十分であると言わざるを 得ない。 以上の先行研究をまとめると、ジグソー法を用 いた体育授業は、他者との関わり合いの促進や学 習者の主体的な学習、技能の向上に寄与すると考 えられる。その一方で、教え合いの活動が中心と なるその実施においては、技能レベルや教授能力、 社会的スキルの差によってその効果に差が生じや すいともいえる。学習者同士の関わり合いを促す 授業づくりのための一手段としてジグソー法の活 用を視野に入れると、扱う内容や学年段階など、 どのようにジグソー法を適用することが効果を高 めることにつながるのか、その具体的な方策を明 らか","PeriodicalId":119114,"journal":{"name":"Japanese Journal of Sport Education Studies","volume":"19 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Abstract

The purpose of this study was to examine the effects for facilitating student interaction in physical education which applied Jigsaw-JPE proposed by Tohkairin et al. (2017) in Japanese elementary school. The participants were nineteen students of 4 grade and a male teacher who have experienced 16-year teaching, and the unit focused on modified prell ball. As the results, the student interaction was facilitated by using JigsawJPE in the unit, and implementation in 4 grade was possible although few studies have focused on younger children as participants for Jigsaw method in PE. However, it should be emphasized that to set easy and clear tasks for student learning is needed when Jigsaw method is implemented in PE. Furthermore, equal occasions to perform their skills would be important for every student regardless the motor-skill ability or personality. In other words, it would be important to facilitate children’s interaction which in a chance to perform their skills with ensuring two important elements of Jigsaw method, individual accountability and equal contribution. In addition, implementation of Jigsaw method in units which focus on corrective game could be smooth to use it because teamwork would be important in both of corrective game and Jigsaw method. ス ポ ー ツ 教 育 学 研 究 <原著論文> 2018. Vol.38, No.1, pp. 1-20 スポーツ教育学研究 第 38巻 第 1号 平成 30年 5月 ─ 2 ─ 1.はじめに 2008(平成 20)年に改訂された現行の小学校 学習指導要領では、その改善の基本方針として、 体育が身体能力を身に付けることだけでなく、集 団的活動や身体表現などを通じたコミュニケー ション能力の育成や、練習や作戦を改善するため の方法を話し合う活動による論理的思考力の育成 にも資するとの内容が示されている(文部科学省, 2008)。この内容からは、体育授業において他者 との関わり合いを保障していくことの必要性がう かがえる。