短期运动干预对学龄儿童握力、投球距离及体能的影响

Kenji Ueta, Natsuki Miyao, S. Otomo
{"title":"短期运动干预对学龄儿童握力、投球距离及体能的影响","authors":"Kenji Ueta, Natsuki Miyao, S. Otomo","doi":"10.7219/jjses.39.2_1","DOIUrl":null,"url":null,"abstract":"The objective of this study was to investigate the effect of 5-minute, short-term exercises that is expected to improve a single physical fitness (grip strength or ball throwing for distance) in a physical education class in childhood. The subjects were 768 children in the 1 to 6 grade of elementary school. A short-term exercise related to grip strength and ball throwing for distance was developed and evaluated using the protocols for assessing grip strength and throwing a softball in the MEXT new physical fitness test and physical competence. The effect was investigated by sex and grade using data from those children with complete data sets, employing two-way repeated measure analysis of variance. The results showed that a significant main effect was noted on grip strength in the lower-grade boys (F [1, 144]= 33.793, p<0.01), upper-grade boys (F [1, 92]= 3.977, p<0.05), lower-grade girls (F [1, 121]= 18.581, p<0.01), and upper-grade girls (F [1, 101]= 4.582, p<0.05), and significant interaction effect were noted between time and intervention group in the upper grade. Similarly, in ball throwing for distance, a significant main effect of time was noted in the lower-grade boys (F[1, 58]= 25.692, p<0.01), upper-grade boys (F [1, 92]= 40.666, p<0.01), lower-grade girls (F [1, 43]= 11.822, p<0.01), and upper-grade girls (F[1, 101]= 19.406, p<0.01), and no significant interaction effect were noted between time and intervention group, among the all grade and sex. Regarding physical competence, the total score (p<0.05) and acceptance (p<0.01) improved significantly in the lower-grade girls. Furthermore, in ball throwing for distance, the total score (p<0.05) and recognition of physical competence (p<0.05) improved significantly and the total score (p<0.05) improved significantly in the upper-grade girls. Based on these findings, it was clarified that short-term exercises improve grip strength and ball throwing for distance, but that the effect on physical competence varies among the grades. ス ポ ー ツ 教 育 学 研 究 <原著論文> 2020. Vol.39, No.2, pp. 1-11 スポーツ教育学研究 第 39巻 第 2号 2020年 1月 ─ 2 ─ 1 . 緒言 我が国の児童の体力・運動能力は、緩やかな 向上傾向にあるが、体力が最も高かったとされ る昭和 60年度の水準と比較すると、依然として 低い状況であると報告されている(スポーツ庁, 2018)。 このうち握力及びボール投げについては、 新体力テスト施行後 19年間の推移をみると男女 ともに、低下傾向を示していると報告されている (スポーツ庁,2018)。 握力は、簡便で安全に測定できる筋力指標であ るが、全身の骨格筋量と相関があることが広く受 け入れられている(Doyle et. al., 1970)とともに、 子供の握力と糖尿病との関連についても示唆され ている(Okumus et. al., 2006)など、握力を向上 させる重要性は大きいといえる。 