求助PDF
{"title":"濒危物种水蛭蝶(鳞翅目:蛭科)幼儿环境主题教材的编制","authors":"K. Koda, Tomoko Shinya, Y. Koba","doi":"10.5647/JSOEE.30.3_63","DOIUrl":null,"url":null,"abstract":"現在、生息環境の変化によって多くの昆虫が絶滅危惧 種となっており、保全活動が盛んに行われている。保全 活動は主に1絶滅危惧種の保護、2生息地の改善、3絶 滅危惧種の実態に関する情報の普及・啓発活動の3つの 分野で活動が行われている。本報告で対象としたオオル リシジミ Shijimiaeoides divinus(Leech)は、瑠璃色の翅 を有しており、庭の花壇で見かけるシジミチョウより一 回り大きい草原性のシジミチョウである(図1 A・B)。 本種は1化性のチョウで、成虫は5月から6月中旬の約1ヶ 月間しか見ることができない。交尾、産卵をして、卵は 7日間~10日間ほどで孵化する。孵化した幼虫は1ヶ月ほ どで大きくなり、4齢幼虫が最後の脱皮をして地面や土 中で蛹となる。蛹になってからは約10か月間羽化せずに 翌年まで過ごす。幼虫の食草はマメ科のクララ Sophora flavescens の蕾と花(図1 C~F)に限定されるという特 異な生態を有している(福田ら 1984)。 オオルリシジミは日本や中国、朝鮮半島、ロシアに生 息しているが、いずれの国でも個体数が減少しているこ とから世界的な絶滅危惧種となっている(白水 2006; 藤岡 2007;Koda 2014)。国内では、かつて東北や関東 地方と九州地方に生息していたが(白水 2006)、1990年 頃から急激に減少しており、今では長野県と、熊本県の 阿蘇地方及び大分県の一部にしか生息が確認されていな い(日本チョウ類保全協会 2012)。絶滅に瀕している要 因は、大規模土地改良事業、河川改修、宅地造成などに より食草のクララが失われたことがあげられる。かつて クララは毒の成分を有していることから、トイレの蛆殺 しや漢方薬として利用されていた。しかし近年殺虫剤や 水洗式トイレの普及など人間の生活様式が変化して、ク ララを利用する必要がなくなったため、クララは雑草と して除草されるようになった。そのためクララに依存し ていたオオルリシジミも激減した(丸山 2005)。現在環 境省のレッドリスト(1)で絶滅危惧I類に指定されてい るほか、長野県(2)、熊本県(3)、大分県(4)にて指定希少 野生動植物に指定され、無断で捕獲することが禁止され ている。オオルリシジミは各地で保全研究(江田・中村 2009;Koda・Nakamura 2010;村田・野原 2003)や保 全活動が行われているが(福本 2017;江田・中村 2011; 清水 2009)、本種の保全・保護を継続的に進めていくた めには、次世代を担うこども世代に本種の存在と危機的 な生息状況を知ってもらうことが必要である(長野県 2018)。 オオルリシジミを知るための子ども向け教材は、すで にいくつか開発されている。江田・さくらい(2011)の 絵本は、オオルリシジミの生活史や天敵、共生昆虫など の生態を解説し、また南阿蘇ビジターセンター(2017) の紙芝居は、オオルリシジミが人間の農牧業形態へ適応 する様子を描いたものである。しかし、両教材ともに小 学校高学年以降で扱う学習内容が多く含まれており、大 人でも十分学べるページ数・情報量となっているため、 幼児に対してはじめから使用するのは難しい内容と考え られる。幼児期の段階においては、具体的にまず第1に オオルリシジミが卵から幼虫・蛹を経て成虫になる完全 変態のプロセスと、幼虫はクララという植物の花穂を食 べて生きていることを理解すること、第2にクララがな くなるとオオルリシジミも生きていけないという思考か ら、生態学的な環境のとらえ方の芽生えを養うことが必 要であると考えた。 井上(2009)は「幼児期の環境教育とは、幼児期の 発達理解を元に、子どもの主体的な遊びを重視しなが ら、持続可能な社会形成につながる環境観を形成する営 みである」と定義している。 報告 絶滅危惧種オオルリシジミの幼児向け環境教育教材の開発","PeriodicalId":308853,"journal":{"name":"Japanese Journal of Environmental Education","volume":null,"pages":null},"PeriodicalIF":0.0000,"publicationDate":"1900-01-01","publicationTypes":"Journal Article","fieldsOfStudy":null,"isOpenAccess":false,"openAccessPdf":"","citationCount":"0","resultStr":"{\"title\":\"Development of Teaching Materials for Early Childhood about Environmental Subjects of endangered species butterfly Shijimiaeoides divinus (Leech) (Lepidoptera: Lycaenidae)\",\"authors\":\"K. Koda, Tomoko Shinya, Y. Koba\",\"doi\":\"10.5647/JSOEE.30.3_63\",\"DOIUrl\":null,\"url\":null,\"abstract\":\"現在、生息環境の変化によって多くの昆虫が絶滅危惧 種となっており、保全活動が盛んに行われている。保全 活動は主に1絶滅危惧種の保護、2生息地の改善、3絶 滅危惧種の実態に関する情報の普及・啓発活動の3つの 分野で活動が行われている。本報告で対象としたオオル リシジミ Shijimiaeoides divinus(Leech)は、瑠璃色の翅 を有しており、庭の花壇で見かけるシジミチョウより一 回り大きい草原性のシジミチョウである(図1 A・B)。 