そして、例えば、21世紀型能力(国 立教育政策研究所,2015)や社会人基礎力(経済 産業省,2006)等、体育以外の様々な場面におい ても、他者との関わり合うための力が同様に強調 されていることに鑑みれば、今後の体育授業にお いて、そのような力を育成する授業づくりへの視 点は、より一層重要なものになるといえよう。 上述のような授業の実現に有効な方策の 1つ に、「子どもたちに、自分自身と他者の学びの向 上を支え合うために、小グループで共に活動す ることを求める学習」 (Jolliffe, 2007, p.3) である、 Cooperative Learning(以下, 協同学習モデル) が 挙げられる。Dyson and Casey (2016) は、体育授 業における協同学習モデルの研究はこの 10年ほ どで着目されるようになり、その実践の際には、 協同学習モデルの理論的基礎となるアプローチ の 1つを作ったジョンソンらによる 5つの基本 的構成要素を取り入れることが重要であると述べ ている。その要素とは、1肯定的相互依存、2個 人の役割責任、3促進的な相互作用、4社会的ス キル、5グループによる改善手続き、の 5つで ある(ジョンソンほか,2010)。また、Casey and Goodyear(2015)は、体育授業における協同学習 モデルが、身体、認知、社会性、情緒の 4領域す べての発達を促すことを、体育授業や体育的活動 に協同学習モデルを適用した実践研究に関する先 行研究のレビューによって明らかにしている。 協同学習モデルは、体育授業における学習指導 モデル論を展開したMetzler(2011)によっても 効果的なモデルの 1つに挙げられているが、実際 の授業への適用については、検討しなければなら ない課題もいまだ多く残されている。その 1つ が、「ストラクチャー」に関する課題である。体 育授業における協同学習モデルの適用の際には、 授業者は「ストラクチャー」と呼ばれる学習者同 士の関わり合いを生み出すための構造化された手 順を理解し、取り入れることが重要であるとされ ており(Dyson and Casey,2012)、また、それら のストラクチャーは、単元や授業のゴールを見据 えた上で選択されることが望ましいとされている (Metzler,2011)。そうであるにも関わらず、各 ストラクチャーがもたらす成果について明確に なっているとは言い難い。 ジグソーと日本へのその紹介 Metzler(2011)が体育授業において有効な 5 つのストラクチャーとしたうちの 1つに「ジグ ソー」と呼ばれる手法を挙げることができる。ジ グソーは、学習者が特定の 1つの課題の達成に向 けて、少人数の異質グループで活動する手法であ り、1970年代に Aronsonらによって考案された (Aronson et al.,1978)。このジグソーでは、実施 の前段階において、課題全体がグループの人数分 に分割される。オリジナル版では、例えば、各グ ループのリーダーの養成などの細かな活動も含ま れるが、メインの活動の手順は大きく 3段階に分 けられる。第 1段階では、各グループでそれぞれ の部分の担当(エキスパート)を決定する。続く 第 2段階では、他のグループの同エキスパートと、 担当部分を深く理解する(エキスパート活動)。 そして最後の第 3段階では、各エキスパートは 学習した内容を元のチームに持ち帰り、他のメン バーに教える(ジグソー活動)。第 3段階の活動 をグループの人数分繰り返すことで課題全体の理 解が可能となる。 日本においては、蘭(1980)によるジグソーを 紹介する論文と、その後の、小学生を対象とした 行動特性への影響に関する研究(蘭,1981)、お よび学業成績への影響に関する研究(蘭,1983) が初期の先行研究として挙げられる。また、松山 によって翻訳されたアロンソンらの著書(1986) や、授業実践をまとめた筒井(1999)によっても 紹介された。現在では三宅ほか(2011)の取り組 みをはじめとして、知識構成型ジグソー法 が 協調学習の一手法として現場で受け止められてい る(友野,2016)。 スポーツ教育学研究 第 38巻 第 1号 平成 30年 5月 ─ 2 ─ 1.はじめに 2008(平成 20)年に改訂された現行の小学校 学習指導要領では、その改善の基本方針として、 体育が身体能力を身に付けることだけでなく、集 団的活動や身体表現などを通じたコミュニケー ション能力の育成や、練習や作戦を改善するため の方法を話し合う活動による論理的思考力の育成 にも資するとの内容が示されている(文部科学省, 2008)。