{"title":"基于内部反馈的线绘制引导对表示物体空间位置的图像形成的影响","authors":"Tadashi Yoshida, Shigeki Tsutsui","doi":"10.7219/jjses.39.1_61","DOIUrl":null,"url":null,"abstract":"The purpose of this research is to examine the effect of guidance using “line drawing based on internal feedback” on the formation of images representing the spatial position of the body. That is, “Learner A who conducted instruction with line drawing, video and language teaching” and “Learner B who provided guidance using video and language teaching” and “Teaching using language teaching only Learner C “who went to school, and examined the formation of images representing the spatial position of the body from the viewpoint of” error score “and” change in movement representation “. As a result, “Learner A who conducted guidance with line drawing, video and language teaching” was presumed to have been encouraged to form an image representing the spatial position of the body more than other learners, and “line drawing based on internal feedback” is used The guidance that you had was the formation of an image that represents the spatial position of yourself, including the muscle sensation as seen from the meta-viewpoint (sideways direction, front-back direction, top-down direction) It was thought that it urges. ス ポ ー ツ 教 育 学 研 究 <実践報告> 2019. Vol.39, No.1, pp. 61-78 スポーツ教育学研究 第 39巻 第 1号 2019年 5月 ─ 62 ─ I.はじめに 先行研究を概観すると、どのような運動技能 1) 段階の学習者に、どのような情報 を、どのよ うな媒体を通して指導することが、合目的的に運 動技能を向上させるのかという運動技能習得に関 する指導法はいまだ十分に確立されていない状 況にあると考えられる(朝岡 2012, 村田ら 2006, 仲村 2015, 田中 2009)。体育学習では、客観的に 各身体部位をどのように動かせばいいのか(以 後,“動き”とする)はわかるが、「どの身体部位 にどの程度どれくらいの時間、力を入れればよい かわからない」といった児童がみられ、多くの教 員がその指導法に悩んでいる。このような児童に 「今、体がどのようになっていたか」と聞いてみ ると、「頭の中が真っ白で何も覚えてない」「自分 の体がどのように動いているか全くわからない」 という発言が多い。すなわち、運動中の自分の体 を頭の中に像 として描けていないことが窺わ れる。 杉原(2003)によると、運動技能は「認知の段 階」、「定着の段階」、「自動化の段階」を経て習熟 していくとされている。また、杉原(2003)は、 「学習初期は自分が実行した時の体の動きがよく わからなく、意図 した動きと実行された動き がずれることがあり、フィードバック を手掛 かりとして運動の修正を繰り返すうちに、自分の 動きが次第に良く感じ取れるようになってくる」 と述べている。「認知の段階」は、頭の中に像を 描けなかったり、内的フィードバック によっ て描く「体の空間的位置を表す像」 と実際の 体の動きとの誤差が大きかったりする段階と考え られる。「定着の段階」は、内的フィードバック によって描く「体の空間的位置を表す像」と実際 の体の動きとの誤差が小さくなっていく段階と 考えらえる。「自動化の段階」は、内的フィード バックによって描く「体の空間的位置を表す像」 と実際の体の動きの誤差がほぼなくなり、一致す る段階と考えられる。すなわち、運動技能習得と は、内的フィードバックによって描く「体の空間 的位置を表す像」と実際の体の動きの誤差を認知 し、その誤差を運動修正の手がかりとして利用す ることで、内的フィードバックによって描く「体 の空間的位置を表す像」と実際の体の動きを一致 させていく過程と言える。したがって、運動技能 習得には、めざす動きと実際の体の動きの誤差を 認知するために必要な内的フィードバックによっ て描く「体の空間的位置を表す像」の形成を促す ことが 重要であると推察される。 