本種は1化性のチョウで、成虫は5月から6月中旬の約1ヶ 月間しか見ることができない。交尾、産卵をして、卵は 7日間~10日間ほどで孵化する。孵化した幼虫は1ヶ月ほ どで大きくなり、4齢幼虫が最後の脱皮をして地面や土 中で蛹となる。蛹になってからは約10か月間羽化せずに 翌年まで過ごす。幼虫の食草はマメ科のクララ Sophora flavescens の蕾と花(図1 C~F)に限定されるという特 異な生態を有している(福田ら 1984)。 オオルリシジミは日本や中国、朝鮮半島、ロシアに生 息しているが、いずれの国でも個体数が減少しているこ とから世界的な絶滅危惧種となっている(白水 2006; 藤岡 2007;Koda 2014)。国内では、かつて東北や関東 地方と九州地方に生息していたが(白水 2006)、1990年 頃から急激に減少しており、今では長野県と、熊本県の 阿蘇地方及び大分県の一部にしか生息が確認されていな い(日本チョウ類保全協会 2012)。絶滅に瀕している要 因は、大規模土地改良事業、河川改修、宅地造成などに より食草のクララが失われたことがあげられる。かつて クララは毒の成分を有していることから、トイレの蛆殺 しや漢方薬として利用されていた。しかし近年殺虫剤や 水洗式トイレの普及など人間の生活様式が変化して、ク ララを利用する必要がなくなったため、クララは雑草と して除草されるようになった。そのためクララに依存し ていたオオルリシジミも激減した(丸山 2005)。現在環 境省のレッドリスト(1)で絶滅危惧I類に指定されてい るほか、長野県(2)、熊本県(3)、大分県(4)にて指定希少 野生動植物に指定され、無断で捕獲することが禁止され ている。オオルリシジミは各地で保全研究(江田・中村 2009;Koda・Nakamura 2010;村田・野原 2003)や保 全活動が行われているが(福本 2017;江田・中村 2011; 清水 2009)、本種の保全・保護を継続的に進めていくた めには、次世代を担うこども世代に本種の存在と危機的 な生息状況を知ってもらうことが必要である(長野県 2018)。 オオルリシジミを知るための子ども向け教材は、すで にいくつか開発されている。江田・さくらい(2011)の 絵本は、オオルリシジミの生活史や天敵、共生昆虫など の生態を解説し、また南阿蘇ビジターセンター(2017) の紙芝居は、オオルリシジミが人間の農牧業形態へ適応 する様子を描いたものである。しかし、両教材ともに小 学校高学年以降で扱う学習内容が多く含まれており、大 人でも十分学べるページ数・情報量となっているため、 幼児に対してはじめから使用するのは難しい内容と考え られる。幼児期の段階においては、具体的にまず第1に オオルリシジミが卵から幼虫・蛹を経て成虫になる完全 変態のプロセスと、幼虫はクララという植物の花穂を食 べて生きていることを理解すること、第2にクララがな くなるとオオルリシジミも生きていけないという思考か ら、生態学的な環境のとらえ方の芽生えを養うことが必 要であると考えた。 井上(2009)は「幼児期の環境教育とは、幼児期の 発達理解を元に、子どもの主体的な遊びを重視しなが ら、持続可能な社会形成につながる環境観を形成する営 みである」と定義している。 報告 絶滅危惧種オオルリシジミの幼児向け環境教育教材の開発\",\"PeriodicalId\":308853,\"journal\":{\"name\":\"Japanese Journal of Environmental Education\",\"volume\":null,\"pages\":null},\"PeriodicalIF\":0.0000,\"publicationDate\":\"1900-01-01\",\"publicationTypes\":\"Journal Article\",\"fieldsOfStudy\":null,\"isOpenAccess\":false,\"openAccessPdf\":\"\",\"citationCount\":\"0\",\"resultStr\":null,\"platform\":\"Semanticscholar\",\"paperid\":null,\"PeriodicalName\":\"Japanese Journal of Environmental Education\",\"FirstCategoryId\":\"1085\",\"ListUrlMain\":\"https://doi.org/10.5647/JSOEE.30.3_63\",\"RegionNum\":0,\"RegionCategory\":null,\"ArticlePicture\":[],\"TitleCN\":null,\"AbstractTextCN\":null,\"PMCID\":null,\"EPubDate\":\"\",\"PubModel\":\"\",\"JCR\":\"\",\"JCRName\":\"\",\"Score\":null,\"Total\":0}","platform":"Semanticscholar","paperid":null,"PeriodicalName":"Japanese Journal of Environmental Education","FirstCategoryId":"1085","ListUrlMain":"https://doi.org/10.5647/JSOEE.30.3_63","RegionNum":0,"RegionCategory":null,"ArticlePicture":[],"TitleCN":null,"AbstractTextCN":null,"PMCID":null,"EPubDate":"","PubModel":"","JCR":"","JCRName":"","Score":null,"Total":0}
引用次数: 0
引用
批量引用