この内容からは、体育授業において他者 との関わり合いを保障していくことの必要性がう かがえる。そして、例えば、21世紀型能力(国 立教育政策研究所,2015)や社会人基礎力(経済 産業省,2006)等、体育以外の様々な場面におい ても、他者との関わり合うための力が同様に強調 されていることに鑑みれば、今後の体育授業にお いて、そのような力を育成する授業づくりへの視 点は、より一層重要なものになるといえよう。 上述のような授業の実現に有効な方策の 1つ に、「子どもたちに、自分自身と他者の学びの向 上を支え合うために、小グループで共に活動す ることを求める学習」 (Jolliffe, 2007, p.3) である、 Cooperative Learning(以下, 協同学習モデル) が 挙げられる。Dyson and Casey (2016) は、体育授 業における協同学習モデルの研究はこの 10年ほ どで着目されるようになり、その実践の際には、 協同学習モデルの理論的基礎となるアプローチ の 1つを作ったジョンソンらによる 5つの基本 的構成要素を取り入れることが重要であると述べ ている。その要素とは、1肯定的相互依存、2個 人の役割責任、3促進的な相互作用、4社会的ス キル、5グループによる改善手続き、の 5つで ある(ジョンソンほか,2010)。また、Casey and Goodyear(2015)は、体育授業における協同学習 モデルが、身体、認知、社会性、情緒の 4領域す べての発達を促すことを、体育授業や体育的活動 に協同学習モデルを適用した実践研究に関する先 行研究のレビューによって明らかにしている。 協同学習モデルは、体育授業における学習指導 モデル論を展開したMetzler(2011)によっても 効果的なモデルの 1つに挙げられているが、実際 の授業への適用については、検討しなければなら ない課題もいまだ多く残されている。その 1つ が、「ストラクチャー」に関する課題である。体 育授業における協同学習モデルの適用の際には、 授業者は「ストラクチャー」と呼ばれる学習者同 士の関わり合いを生み出すための構造化された手 順を理解し、取り入れることが重要であるとされ ており(Dyson and Casey,2012)、また、それら のストラクチャーは、単元や授業のゴールを見据 えた上で選択されることが望ましいとされている (Metzler,2011)。そうであるにも関わらず、各 ストラクチャーがもたらす成果について明確に なっているとは言い難い。 ジグソーと日本へのその紹介 Metzler(2011)が体育授業において有効な 5 つのストラクチャーとしたうちの 1つに「ジグ ソー」と呼ばれる手法を挙げることができる。ジ グソーは、学習者が特定の 1つの課題の達成に向 けて、少人数の異質グループで活動する手法であ り、1970年代に Aronsonらによって考案された (Aronson et al.,1978)。このジグソーでは、実施 の前段階において、課題全体がグループの人数分 に分割される。オリジナル版では、例えば、各グ ループのリーダーの養成などの細かな活動も含ま れるが、メインの活動の手順は大きく 3段階に分 けられる。第 1段階では、各グループでそれぞれ の部分の担当(エキスパート)を決定する。続く 第 2段階では、他のグループの同エキスパートと、 担当部分を深く理解する(エキスパート活動)。 そして最後の第 3段階では、各エキスパートは 学習した内容を元のチームに持ち帰り、他のメン バーに教える(ジグソー活動)。第 3段階の活動 をグループの人数分繰り返すことで課題全体の理 解が可能となる。 日本においては、蘭(1980)によるジグソーを 紹介する論文と、その後の、小学生を対象とした 行動特性への影響に関する研究(蘭,1981)、お よび学業成績への影響に関する研究(蘭,1983) が初期の先行研究として挙げられる。また、松山 によって翻訳されたアロンソンらの著書(1986) や、授業実践をまとめた筒井(1999)によっても 紹介された。現在では三宅ほか(2011)の取り組 みをはじめとして、知識構成型ジグソー法 が 協調学習の一手法として現場で受け止められてい る(友野,2016)。 ─ 3 ─ 東海林:小学校中学年の体育授業におけるジグソー JPEの成果に関する研究 なお、本研究では、オリジナル版のジグソーを 指すときには「ジグソー」という語を用いること とし、その手法から発展した手法を全般的に表す 語として、「ジグソー法」という語を用いて論を 進めていくこととする。 体育授業におけるジグソー法あるいは知識構成型 ジグソー法を用いた研究 これまでの体育の授業実践では、ジグソー法の 成果に焦点を当てた例は僅かである。