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ヨハネス・フェルメールの絵画空間の考察 : 構図決定時におけるカメラ・オブスクラの役割
本研究では, 17世紀のオランダの画家フェルメールが, 構図を決め下図を作成するための補助的な道具として, カメラ・オブスクラを利用したという仮説について考察する.彼の作品に繰り返し描かれたのは, 室内空間の様子である.これらの風俗画は, 当時のオランダで描かれた同種のものよりも, かなり正確な遠近法で描写されている.本論では, 描かれた床のタイルサイズを基準として13作品から分析図と平面図・立面図を作図した.平面図から, 彼が遠近法の知識によってタイルの数を増減して様々な絵画空間を創作したことが推察できた.フェルメールの用いたキャンバスは, 似たようなサイズが数枚ずつある.分析より, そのサイズによって, 描かれた空間の大きさが類似していることがわかった.よって, いくつかの描かれた場面は, 同一の部屋のバリエーションとして, ある視点から, トリミングされたと考えられる.結論として, フェルメールは, カメラ・オブスクラの光の像を絵画空間の遠近的な整合性を画面に描写するために利用し, さらに透視図法を融合させることによって, よりリアルな空間表現を追求したといえる.