金子(1996)は、「動きを覚えるということは、 物理的な理論で説明されるよりも、人間特有な “動きの感じ”をつかむことがどうしても必要に なる」と述べている。また、森(2015)は、「指 導者は学習者の動き方を観察し状況に合った動き 方を示して“動き方の感じ”をつかめるように指 導することが重要であり、学習者も練習の中で“動 く感じ”を意識し“動く感じ”を指導者に表示し ていくことが必要である」と指摘した上で、さら に、「指導者と学習者が言葉や身振り、絵や写真 等を通して“動き方の感じ”を確認し合うこと、 つまり“動きの感じ”を共有することは新しい動 きを発生させるうえで大切なことである」とも述 べ、「動感画」 を用いた指導法を提案している。 松田ら(2016)は、「動感画」を用いた指導により、 学習者に技能向上がみられたと報告している。 これらの先行研究から、動きを覚えるというこ とは、運動者自身が内的フィードバックによって もたらされる筋肉や関節からの情報を用いて、体 のどこの部位の筋肉をどの程度の強さ、時間、収 縮・緊張・弛緩させればいいのかということを考 えながら、自分の頭の中に内的フィードバックに よって描く「体の空間的位置を表す像」を自分の めざす体の動きの像に一致させるために修正して いく行為と考えられる。したがって、学習者は指 導者によって実際の体の動きの欠点を指摘された としても、自分の内的フィードバックに基づく情 報、すなわち、内的フィードバックによって描く 「体の空間的位置を表す像」によって動きを修正 しているため、客観的な体の動き方を伝えられた だけでは動きの修正を行いにくいということであ る。運動技能の習得における体の動きの修正をこ のように捉えていくと、森が指摘するように、指 導者と学習者が互いに学習者の内的フィードバッ クによって感じとっている筋感覚などの情報を共 有し合うことの重要性が認められる。しかしなが ら、このような筋感覚などの情報に基づく“動き の感じ”を言葉で伝えることは難しく、松田が報 スポーツ教育学研究 第 39巻 第 1号 2019年 5月 ─ 62 ─ I.はじめに 先行研究を概観すると、どのような運動技能 1) 段階の学習者に、どのような情報 を、どのよ うな媒体を通して指導することが、合目的的に運 動技能を向上させるのかという運動技能習得に関 する指導法はいまだ十分に確立されていない状 況にあると考えられる(朝岡 2012, 村田ら 2006, 仲村 2015, 田中 2009)。体育学習では、客観的に 各身体部位をどのように動かせばいいのか(以 後,“動き”とする)はわかるが、「どの身体部位 にどの程度どれくらいの時間、力を入れればよい かわからない」といった児童がみられ、多くの教 員がその指導法に悩んでいる。このような児童に 「今、体がどのようになっていたか」と聞いてみ ると、「頭の中が真っ白で何も覚えてない」「自分 の体がどのように動いているか全くわからない」 という発言が多い。すなわち、運動中の自分の体 を頭の中に像 として描けていないことが窺わ れる。 杉原(2003)によると、運動技能は「認知の段 階」、「定着の段階」、「自動化の段階」を経て習熟 していくとされている。また、杉原(2003)は、 「学習初期は自分が実行した時の体の動きがよく わからなく、意図 した動きと実行された動き がずれることがあり、フィードバック を手掛 かりとして運動の修正を繰り返すうちに、自分の 動きが次第に良く感じ取れるようになってくる」 と述べている。「認知の段階」は、頭の中に像を 描けなかったり、内的フィードバック によっ て描く「体の空間的位置を表す像」 と実際の 体の動きとの誤差が大きかったりする段階と考え られる。「定着の段階」は、内的フィードバック によって描く「体の空間的位置を表す像」と実際 の体の動きとの誤差が小さくなっていく段階と 考えらえる。「自動化の段階」は、内的フィード バックによって描く「体の空間的位置を表す像」 と実際の体の動きの誤差がほぼなくなり、一致す る段階と考えられる。すなわち、運動技能習得と は、内的フィードバックによって描く「体の空間 的位置を表す像」と実際の体の動きの誤差を認知 し、その誤差を運動修正の手がかりとして利用す ることで、内的フィードバックによって描く「体 の空間的位置を表す像」と実際の体の動きを一致 させていく過程と言える。したがって、運動技能 習得には、めざす動きと実際の体の動きの誤差を 認知するために必要な内的フィードバックによっ て描く「体の空間的位置を表す像」の形成を促す ことが 重要であると推察される。 金子(1996)は、「動きを覚えるということは、 物理的な理論で説明されるよりも、人間特有な “動きの感じ”をつかむことがどうしても必要に なる」と述べている。また、森(2015)は、「指 導者は学習者の動き方を観察し状況に合った動き 方を示して“動き方の感じ”をつかめるように指 導することが重要であり、学習者も練習の中で“動 く感じ”を意識し“動く感じ”を指導者に表示し ていくことが必要である」と指摘した上で、さら に、「指導者と学習者が言葉や身振り、絵や写真 等を通して“動き方の感じ”を確認し合うこと、 つまり“動きの感じ”を共有することは新しい動 きを発生させるうえで大切なことである」とも述 べ、「動感画」 を用いた指導法を提案している。 松田ら(2016)は、「動感画」を用いた指導により、 学習者に技能向上がみられたと報告している。 これらの先行研究から、動きを覚えるというこ とは、運動者自身が内的フィードバックによって もたらされる筋肉や関節からの情報を用いて、体 のどこの部位の筋肉をどの程度の強さ、時間、収 縮・緊張・弛緩させればいいのかということを考 えながら、自分の頭の中に内的フィードバックに よって描く「体の空間的位置を表す像」を自分の めざす体の動きの像に一致させるために修正して いく行為と考えられる。