というのも、 ジグソー法を含む、協同学習モデルという大きな 視点からテーマを設定している事例がほとんどを 占めているためである。それらの先行研究で報告 されている主な成果としては、学習者のコミュニ ケーションスキルや社会的スキルの向上(Dyson, 2002;Goudas and Magotsiou, 2009)、他者との 協同的な作業への態度の向上(Polvi and Telama, 2009;Goudas and Magotsiou, 2009) や授業中の役 割の明確化(Dyson, 2001;2002)、個人の責任の 明確化(Dyson, 2002) 等が挙げられる。一方で、 Dyson(2002) は、その実施の際には問題が発生 しやすいことについても言及している。例として、 授業者側は容易に授業のイニシアティブを離せず に戸惑い、また、学習者側は他者との協同的な活 動の仕方を学ぶまでにしばしば対立を起こしてし まう等の問題である(Dyson, 2002)。しかし、こ れらの実践ではジグソー法を含めた複数のストラ クチャーを併用しているため、それらがどのスト ラクチャーによる成果なのかという点については 不明瞭な点が多いといえる。 では、少数ではあるものの、ジグソー法の成果 に着目した先行研究からはどのような成果と課題 が挙げられるであろうか。Barrett(2000)は、ジ グソーIIを体育授業用にアレンジした JigsawII -PEを用いた際の、学習者の試行回数の増加を報 告している。大学生の器械運動の実技実習を対象 にした O’Leary and Griggs(2010) は、技能レベ ルの低い学生の認知的および情緒的領域にはジグ ソー法が効果的であった一方で、技能レベルの高 い学生にとっては有効とはいえず、教え合いの過 程に問題が残ったことを明らかにしている。さら に、O’Leary et al.(2015) では、教師教育の観点 から、大学生による中学校でのジグソー法を用い た体育の授業実践を通し、授業の対象であった生 徒の技能、教授能力、社会的スキルの不十分さと いう問題が生じたこと、また、それらへの解決策 として、大学生側が持つ社会的スキルやチーム作 りのための手段に関する知識の向上や、生徒の学 習を支援するための準備に関する理解の必要性を 指摘している。 日本での事例として、垣内(2016) や兼城ほか (2015,2016)、また、栗田(2015a,2015b)や東 海林ほか(2017)が挙げられる。垣内(2016)は、 知識構成型ジグソー法を用いて役割分担を明確に したことによって、小学校 2年生の体づくり運動 においても、すべての学習者が能動的に学習を進 められたことを報告している。兼城ほか(2015, 2016)は、知識構成型ジグソー法を用いた中学校 での実践から、その適用が学習者の主体的な学習 を促し、学習内容への理解の深化と技能の向上へ とつながったことを報告している。 他方、栗田(2015a,2015b)は一連の研究にお いて、授業者が、単元進行に伴って授業への手応 えを感じながら協同学習モデル適用時の授業者と しての行動への理解を深め、学習者は、主に技能 習熟に関する相互作用を通して、社会・情意領域 の学習をもっとも実感していたことを報告してい る。 東海林ほか(2017)は、日本の体育授業にお ける協同学習モデルの実践研究における課題と して、3つを指摘している。1点目は学習者によ る授業評価に特に着目した検討の不十分さ、2点 目が個々のストラクチャーの適用の成果検証の 不十分さ、そして 3点目が日本における実践の 乏しさである。そして、これらの課題を踏まえ、 Metzler(2011)が有効なストラクチャーとして 5つ挙げたうちの 1つであるジグソー(Aronson et al, 1978) と、その発展形であるジグソーII 2) (Slavin, 1978) をアレンジしたジグソー JPEを用 いてその成果を検証している。ジグソー JPEは 「Japan」の「J」および「physical education」の「PE」 を表したものである。海外における先行研究では、 Barrett(2000)が JigsawII-PEを含む単元に 18 時間という長い期間を設定していたり、あるいは、 Aronson and Patnoe(2011) ではグループのリー ダーの養成の時間を設けているが、日本において スポーツ教育学研究 第 38巻 第 1号 平成 30年 5月 ─ 4 ─ は、小学校段階での 1つの単元は 8時間から 10 時間程度が一般的であるといえる。