こうした児童の 握力を向上させるための運動については、登り棒 やうんてい、鉄棒などの本邦小学校において日常 的に利用可能な教具を用い、1日 5分から 10分 程度の短時間でできる運動を用いた検証が行われ ている(古俣ほか,1999)。 しかし、これらの研 究において検証された握力は、等尺性筋収縮によ る「受動的握力」であり、通常の握力計を用いて 測定される求心性筋収縮による「能動的握力」に は効果がないことが明らかにされている(古俣ほ か,2001)。 またこれ以外の研究においても「能 動的握力」に寄与する効果的な運動プログラムを 検証したものは少ない。 また、小学校体育科にお ける指導内容のなかで、特に「能動的握力」を育 成できる内容は、ゲーム領域のベースボール型 ゲームの授業におけるボールの把持動作と投動作 の内容程度と考えられる。 一方でボール投げは、体力・運動能力テストの 項目としてソフトボール投げが、全身の動作の巧 緻性の指標として採用されているが、ここ近年特 に低下が危惧されている運動能力である。 尾縣ほ か(2001)は、小学 2・3年生児童を対象として、 オーバーハンドスロー能力を改善する 1日 10分 程度で実施できる学習プログラムを作成し、その 効果を検証した結果、遠投能力の改善に効果があ ること、学習プログラム前の記録が低い児童ほど 記録の向上が大きいことを示した。 また、中山ほ か(2014)も、小学 4年生児童を対象とした短時 間の運動指導が遠投力に与える影響を検討し、指 導前の遠投力が低い児童に効果的であったことを 明らかにした。 さらに奥野ほか(1989)は、小学 1年生から中学 3年生までの児童生徒を対象とし、 遠投距離を伸ばす練習効果は、低年齢層で大きい 傾向を示し、性別にみると、男子では低学年に、 女子では中学年に学習の適時期を迎えることを示 した。 これより、ボール投げの遠投距離の向上に ついては、発育による筋肥大等で改善されるもの ではなく、比較的早い年齢期における適切なスキ ル学習が重要であると考えられる。 また、小学校 体育科における指導内容のなかで、特にボール投 げの遠投距離を育成できる内容は、ゲーム領域の ベースボール型ゲームに加えて、平成 29年 3月 に告示された新小学校学習指導要領では、陸上運 動あるいは走・跳の運動の領域に児童の実態に応 じて補足的に取り扱うことができるようになって いるが、明確に位置付けられてはいない。 このように、握力については、10分程度の短 時間で能動的握力が改善される運動については、 いまだ検証されていない。 また、ボール投げにお いては、児童の記録向上に効果のある 10分程度 の短時間である運動については、その対象とする 学年や、具体的な実施内容については限定的であ り、学校教育現場に適用可能な運動内容として確 立されているとは言い難い。 一方で、2020年か ら完全実施される新小学校学習指導要領において は、外国語活動やプログラミング教育の必修化が 実施される(文部科学省,2018)こととなって おり、児童の身体活動に当てられる時間は減少す ることが予想される。 しかし、体育科の授業時間 の増大はないため、児童の体力向上には工夫が求 められるが、業間や放課後等の時間を用いて指導 をするといった教諭の負担が大きくなる方向は現 実的には非常に難しい。 そこで、本研究では、体 育科の学習指導要領に定められた授業内容及び時 間数を妨げない授業開始後の準備運動として用い られることが多い 5分間程度の短時間に着目して (井上,2014;森村ほか,2014)、この時間に実施 できる運動を短時間運動として整理し、これらが 個別の体力要素のうち、生涯を通じた育成が望ま れる筋力と児童期に育成が望まれる巧緻性に与え る効果を検討することを目的とした。具体的には、 近年児童において低下の傾向を示している筋力と スポーツ教育学研究 第 39巻 第 2号 2020年 1月 ─ 2 ─ 1 . 緒言 我が国の児童の体力・運動能力は、緩やかな 向上傾向にあるが、体力が最も高かったとされ る昭和 60年度の水準と比較すると、依然として 低い状況であると報告されている(スポーツ庁, 2018)。 このうち握力及びボール投げについては、 新体力テスト施行後 19年間の推移をみると男女 ともに、低下傾向を示していると報告されている (スポーツ庁,2018)。 握力は、簡便で安全に測定できる筋力指標であ るが、全身の骨格筋量と相関があることが広く受 け入れられている(Doyle et. al., 1970)とともに、 子供の握力と糖尿病との関連についても示唆され ている(Okumus et. al., 2006)など、握力を向上 させる重要性は大きいといえる。 こうした児童の 握力を向上させるための運動については、登り棒 やうんてい、鉄棒などの本邦小学校において日常 的に利用可能な教具を用い、1日 5分から 10分 程度の短時間でできる運動を用いた検証が行われ ている(古俣ほか,1999)。 しかし、これらの研 究において検証された握力は、等尺性筋収縮によ る「受動的握力」であり、通常の握力計を用いて 測定される求心性筋収縮による「能動的握力」に は効果がないことが明らかにされている(古俣ほ か,2001)。 またこれ以外の研究においても「能 動的握力」に寄与する効果的な運動プログラムを 検証したものは少ない。 また、小学校体育科にお ける指導内容のなかで、特に「能動的握力」を育 成できる内容は、ゲーム領域のベースボール型 ゲームの授業におけるボールの把持動作と投動作 の内容程度と考えられる。 一方でボール投げは、体力・運動能力テストの 項目としてソフトボール投げが、全身の動作の巧 緻性の指標として採用されているが、ここ近年特 に低下が危惧されている運動能力である。 尾縣ほ か(2001)は、小学 2・3年生児童を対象として、 オーバーハンドスロー能力を改善する 1日 10分 程度で実施できる学習プログラムを作成し、その 効果を検証した結果、遠投能力の改善に効果があ ること、学習プログラム前の記録が低い児童ほど 記録の向上が大きいことを示した。 