したがって、学習者は指 導者によって実際の体の動きの欠点を指摘された としても、自分の内的フィードバックに基づく情 報、すなわち、内的フィードバックによって描く 「体の空間的位置を表す像」によって動きを修正 しているため、客観的な体の動き方を伝えられた だけでは動きの修正を行いにくいということであ る。運動技能の習得における体の動きの修正をこ のように捉えていくと、森が指摘するように、指 導者と学習者が互いに学習者の内的フィードバッ クによって感じとっている筋感覚などの情報を共 有し合うことの重要性が認められる。しかしなが ら、このような筋感覚などの情報に基づく“動き の感じ”を言葉で伝えることは難しく、松田が報 ─ 63 ─ 吉田:内的フィードバックに基づく線画を用いた指導が体の空間的位置を表す像の形成に与える影響 告しているように「動感画」の有効性が示唆され る。 ところで、内的フィードバックに基づく情報を 伝え合う媒介としての「動感画」には、2つの課 題が考えられる。1点目として、学習者に「動感 画」から必要な情報を的確に読み取る力 がな ければ、内的フィードバックに基づく情報を正確 に認知することができないと考えられる。2点目 として、描く人の描画力によって内部感覚の高ま りやそれによる「内的フィードバックによって描 く体の動きの像」を的確に表現できない場合があ ると考えられる。 筒井ら(2018)は、これらの「動感画」の課題 の解決を目指した「内的フィードバックに基づく 線画」を考案し、「内的フィードバックに基づく 線画」を用いた倒立における仮説的指導法を報告 している。「線画」とは、1本の線で体の動きを 描写する方法であり、「内的フィードバックに基 づく線画」とは、図 1に示すように、線画に力の 強さや力の方向等の内的フィードバックに基づく 情報を付加したものである。仮説的指導法とは、 いつ、どのような「内的フィードバックに基づく 線画」を描かせることが有効かについて検討し、 学習者の倒立習得過程において表出すると予想さ れる線画や運動表象とそれに対応する言語教示、 提示する線画、幇助の方法をまとめ作成した一覧 表のことである。しかしながら、筒井らは、「内 的フィードバックに基づく線画」を用いた指導が 「体の空間的位置を表す像」の形成に与える影響 を検討するには至っていない。 そこで本研究は、「内的フィードバックに基づ く線画」を用いた指導が「体の空間的位置を表す 像」の形成に与える影響を検討することを目的と する。","PeriodicalId":119114,"journal":{"name":"Japanese Journal of Sport Education Studies","volume":"1 1","pages":"0"},"PeriodicalIF":0.0000,"publicationDate":"2019-05-31","publicationTypes":"Journal Article","fieldsOfStudy":null,"isOpenAccess":false,"openAccessPdf":"","citationCount":"0","resultStr":"{\"title\":\"The Effect of Guidance Using Line Drawing based on internal Feedback on the Formation of images representing the spatial Position of the Body\",\"authors\":\"Tadashi Yoshida, Shigeki Tsutsui\",\"doi\":\"10.7219/jjses.39.1_61\",\"DOIUrl\":null,\"url\":null,\"abstract\":\"The purpose of this research is to examine the effect of guidance using “line drawing based on internal feedback” on the formation of images representing the spatial position of the body. That is, “Learner A who conducted instruction with line drawing, video and language teaching” and “Learner B who provided guidance using video and language teaching” and “Teaching using language teaching only Learner C “who went to school, and examined the formation of images representing the spatial position of the body from the viewpoint of” error score “and” change in movement representation “. As a result, “Learner A who conducted guidance with line drawing, video and language teaching” was presumed to have been encouraged to form an image representing the