その点に考慮 し、短い時間でジグソー法の成果を挙げられるよ う、手順の簡略化による学習者への負担の軽減と、 授業者の活用のしやすさが意図されているのがジ グソー JPEである。その手順を図 1に示す。 東海林ほか(2017) の結果からは、体育授業に おけるジグソー JPEの適用は学習者同士の関わり 合いを促し、また、ジグソー JPEでの学習経験を 重ねることで、よりその効果が高まることが示唆 されている。学習者が単元を肯定的に受け止めて いたということに鑑みれば、ジグソーおよびジグ ソーIIからジグソー JPEへのアレンジは、その 実施段階では概ね妥当であったと考えられる。し かしながら、対象が小学校高学年 2学級のみであ り、扱った内容も器械運動のみであったため、ジ グソー JPEでの学習にどのような条件を設定する ことがこのような成果につながるのかについて検 討するには、データが不十分であると言わざるを 得ない。 以上の先行研究をまとめると、ジグソー法を用 いた体育授業は、他者との関わり合いの促進や学 習者の主体的な学習、技能の向上に寄与すると考 えられる。その一方で、教え合いの活動が中心と なるその実施においては、技能レベルや教授能力、 社会的スキルの差によってその効果に差が生じや すいともいえる。学習者同士の関わり合いを促す 授業づくりのための一手段としてジグソー法の活 用を視野に入れると、扱う内容や学年段階など、 どのようにジグソー法を適用することが効果を高 めることにつながるのか、その具体的な方策を明 らかにしていくことが必要であるといえる。 東海林ほか(2017) は、ジグソー JPEを適用し た実践を通して、今後の課題として以下の 4点を 述べている。1点目が、5年生以下の学習者と対 象とした実践における成果の検証、2点目が、器 械運動以外の運動領域における成果の検証、3点 目がエキスパートに与える課題の設定方法の検 討、そして 4点目が、実践の一層の蓄積である。 Aronson and Patnoe(2011) は、ジグソー法を 適用した授業の実施時間について、円滑な実施に は十分な時間が必要であることを述べ、加えて、 対象となる学習者の学年段階に関しては、教え合 いの活動が中心となる学習であることから、4年 生以上での実施を勧めている。しかし、中学年段 階での実践の可能性が検証されれば、早い学年段 階から授業に取り入れ、その適用の成果を一層高 められることも想定される。このことに鑑みれば、 特に小学校中学年以下での実践研究は、体育授業 のみならず少ない現状があるものの意義があると いえよう。 そこで本研究では、東海林ほか(2017)が残し た課題の 1点目および 2点目に主に着目する。し たがって、本研究の目的は、小学校中学年の集団 種目を対象としたジグソー法を適用した学習者同 士の関わり合いを促すため授業の検証を通し、そ の成果を明らかにすることである。 2.研究の対象・方法 本研究の対象は、東京都内 A小学校 4年生の 学習者 19名(男子 9名、女子 10名)、授業者は 教師歴 16年で体育科を専門としない男性教師で あった。実施期間は 2014(平成 26)年 11月 25 日から 12月 19日で、全 10時間のプレルボール を基にした易しいゲーム(以下, プレルボール) の単元にジグソー JPEを適用した。プレルボー ルはドイツ生まれのネット型のスポーツで、「低 いネットを挟んだコートで、ボールをワンバウン ドさせてパスしたりアタックして競い合うゲー ム」(岩田ほか, 2009, p.59) である。ワンバウン ドさせるため状況判断の時間が長く、また、身体 接触を伴わないというネット型の特徴により、運 図 1 ジグソー JPEの概略図 スポーツ教育学研究 第 38巻 第 1号 平成 30年 5月 ─ 4 ─ は、小学校段階での 1つの単元は 8時間から 10 時間程度が一般的であるといえる。その点に考慮 し、短い時間でジグソー法の成果を挙げられるよ う、手順の簡略化による学習者への負担の軽減と、 授業者の活用のしやすさが意図されているのがジ グソー JPEである。その手順を図 1に示す。 東海林ほか(2017) の結果からは、体育授業に おけるジグソー JPEの適用は学習者同士の関わり 合いを促し、また、ジグソー JPEでの学習経験を 重ねることで、よりその効果が高まることが示唆 されている。学習者が単元を肯定的に受け止めて いたということに鑑みれば、ジグソーおよびジグ ソーIIからジグソー JPEへのアレンジは、その 実施段階では概ね妥当であったと考えられる。