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The Future of the Fishing Settlement through the Fishery Successor Center Project in Ishinomaki City
三陸沿岸漁村に甚大な被害を与えた東日本大震災から 9年の歳月が経過した。東日本大震災は家屋や水産資源 に直接的な被害を生み出したのみならず,人口の流出に 伴う集落の急速な過疎化や水産業従事者数の激減といっ た人的資源にも大きな影響を与えた。 東日本大震災の最大被災地の一つである宮城県石巻市 の半島部は,世界三大漁場の一つである金華山沖を目の 前に持つ好漁場で,古くから漁業で栄えてきた。豊かな 漁場をもち,かつ,養殖業にも適した入り組んだリアス 式海岸の地形を有する。現在は養殖業を営む個人経営体 が多く,各経営体の水揚げ金額は日本全国を見ても相対 的に高い。しかしながら,常に危険を伴う過酷な労働環 境ゆえに,後継者が少なく高齢化が進行している産業で もある。特に,機械化が進む前の重労働を経験している 高齢世帯は,息子や娘には海とは違う仕事を勧め,結果 として石巻市街地などに子供が移り住んだ世帯も多い。 そのため,図 1に示すように,石巻市の漁業従事者数は, 震災前から緩やかな減少を続けていた。このような状況 の中沿岸漁村を襲った東日本大震災により,石巻市の漁 業従事者数は,更に半減することになった。津波で水産 資材を失った高齢世帯の中には,長期化する高台移転事 業により沿岸部での自宅再建を諦めたものも多い。市街 地の子世帯に同居し,「通いの漁師」になるものもいれば, そもそも漁業の再建を諦めたものもいる。更に,図 2に 示すように,自らを奮い立たせ漁業を再建した漁業従事 者のうち,後継者を有するものはそのうち約 1/3 となっ ている。世界三大漁場の好漁場をもつ石巻市の水産業従 事者が,約 30 年で実に 1/6 まで減少していく危険性を 孕んでいる。 このような状況に対して,2015 年 10 月より,「石巻 市水産業担い手センター事業(以下「担い手事業」とい う)」が開始された。石巻に拠点を構える(一社)フィ ッシャーマン・ジャパンと宮城県漁業協同組合,筑波大 学および名城大学が連携した産民官学協働の石巻市の事 業である。日本全国から水産業に興味のある人々を募集 し,地域の担い手として迎え入れるもので,現在までに 30 名の若者が水産業への門戸を叩いている。本稿では, 世襲制が強く新規参入が難しい漁業の分野に新たな可能 性を示すこの取り組みを報告する。2章では,産民官学 が連携した現状の体制に至るまでの経緯を示し,3章で は,具体的な担い手センターの事業内容を示す。4章で は,担い手センター事業を通しての展望を示す。