spatial position of the body more than other learners, and “line drawing based on internal feedback” is used The guidance that you had was the formation of an image that represents the spatial position of yourself, including the muscle sensation as seen from the meta-viewpoint (sideways direction, front-back direction, top-down direction) It was thought that it urges. ス ポ ー ツ 教 育 学 研 究 <実践報告> 2019. Vol.39, No.1, pp. 61-78 スポーツ教育学研究 第 39巻 第 1号 2019年 5月 ─ 62 ─ I.はじめに 先行研究を概観すると、どのような運動技能 1) 段階の学習者に、どのような情報 を、どのよ うな媒体を通して指導することが、合目的的に運 動技能を向上させるのかという運動技能習得に関 する指導法はいまだ十分に確立されていない状 況にあると考えられる(朝岡 2012, 村田ら 2006, 仲村 2015, 田中 2009)。体育学習では、客観的に 各身体部位をどのように動かせばいいのか(以 後,“動き”とする)はわかるが、「どの身体部位 にどの程度どれくらいの時間、力を入れればよい かわからない」といった児童がみられ、多くの教 員がその指導法に悩んでいる。このような児童に 「今、体がどのようになっていたか」と聞いてみ ると、「頭の中が真っ白で何も覚えてない」「自分 の体がどのように動いているか全くわからない」 という発言が多い。すなわち、運動中の自分の体 を頭の中に像 として描けていないことが窺わ れる。 杉原(2003)によると、運動技能は「認知の段 階」、「定着の段階」、「自動化の段階」を経て習熟 していくとされている。また、杉原(2003)は、 「学習初期は自分が実行した時の体の動きがよく わからなく、意図 した動きと実行された動き がずれることがあり、フィードバック を手掛 かりとして運動の修正を繰り返すうちに、自分の 動きが次第に良く感じ取れるようになってくる」 と述べている。「認知の段階」は、頭の中に像を 描けなかったり、内的フィードバック によっ て描く「体の空間的位置を表す像」 と実際の 体の動きとの誤差が大きかったりする段階と考え られる。「定着の段階」は、内的フィードバック によって描く「体の空間的位置を表す像」と実際 の体の動きとの誤差が小さくなっていく段階と 考えらえる。「自動化の段階」は、内的フィード バックによって描く「体の空間的位置を表す像」 と実際の体の動きの誤差がほぼなくなり、一致す る段階と考えられる。すなわち、運動技能習得と は、内的フィードバックによって描く「体の空間 的位置を表す像」と実際の体の動きの誤差を認知 し、その誤差を運動修正の手がかりとして利用す ることで、内的フィードバックによって描く「体 の空間的位置を表す像」と実際の体の動きを一致 させていく過程と言える。したがって、運動技能 習得には、めざす動きと実際の体の動きの誤差を 認知するために必要な内的フィードバックによっ て描く「体の空間的位置を表す像」の形成を促す ことが 重要であると推察される。 金子(1996)は、「動きを覚えるということは、 物理的な理論で説明されるよりも、人間特有な “動きの感じ”をつかむことがどうしても必要に なる」と述べている。また、森(2015)は、「指 導者は学習者の動き方を観察し状況に合った動き 方を示して“動き方の感じ”をつかめるように指 導することが重要であり、学習者も練習の中で“動 く感じ”を意識し“動く感じ”を指導者に表示し ていくことが必要である」と指摘した上で、さら に、「指導者と学習者が言葉や身振り、絵や写真 等を通して“動き方の感じ”を確認し合うこと、 つまり“動きの感じ”を共有することは新しい動 きを発生させるうえで大切なことである」とも述 べ、「動感画」 を用いた指導法を提案している。 松田ら(2016)は、「動感画」を用いた指導により、 学習者に技能向上がみられたと報告している。 これらの先行研究から、動きを覚えるというこ とは、運動者自身が内的フィードバックによって もたらされる筋肉や関節からの情報を用いて、体 のどこの部位の筋肉をどの程度の強さ、時間、収 縮・緊張・弛緩させればいいのかということを考 えながら、自分の頭の中に内的フィードバックに よって描く「体の空間的位置を表す像」を自分の めざす体の動きの像に一致させるために修正して いく行為と考えられる。したがって、学習者は指 導者によって実際の体の動きの欠点を指摘された としても、自分の内的フィードバックに基づく情 報、すなわち、内的フィードバックによって描く 「体の空間的位置を表す像」によって動きを修正 しているため、客観的な体の動き方を伝えられた だけでは動きの修正を行いにくいということであ る。運動技能の習得における体の動きの修正をこ のように捉えていくと、森が指摘するように、指 導者と学習者が互いに学習者の内的フィードバッ クによって感じとっている筋感覚などの情報を共 有し合うことの重要性が認められる。しかしなが ら、このような筋感覚などの情報に基づく“動き の感じ”を言葉で伝えることは難しく、松田が報 スポーツ教育学研究 第 39巻 第 1号 2019年 5月 ─ 62 ─ I.