し かしながら、対象が小学校高学年 2学級のみであ り、扱った内容も器械運動のみであったため、ジ グソー JPEでの学習にどのような条件を設定する ことがこのような成果につながるのかについて検 討するには、データが不十分であると言わざるを 得ない。 以上の先行研究をまとめると、ジグソー法を用 いた体育授業は、他者との関わり合いの促進や学 習者の主体的な学習、技能の向上に寄与すると考 えられる。その一方で、教え合いの活動が中心と なるその実施においては、技能レベルや教授能力、 社会的スキルの差によってその効果に差が生じや すいともいえる。学習者同士の関わり合いを促す 授業づくりのための一手段としてジグソー法の活 用を視野に入れると、扱う内容や学年段階など、 どのようにジグソー法を適用することが効果を高 めることにつながるのか、その具体的な方策を明 らか
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拼图- jpe在小学中年级体育教学中的效果研究
本研究的目的是检验在日本小学应用Tohkairin et al.(2017)提出的Jigsaw-JPE在体育教学中促进学生互动的效果。参与者为19名4年级学生和1名有16年教学经验的男老师,该单元以改良球为重点。结果表明,在单元中使用JigsawJPE促进了学生的互动,并且在四年级实施是可能的,尽管很少有研究关注幼儿作为参与者在体育中使用JigsawJPE。然而,需要强调的是,在体育教学中实施拼图法时,需要为学生的学习设定简单明了的任务。此外,无论运动技能能力或个性如何,对每个学生来说,平等的机会表现他们的技能是很重要的。换句话说,重要的是促进儿童的相互作用,使他们有机会发挥他们的技能,同时确保拼图法的两个重要因素,即个人责任和平等贡献。此外,在以纠错游戏为重点的单元中执行Jigsaw方法可以更顺利地使用它,因为团队合作在纠错游戏和Jigsaw方法中都很重要。2018。Vol.38,第一,页1 - 20スポーツ教育学研究第38巻第1号平成30年5月──2 1。“”“”“”“”“”“”“”“”“”“”“”“”“”“”“”“”“”“”“”そして,例えば,21世紀型能力(国立教育政策研究所,2015)や社会人基礎力(経済産業省,2006)等,体育以外の様々な場面においても,他者との関わり合うための力が同様に強調されていることに鑑みれば,今後の体育授業において,そのような力を育成する授業づくりへの視点は,より一層重要なものになるといえよう。上述のような授業の実現に有効な方策の1つに,“子どもたちに,自分自身と他者の学びの向上を支え合うために,小グループで共に活動することを求める学習”(2007年Jolliffe p.3)である,合作学习(以下,協同学習モデル)が挙げられる。戴森和凯西(2016)は、体育授業における協同学習モデルの研究はこの10年ほどで着目されるようになり,その実践の際には,協同学習モデルの理論的基礎となるアプローチの1つを作ったジョンソンらによる5つの基本的構成要素を取り入れることが重要であると述べている。その要素とは1肯定的相互依存,2個人の役割責任,3促進的な相互作用,4社会的スキル,5グループによる改善手続き,の5つである(ジョンソンほか,2010)。また,凯西和固特异(2015)は、体育授業における協同学習モデルが,身体,認知,社会性,情緒の4領域すべての発達を促すことを、体育授業や体育的活動に協同学習モデルを適用した実践研究に関する先行研究のレビューによって明らかにしている。“”,。体育授業における協同学習モデルの適用の際には,授業者は”ストラクチャー”と呼ばれる学習者同士の関わり合いを生み出すための構造化された手順を理解し,取り入れることが重要であるとされており(戴森和凯西,2012),また,それらのストラクチャーは,単元や授業のゴールを見据えた上で選択されることが望ましいとされている(麦茨勒,2011)。そうであるにも関わらず,各ストラクチャーがもたらす成果について明確になっているとは言い難い。ジグソーと日本へのその紹介麦茨勒(2011)が体育授業において有効な5つのストラクチャーとしたうちの1つに”ジグソー”と呼ばれる手法を挙げることができる。ジグソーは,学習者が特定の1つの課題の達成に向けて,少人数の異質グループで活動する手法であり,1970年代にAronsonらによって考案された(Aronson et al ., 1978)。このジグソーでは,実施の前段階において,課題全体がグループの人数分に分割される。オリジナル版では,例えば,各グループのリーダーの養成などの細かな活動も含まれるが,メインの活動の手順は大きく3段階に分けられる。第1段階では,各グループでそれぞれの部分の担当(エキスパート)を決定する。続く第2段階では,他のグループの同エキスパートと,担当部分を深く理解する(エキスパート活動)。