Differences in ant species diversity and species composition between managed and abandoned bamboo forests

近年,国産タケノコや竹材の需要の低下によって 竹林が管理放棄され,周囲の植生に侵入し拡大する 事例が日本各地で報告されている(例えば,大野ほ か 2002;鈴木 2010a;鳥居 2003;鳥居・井鷺 1997). 広葉樹林へのタケの侵入により,階層構造の単純化 や耐陰性の強い低木や草本以外の植物の減少が起こ り,植物の多様性が低下することが報告されている (瀬嵐ほか 1989;Suzaki and Nakatsubo 2001;鈴木 2010b;山口・井上 2004).また,竹林の放置期間に よる下層植生の発達状況の違い(小谷・江崎 2012) や竹林伐採後の植生回復(藤井・重松 2008;鈴木ほ か 2008)など,竹林の放置または管理再開による植 物への影響については研究事例が蓄積されつつあ る. しかし,竹林の昆虫群集に関する研究事例は少な い.環境変化の指標生物として有用な地表性甲虫 (Rainio and Niemelä 2003)について,広葉樹二次林 などの他の森林と比べると放置竹林ではオサムシ亜 族の多様性が低いこと(江崎ほか 2010)や,タケの 伐採によって個体数や種数が増加すること(大浦ほ か 2020;籠ほか 2013)が報告されている.また地表 性甲虫と同様に,小さな範囲の環境の変化に敏感に 反応し,環境指標生物として有用と考えられている アリ(Folgarait 1998;橋本ほか 1994)については, 広葉樹林に比べて竹林のほうが,種数が少ないこと が報告されている(Touyama et al. 1998).しかし, 管理が継続されている竹林と放置された竹林のアリ 群集を比較した研究は見当たらない. そこで本研究では,タケノコ生産を目的として整 備されている竹林と放置された竹林におけるアリの 種多様性と種組成の違いを明らかにすることを目的 とした.