はじめに 先行研究を概観すると、どのような運動技能 1) 段階の学習者に、どのような情報 を、どのよ うな媒体を通して指導することが、合目的的に運 動技能を向上させるのかという運動技能習得に関 する指導法はいまだ十分に確立されていない状 況にあると考えられる(朝岡 2012, 村田ら 2006, 仲村 2015, 田中 2009)。体育学習では、客観的に 各身体部位をどのように動かせばいいのか(以 後,“動き”とする)はわかるが、「どの身体部位 にどの程度どれくらいの時間、力を入れればよい かわからない」といった児童がみられ、多くの教 員がその指導法に悩んでいる。このような児童に 「今、体がどのようになっていたか」と聞いてみ ると、「頭の中が真っ白で何も覚えてない」「自分 の体がどのように動いているか全くわからない」 という発言が多い。すなわち、運動中の自分の体 を頭の中に像 として描けていないことが窺わ れる。 杉原(2003)によると、運動技能は「認知の段 階」、「定着の段階」、「自動化の段階」を経て習熟 していくとされている。また、杉原(2003)は、 「学習初期は自分が実行した時の体の動きがよく わからなく、意図 した動きと実行された動き がずれることがあり、フィードバック を手掛 かりとして運動の修正を繰り返すうちに、自分の 動きが次第に良く感じ取れるようになってくる」 と述べている。「認知の段階」は、頭の中に像を 描けなかったり、内的フィードバック によっ て描く「体の空間的位置を表す像」 と実際の 体の動きとの誤差が大きかったりする段階と考え られる。「定着の段階」は、内的フィードバック によって描く「体の空間的位置を表す像」と実際 の体の動きとの誤差が小さくなっていく段階と 考えらえる。「自動化の段階」は、内的フィード バックによって描く「体の空間的位置を表す像」 と実際の体の動きの誤差がほぼなくなり、一致す る段階と考えられる。すなわち、運動技能習得と は、内的フィードバックによって描く「体の空間 的位置を表す像」と実際の体の動きの誤差を認知 し、その誤差を運動修正の手がかりとして利用す ることで、内的フィードバックによって描く「体 の空間的位置を表す像」と実際の体の動きを一致 させていく過程と言える。したがって、運動技能 習得には、めざす動きと実際の体の動きの誤差を 認知するために必要な内的フィードバックによっ て描く「体の空間的位置を表す像」の形成を促す ことが 重要であると推察される。 金子(1996)は、「動きを覚えるということは、 物理的な理論で説明されるよりも、人間特有な “動きの感じ”をつかむことがどうしても必要に なる」と述べている。また、森(2015)は、「指 導者は学習者の動き方を観察し状況に合った動き 方を示して“動き方の感じ”をつかめるように指 導することが重要であり、学習者も練習の中で“動 く感じ”を意識し“動く感じ”を指導者に表示し ていくことが必要である」と指摘した上で、さら に、「指導者と学習者が言葉や身振り、絵や写真 等を通して“動き方の感じ”を確認し合うこと、 つまり“動きの感じ”を共有することは新しい動 きを発生させるうえで大切なことである」とも述 べ、「動感画」 を用いた指導法を提案している。 松田ら(2016)は、「動感画」を用いた指導により、 学習者に技能向上がみられたと報告している。 これらの先行研究から、動きを覚えるというこ とは、運動者自身が内的フィードバックによって もたらされる筋肉や関節からの情報を用いて、体 のどこの部位の筋肉をどの程度の強さ、時間、収 縮・緊張・弛緩させればいいのかということを考 えながら、自分の頭の中に内的フィードバックに よって描く「体の空間的位置を表す像」を自分の めざす体の動きの像に一致させるために修正して いく行為と考えられる。したがって、学習者は指 導者によって実際の体の動きの欠点を指摘された としても、自分の内的フィードバックに基づく情 報、すなわち、内的フィードバックによって描く 「体の空間的位置を表す像」によって動きを修正 しているため、客観的な体の動き方を伝えられた だけでは動きの修正を行いにくいということであ る。運動技能の習得における体の動きの修正をこ のように捉えていくと、森が指摘するように、指 導者と学習者が互いに学習者の内的フィードバッ クによって感じとっている筋感覚などの情報を共 有し合うことの重要性が認められる。しかしなが ら、このような筋感覚などの情報に基づく“動き の感じ”を言葉で伝えることは難しく、松田が報 ─ 63 ─ 吉田:内的フィードバックに基づく線画を用いた指導が体の空間的位置を表す像の形成に与える影響 告しているように「動感画」の有効性が示唆され る。 ところで、内的フィードバックに基づく情報を 伝え合う媒介としての「動感画」には、2つの課 題が考えられる。1点目として、学習者に「動感 画」から必要な情報を的確に読み取る力 がな ければ、内的フィードバックに基づく情報を正確 に認知することができないと考えられる。2点目 として、描く人の描画力によって内部感覚の高ま りやそれによる「内的フィードバックによって描 く体の動きの像」を的確に表現できない場合があ ると考えられる。 筒井ら(2018)は、これらの「動感画」の課題 の解決を目指した「内的フィードバックに基づく 線画」を考案し、「内的フィードバックに基づく 線画」を用いた倒立における仮説的指導法を報告 している。「線画」とは、1本の線で体の動きを 描写する方法であり、「内的フィードバックに基 づく線画」とは、図 1に示すように、線画に力の 強さや力の方向等の内的フィードバックに基づく 情報を付加したものである。