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Smaller Superior Mesenteric Vein Sign Indicating Superior Mesenteric Artery Dissection
特に既往歴のない 53歳男性が,5時間前に急性に発 症した腹部全体痛のため小病院の夜間救急外来を来院 した.持続的で刺すような痛みであり,徐々に増悪し ていた.身体診察では血圧高値(168/106 mm Hg)と 心窩部の軽度圧痛があった.血液検査の有意所見は軽 度の白血球数増多のみであった.腹部単純 CT撮影で は,上腸間膜静脈(SMV)の径が 6.7 mmと,上腸間膜 動脈(SMA)の 8.4 mmと比べ小さかった(図 1A). この所見はこの時点では気づかれなかった.患者は急 性胃炎の暫定診断のもと,鎮痛薬の処方を受け,帰宅 した.その 4時間後,疼痛がさらに増悪したため患者 は再度来院した.バイタルサインに特記すべき変化は なかった.増悪する持続痛であり,SMA解離を念頭に CT画像が見直され,smaller SMV signが発見された. 造影 CTでは SMAの単独解離が明らかとなった(図 1B-1D).腸管虚血を疑う臨床および検査所見はなく, 降圧と鎮痛による保存的入院加療で良好な経過が得ら れ,患者は 8日後に退院した. SMA解離は非特異的な症状を呈し,胃炎や腸炎と 誤診されやすい.画像検査が診断に有用であるが,造 影 CTであっても所見はよく見逃される. Smaller SMV signは,低灌流による SMVの虚脱, または急性 SMA閉塞による SMAの拡張でみられ る.急性 SMA閉塞における本徴候の感度は 70%,特 異度は 99.2%と報告されている.SMA解離と smaller SMV signの関係を直接示した報告は少なく,本例で は,血流低下による SMVの虚脱という機序と,解離腔 内の血栓形成による SMA径の拡張という機序が考え られる.SMA解離の診断例において,単純 CTは造 影 CTと同程度に撮影されており,単純 CTで分かる smaller SMV signは診断の手掛かりとなりうる.読影 の際は,腎の上半分が描出され SMAと SMVが並列 する水平断画像で,各血管の最小径を比較する. 本例では,SMA解離が疑われるまで本徴候は見落 とされていた.SMA解離では患者の主観的な症状が 身体診察所見と乖離することがある.持続する腹痛患 者では,smaller SMV signに注目することで急性 SMA閉塞・狭窄症の見逃しが減る可能性がある.