また、中山ほ か(2014)も、小学 4年生児童を対象とした短時 間の運動指導が遠投力に与える影響を検討し、指 導前の遠投力が低い児童に効果的であったことを 明らかにした。 さらに奥野ほか(1989)は、小学 1年生から中学 3年生までの児童生徒を対象とし、 遠投距離を伸ばす練習効果は、低年齢層で大きい 傾向を示し、性別にみると、男子では低学年に、 女子では中学年に学習の適時期を迎えることを示 した。 これより、ボール投げの遠投距離の向上に ついては、発育による筋肥大等で改善されるもの ではなく、比較的早い年齢期における適切なスキ ル学習が重要であると考えられる。 また、小学校 体育科における指導内容のなかで、特にボール投 げの遠投距離を育成できる内容は、ゲーム領域の ベースボール型ゲームに加えて、平成 29年 3月 に告示された新小学校学習指導要領では、陸上運 動あるいは走・跳の運動の領域に児童の実態に応 じて補足的に取り扱うことができるようになって いるが、明確に位置付けられてはいない。 このように、握力については、10分程度の短 時間で能動的握力が改善される運動については、 いまだ検証されていない。 また、ボール投げにお いては、児童の記録向上に効果のある 10分程度 の短時間である運動については、その対象とする 学年や、具体的な実施内容については限定的であ り、学校教育現場に適用可能な運動内容として確 立されているとは言い難い。 一方で、2020年か ら完全実施される新小学校学習指導要領において は、外国語活動やプログラミング教育の必修化が 実施される(文部科学省,2018)こととなって おり、児童の身体活動に当てられる時間は減少す ることが予想される。 しかし、体育科の授業時間 の増大はないため、児童の体力向上には工夫が求 められるが、業間や放課後等の時間を用いて指導 をするといった教諭の負担が大きくなる方向は現 実的には非常に難しい。 そこで、本研究では、体 育科の学習指導要領に定められた授業内容及び時 間数を妨げない授業開始後の準備運動として用い られることが多い 5分間程度の短時間に着目して (井上,2014;森村ほか,2014)、この時間に実施 できる運動を短時間運動として整理し、これらが 個別の体力要素のうち、生涯を通じた育成が望ま れる筋力と児童期に育成が望まれる巧緻性に与え る効果を検討することを目的とした。具体的には、 近年児童において低下の傾向を示している筋力と ─ 3 ─ 上田:短時間運動が児童の握力及びボール投げならびに運動有能感に与える影響 しては握力に、巧緻性としてはボール投げに着目 し、それぞれの体力の測定結果や、児童の運動有 能感に与える効果について検討することとした。 これにより、児童期に育成が望まれる体力要素を 日々の体育授業時間内で効率的に向上させること ができる可能性を指し示すことができると考えら れる。","PeriodicalId":119114,"journal":{"name":"Japanese Journal of Sport Education Studies","volume":"8 1","pages":"0"},"PeriodicalIF":0.0000,"publicationDate":"2020-01-31","publicationTypes":"Journal Article","fieldsOfStudy":null,"isOpenAccess":false,"openAccessPdf":"","citationCount":"0","resultStr":"{\"title\":\"Impacts of short-term exercises interventions on grip strength,ball throwing for distance and physical competence in school children\",\"authors\":\"Kenji Ueta, Natsuki Miyao, S. 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The results showed that a significant main effect was noted on grip strength in the lower-grade boys (F [1, 144]= 33.793, p<0.01), upper-grade boys (F [1, 92]= 3.977, p<0.05), lower-grade girls (F [1, 121]= 18.581, p<0.01), and upper-grade girls (F [1, 101]= 4.582, p<0.05), and significant interaction effect were noted between time and intervention group in the upper grade. Similarly, in ball throwing for distance, a significant main effect of time was noted in the lower-grade boys (F[1, 58]= 25.692, p<0.01), upper-grade boys (F [1, 92]= 40.666, p<0.01), lower-grade girls (F [1, 43]= 11.822, p<0.01), and upper-grade girls (F[1, 101]= 19.406, p<0.01), and no significant interaction effect were noted between time and intervention group, among the all grade and sex. Regarding physical competence, the total score (p<0.05) and acceptance (p<0.01) improved