仮説的指導法とは、 いつ、どのような「内的フィードバックに基づく 線画」を描かせることが有効かについて検討し、 学習者の倒立習得過程において表出すると予想さ れる線画や運動表象とそれに対応する言語教示、 提示する線画、幇助の方法をまとめ作成した一覧 表のことである。しかしながら、筒井らは、「内 的フィードバックに基づく線画」を用いた指導が 「体の空間的位置を表す像」の形成に与える影響 を検討するには至っていない。 そこで本研究は、「内的フィードバックに基づ く線画」を用いた指導が「体の空間的位置を表す 像」の形成に与える影響を検討することを目的と する。\",\"PeriodicalId\":119114,\"journal\":{\"name\":\"Japanese Journal of Sport Education Studies\",\"volume\":\"1 1\",\"pages\":\"0\"},\"PeriodicalIF\":0.0000,\"publicationDate\":\"2019-05-31\",\"publicationTypes\":\"Journal Article\",\"fieldsOfStudy\":null,\"isOpenAccess\":false,\"openAccessPdf\":\"\",\"citationCount\":\"0\",\"resultStr\":null,\"platform\":\"Semanticscholar\",\"paperid\":null,\"PeriodicalName\":\"Japanese Journal of Sport Education Studies\",\"FirstCategoryId\":\"1085\",\"ListUrlMain\":\"https://doi.org/10.7219/jjses.39.1_61\",\"RegionNum\":0,\"RegionCategory\":null,\"ArticlePicture\":[],\"TitleCN\":null,\"AbstractTextCN\":null,\"PMCID\":null,\"EPubDate\":\"\",\"PubModel\":\"\",\"JCR\":\"\",\"JCRName\":\"\",\"Score\":null,\"Total\":0}","platform":"Semanticscholar","paperid":null,"PeriodicalName":"Japanese Journal of Sport Education Studies","FirstCategoryId":"1085","ListUrlMain":"https://doi.org/10.7219/jjses.39.1_61","RegionNum":0,"RegionCategory":null,"ArticlePicture":[],"TitleCN":null,"AbstractTextCN":null,"PMCID":null,"EPubDate":"","PubModel":"","JCR":"","JCRName":"","Score":null,"Total":0}
The Effect of Guidance Using Line Drawing based on internal Feedback on the Formation of images representing the spatial Position of the Body
The purpose of this research is to examine the effect of guidance using “line drawing based on internal feedback” on the formation of images representing the spatial position of the body. That is, “Learner A who conducted instruction with line drawing, video and language teaching” and “Learner B who provided guidance using video and language teaching” and “Teaching using language teaching only Learner C “who went to school, and examined the formation of images representing the spatial position of the body from the viewpoint of” error score “and” change in movement representation “. As a result, “Learner A who conducted guidance with line drawing, video and language teaching” was presumed to have been encouraged to form an image representing the spatial position of the body more than other learners, and “line drawing based on internal feedback” is used The guidance that you had was the formation of an image that represents the spatial position of yourself, including the muscle sensation as seen from the meta-viewpoint (sideways direction, front-back direction, top-down direction) It was thought that it urges. ス ポ ー ツ 教 育 学 研 究 <実践報告> 2019. Vol.39, No.1, pp. 61-78 スポーツ教育学研究 第 39巻 第 1号 2019年 5月 ─ 62 ─ I.