そして最後の第3段階では,各エキスパートは学習した内容を元のチームに持ち帰り,他のメンバーに教える(ジグソー活動)。【中文翻译】:中文翻译:中文翻译:中文翻译:中文翻译:中文翻译:中文翻译:中文翻译:中文翻译:日本においては蘭(1980)によるジグソーを紹介する論文と,その後の,小学生を対象とした行動特性への影響に関する研究(蘭,1981),および学業成績への影響に関する研究(蘭,1983)が初期の先行研究として挙げられる。また,松山によって翻訳されたアロンソンらの著書(1986)や,授業実践をまとめた筒井(1999)によっても紹介された。現在では三宅ほか(2011)の取り組みをはじめとして,知識構成型ジグソー法が協調学習の一手法として現場で受け止められている(友野,2016)。“”“”“”“”“”“”“”“”“”“”“”“”“”“”“”“”“”“”“”“”“”“”“”“”“”“”“”“”“”“”“”“”“”そして,例えば,21世紀型能力(国立教育政策研究所,2015)や社会人基礎力(経済産業省,2006)等,体育以外の様々な場面においても,他者との関わり合うための力が同様に強調されていることに鑑みれば,今後の体育授業において,そのような力を育成する授業づくりへの視点は,より一層重要なものになるといえよう。上述のような授業の実現に有効な方策の1つに,“子どもたちに,自分自身と他者の学びの向上を支え合うために,小グループで共に活動することを求める学習”(2007年Jolliffe p.3)である,合作学习(以下,協同学習モデル)が挙げられる。戴森和凯西(2016)は、体育授業における協同学習モデルの研究はこの10年ほどで着目されるようになり,その実践の際には,協同学習モデルの理論的基礎となるアプローチの1つを作ったジョンソンらによる5つの基本的構成要素を取り入れることが重要であると述べている。その要素とは1肯定的相互依存,2個人の役割責任,3促進的な相互作用,4社会的スキル,5グループによる改善手続き,の5つである(ジョンソンほか,2010)。また,凯西和固特异(2015)は、体育授業における協同学習モデルが,身体,認知,社会性,情緒の4領域すべての発達を促すことを、体育授業や体育的活動に協同学習モデルを適用した実践研究に関する先行研究のレビューによって明らかにしている。“”,。体育授業における協同学習モデルの適用の際には,授業者は”ストラクチャー”と呼ばれる学習者同士の関わり合いを生み出すための構造化された手順を理解し,取り入れることが重要であるとされており(戴森和凯西,2012),また,それらのストラクチャーは,単元や授業のゴールを見据えた上で選択されることが望ましいとされている(麦茨勒,2011)。そうであるにも関わらず,各ストラクチャーがもたらす成果について明確になっているとは言い難い。ジグソーと日本へのその紹介麦茨勒(2011)が体育授業において有効な5つのストラクチャーとしたうちの1つに”ジグソー”と呼ばれる手法を挙げることができる。ジグソーは,学習者が特定の1つの課題の達成に向けて,少人数の異質グループで活動する手法であり,1970年代にAronsonらによって考案された(Aronson et al。 59)。因为是一个波段,所以状况判断的时间很长,而且,根据不伴随身体接触的网型的特征,运图1 z字形JPE的概略图体育教育学研究第38卷第1号平成30年5月—4—可以说,小学阶段的一个单元一般是8 ~ 10小时。考虑到这一点,为了在短时间内取得拼读法的成果,通过顺序的简化减轻学习者的负担,并使授课者的灵活运用变得容易,这就是拼读JPE。其步骤如图1所示。东海林等(2017)的结果表明,在体育教学中使用拼读JPE可以促进学习者之间的互动,而且通过在拼读JPE的学习经验的积累,效果会更好。被做了。鉴于学习者对单元的接受态度是肯定的,我们认为zigsau以及zigsau II到JPE的组合在那个实施阶段大体上是合理的。但是,由于对象只是小学高年级的2个班级,所涉及的内容也只是器械运动,所以在zigso JPE的学习中要设定怎样的条件才能取得这样的成果呢?不得不说,要讨伐的话,数据是不充分的。综上所述,使用拼读法的体育教学,可以促进与他人的交往,促进学习者的自主学习,提高技能。另一方面,在以教学活动为中心的实施过程中,由于技能水平、教学能力和社会技能的差异,其效果也容易产生差异。为了促进学习者之间的互动,将拼读法作为制作课程的一种手段进入视野的话,对于涉及的内容和年级阶段等,如何应用拼读法效果会很高。是否与邮件有关,是否要明确具体的方案
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