はじめに 先行研究を概観すると、どのような運動技能 1) 段階の学習者に、どのような情報 を、どのよ うな媒体を通して指導することが、合目的的に運 動技能を向上させるのかという運動技能習得に関 する指導法はいまだ十分に確立されていない状 況にあると考えられる(朝岡 2012, 村田ら 2006, 仲村 2015, 田中 2009)。体育学習では、客観的に 各身体部位をどのように動かせばいいのか(以 後,“動き”とする)はわかるが、「どの身体部位 にどの程度どれくらいの時間、力を入れればよい かわからない」といった児童がみられ、多くの教 員がその指導法に悩んでいる。このような児童に 「今、体がどのようになっていたか」と聞いてみ ると、「頭の中が真っ白で何も覚えてない」「自分 の体がどのように動いているか全くわからない」 という発言が多い。すなわち、運動中の自分の体 を頭の中に像 として描けていないことが窺わ れる。 杉原(2003)によると、運動技能は「認知の段 階」、「定着の段階」、「自動化の段階」を経て習熟 していくとされている。また、杉原(2003)は、 「学習初期は自分が実行した時の体の動きがよく わからなく、意図 した動きと実行された動き がずれることがあり、フィードバック を手掛 かりとして運動の修正を繰り返すうちに、自分の 動きが次第に良く感じ取れるようになってくる」 と述べている。「認知の段階」は、頭の中に像を 描けなかったり、内的フィードバック によっ て描く「体の空間的位置を表す像」 と実際の 体の動きとの誤差が大きかったりする段階と考え られる。「定着の段階」は、内的フィードバック によって描く「体の空間的位置を表す像」と実際 の体の動きとの誤差が小さくなっていく段階と 考えらえる。「自動化の段階」は、内的フィード バックによって描く「体の空間的位置を表す像」 と実際の体の動きの誤差がほぼなくなり、一致す る段階と考えられる。すなわち、運動技能習得と は、内的フィードバックによって描く「体の空間 的位置を表す像」と実際の体の動きの誤差を認知 し、その誤差を運動修正の手がかりとして利用す ることで、内的フィードバックによって描く「体 の空間的位置を表す像」と実際の体の動きを一致 させていく過程と言える。したがって、運動技能 習得には、めざす動きと実際の体の動きの誤差を 認知するために必要な内的フィードバックによっ て描く「体の空間的位置を表す像」の形成を促す ことが 重要であると推察される。 金子(1996)は、「動きを覚えるということは、 物理的な理論で説明されるよりも、人間特有な “動きの感じ”をつかむことがどうしても必要に なる」と述べている。また、森(2015)は、「指 導者は学習者の動き方を観察し状況に合った動き 方を示して“動き方の感じ”をつかめるように指 導することが重要であり、学習者も練習の中で“動 く感じ”を意識し“動く感じ”を指導者に表示し ていくことが必要である」と指摘した上で、さら に、「指導者と学習者が言葉や身振り、絵や写真 等を通して“動き方の感じ”を確認し合うこと、 つまり“動きの感じ”を共有することは新しい動 きを発生させるうえで大切なことである」とも述 べ、「動感画」 を用いた指導法を提案している。 松田ら(2016)は、「動感画」を用いた指導により、 学習者に技能向上がみられたと報告している。 これらの先行研究から、動きを覚えるというこ とは、運動者自身が内的フィードバックによって もたらされる筋肉や関節からの情報を用いて、体 のどこの部位の筋肉をどの程度の強さ、時間、収 縮・緊張・弛緩させればいいのかということを考 えながら、自分の頭の中に内的フィードバックに よって描く「体の空間的位置を表す像」を自分の めざす体の動きの像に一致させるために修正して いく行為と考えられる。したがって、学習者は指 導者によって実際の体の動きの欠点を指摘された としても、自分の内的フィードバックに基づく情 報、すなわち、内的フィードバックによって描く 「体の空間的位置を表す像」によって動きを修正 しているため、客観的な体の動き方を伝えられた だけでは動きの修正を行いにくいということであ る。運動技能の習得における体の動きの修正をこ のように捉えていくと、森が指摘するように、指 導者と学習者が互いに学習者の内的フィードバッ クによって感じとっている筋感覚などの情報を共 有し合うことの重要性が認められる。しかしなが ら、このような筋感覚などの情報に基づく“動き の感じ”を言葉で伝えることは難しく、松田が報 スポーツ教育学研究 第 39巻 第 1号 2019年 5月 ─ 62 ─ I.はじめに 先行研究を概観すると、どのような運動技能 1) 段階の学習者に、どのような情報 を、どのよ うな媒体を通して指導することが、合目的的に運 動技能を向上させるのかという運動技能習得に関 する指導法はいまだ十分に確立されていない状 況にあると考えられる(朝岡 2012, 村田ら 2006, 仲村 2015, 田中 2009)。体育学習では、客観的に 各身体部位をどのように動かせばいいのか(以 後,“動き”とする)はわかるが、「どの身体部位 にどの程度どれくらいの時間、力を入れればよい かわからない」といった児童がみられ、多くの教 員がその指導法に悩んでいる。このような児童に 「今、体がどのようになっていたか」と聞いてみ ると、「頭の中が真っ白で何も覚えてない」「自分 の体がどのように動いているか全くわからない」 という発言が多い。すなわち、運動中の自分の体 を頭の中に像 として描けていないことが窺わ れる。 杉原(2003)によると、運動技能は「認知の段 階」、「定着の段階」、「自動化の段階」を経て習熟 していくとされている。また、杉原(2003)は、 「学習初期は自分が実行した時の体の動きがよく わからなく、意図 した動きと実行された動き がずれることがあり、フィードバック を手掛 かりとして運動の修正を繰り返すうちに、自分の 動きが次第に良く感じ取れるようになってくる」 と述べている。「認知の段階」は、頭の中に像を 描けなかったり、内的フィードバック によっ て描く「体の空間的位置を表す像」 と実際の 体の動きとの誤差が大きかったりする段階と考え られる。「定着の段階」は、内的フィードバック によって描く「体の空間的位置を表す像」と実際 の体の動きとの誤差が小さくなっていく段階と 考えらえる。「自動化の段階」は、内的フィード バックによって描く「体の空間的位置を表す像」 と実際の体の動きの誤差がほぼなくなり、一致す る段階と考えられる。すなわち、運動技能習得と は、内的フィードバックによって描く「体の空間 的位置を表す像」と実際の体の動きの誤差を認知 し、その誤差を運動修正の手がかりとして利用す ることで、内的フィードバックによって描く「体 の空間的位置を表す像」と実際の体の動きを一致 させていく過程と言える。したがって、運動技能 習得には、めざす動きと実際の体の動きの誤差を 認知するために必要な内的フィードバックによっ て描く「体の空間的位置を表す像」の形成を促す ことが 重要であると推察される。 金子(1996)は、「動きを覚えるということは、 物理的な理論で説明されるよりも、人間特有な “動きの感じ”をつかむことがどうしても必要に なる」と述べている。また、森(2015)は、「指 導者は学習者の動き方を観察し状況に合った動き 方を示して“動き方の感じ”をつかめるように指 導することが重要であり、学習者も練習の中で“動 く感じ”を意識し“動く感じ”を指導者に表示し ていくことが必要である」と指摘した上で、さら に、「指導者と学習者が言葉や身振り、絵や写真 等を通して“動き方の感じ”を確認し合うこと、 つまり“動きの感じ”を共有することは新しい動 きを発生させるうえで大切なことである」とも述 べ、「動感画」 を用いた指導法を提案している。 松田ら(2016)は、「動感画」を用いた指導により、 学習者に技能向上がみられたと報告している。 これらの先行研究から、動きを覚えるというこ とは、運動者自身が内的フィードバックによって もたらされる筋肉や関節からの情報を用いて、体 のどこの部位の筋肉をどの程度の強さ、時間、収 縮・緊張・弛緩させればいいのかということを考 えながら、自分の頭の中に内的フィードバックに よって描く「体の空間的位置を表す像」を自分の めざす体の動きの像に一致させるために修正して いく行為と考えられる。したがって、学習者は指 導者によって実際の体の動きの欠点を指摘された としても、自分の内的フィードバックに基づく情 報、すなわち、内的フィードバックによって描く 「体の空間的位置を表す像」によって動きを修正 しているため、客観的な体の動き方を伝えられた だけでは動きの修正を行いにくいということであ る。運動技能の習得における体の動きの修正をこ のように捉えていくと、森が指摘するように、指 導者と学習者が互いに学習者の内的フィードバッ クによって感じとっている筋感覚などの情報を共 有し合うことの重要性が認められる。しかしなが ら、このような筋感覚などの情報に基づく“動き の感じ”を言葉で伝えることは難しく、松田が報 ─ 63 ─ 吉田:内的フィードバックに基づく線画を用いた指導が体の空間的位置を表す像の形成に与える影響 告しているように「動感画」の有効性が示唆され る。 ところで、内的フィードバックに基づく情報を 伝え合う媒介としての「動感画」には、2つの課 題が考えられる。1点目として、学習者に「動感 画」から必要な情報を的確に読み取る力 がな ければ、内的フィードバックに基づく情報を正確 に認知することができないと考えられる。2点目 として、描く人の描画力によって内部感覚の高ま りやそれによる「内的フィードバックによって描 く体の動きの像」を的確に表現できない場合があ ると考えられる。 筒井ら(2018)は、これらの「動感画」の課題 の解決を目指した「内的フィードバックに基づく 線画」を考案し、「内的フィードバックに基づく 線画」を用いた倒立における仮説的指導法を報告 している。「線画」とは、1本の線で体の動きを 描写する方法であり、「内的フィードバックに基 づく線画」とは、図 1に示すように、線画に力の 強さや力の方向等の内的フィードバックに基づく 情報を付加したものである。仮説的指導法とは、 いつ、どのような「内的フィードバックに基づく 線画」を描かせることが有効かについて検討し、 学習者の倒立習得過程において表出すると予想さ れる線画や運動表象とそれに対応する言語教示、 提示する線画、幇助の方法をまとめ作成した一覧 表のことである。しかしながら、筒井らは、「内 的フィードバックに基づく線画」を用いた指導が 「体の空間的位置を表す像」の形成に与える影響 を検討するには至っていない。 そこで本研究は、「内的フィードバックに基づ く線画」を用いた指導が「体の空間的位置を表す 像」の形成に与える影響を検討することを目的と する。