significantly in the lower-grade girls. Furthermore, in ball throwing for distance, the total score (p<0.05) and recognition of physical competence (p<0.05) improved significantly and the total score (p<0.05) improved significantly in the upper-grade girls. Based on these findings, it was clarified that short-term exercises improve grip strength and ball throwing for distance, but that the effect on physical competence varies among the grades. ス ポ ー ツ 教 育 学 研 究 <原著論文> 2020. Vol.39, No.2, pp. 1-11 スポーツ教育学研究 第 39巻 第 2号 2020年 1月 ─ 2 ─ 1 . 緒言 我が国の児童の体力・運動能力は、緩やかな 向上傾向にあるが、体力が最も高かったとされ る昭和 60年度の水準と比較すると、依然として 低い状況であると報告されている(スポーツ庁, 2018)。 このうち握力及びボール投げについては、 新体力テスト施行後 19年間の推移をみると男女 ともに、低下傾向を示していると報告されている (スポーツ庁,2018)。 握力は、簡便で安全に測定できる筋力指標であ るが、全身の骨格筋量と相関があることが広く受 け入れられている(Doyle et. al., 1970)とともに、 子供の握力と糖尿病との関連についても示唆され ている(Okumus et. al., 2006)など、握力を向上 させる重要性は大きいといえる。 こうした児童の 握力を向上させるための運動については、登り棒 やうんてい、鉄棒などの本邦小学校において日常 的に利用可能な教具を用い、1日 5分から 10分 程度の短時間でできる運動を用いた検証が行われ ている(古俣ほか,1999)。 しかし、これらの研 究において検証された握力は、等尺性筋収縮によ る「受動的握力」であり、通常の握力計を用いて 測定される求心性筋収縮による「能動的握力」に は効果がないことが明らかにされている(古俣ほ か,2001)。 またこれ以外の研究においても「能 動的握力」に寄与する効果的な運動プログラムを 検証したものは少ない。 また、小学校体育科にお ける指導内容のなかで、特に「能動的握力」を育 成できる内容は、ゲーム領域のベースボール型 ゲームの授業におけるボールの把持動作と投動作 の内容程度と考えられる。 一方でボール投げは、体力・運動能力テストの 項目としてソフトボール投げが、全身の動作の巧 緻性の指標として採用されているが、ここ近年特 に低下が危惧されている運動能力である。 尾縣ほ か(2001)は、小学 2・3年生児童を対象として、 オーバーハンドスロー能力を改善する 1日 10分 程度で実施できる学習プログラムを作成し、その 効果を検証した結果、遠投能力の改善に効果があ ること、学習プログラム前の記録が低い児童ほど 記録の向上が大きいことを示した。 また、中山ほ か(2014)も、小学 4年生児童を対象とした短時 間の運動指導が遠投力に与える影響を検討し、指 導前の遠投力が低い児童に効果的であったことを 明らかにした。 さらに奥野ほか(1989)は、小学 1年生から中学 3年生までの児童生徒を対象とし、 遠投距離を伸ばす練習効果は、低年齢層で大きい 傾向を示し、性別にみると、男子では低学年に、 女子では中学年に学習の適時期を迎えることを示 した。 これより、ボール投げの遠投距離の向上に ついては、発育による筋肥大等で改善されるもの ではなく、比較的早い年齢期における適切なスキ ル学習が重要であると考えられる。 また、小学校 体育科における指導内容のなかで、特にボール投 げの遠投距離を育成できる内容は、ゲーム領域の ベースボール型ゲームに加えて、平成 29年 3月 に告示された新小学校学習指導要領では、陸上運 動あるいは走・跳の運動の領域に児童の実態に応 じて補足的に取り扱うことができるようになって いるが、明確に位置付けられてはいない。 このように、握力については、10分程度の短 時間で能動的握力が改善される運動については、 いまだ検証されていない。 また、ボール投げにお いては、児童の記録向上に効果のある 10分程度 の短時間である運動については、その対象とする 学年や、具体的な実施内容については限定的であ り、学校教育現場に適用可能な運動内容として確 立されているとは言い難い。 一方で、2020年か ら完全実施される新小学校学習指導要領において は、外国語活動やプログラミング教育の必修化が 実施される(文部科学省,2018)こととなって おり、児童の身体活動に当てられる時間は減少す ることが予想される。 しかし、体育科の授業時間 の増大はないため、児童の体力向上には工夫が求 められるが、業間や放課後等の時間を用いて指導 をするといった教諭の負担が大きくなる方向は現 実的には非常に難しい。 そこで、本研究では、体 育科の学習指導要領に定められた授業内容及び時 間数を妨げない授業開始後の準備運動として用い られることが多い 5分間程度の短時間に着目して (井上,2014;森村ほか,2014)、この時間に実施 できる運動を短時間運動として整理し、これらが 個別の体力要素のうち、生涯を通じた育成が望ま れる筋力と児童期に育成が望まれる巧緻性に与え る効果を検討することを目的とした。具体的には、 近年児童において低下の傾向を示している筋力と スポーツ教育学研究 第 39巻 第 2号 2020年 1月 ─ 2 ─ 1 . 緒言 我が国の児童の体力・運動能力は、緩やかな 向上傾向にあるが、体力が最も高かったとされ る昭和 60年度の水準と比較すると、依然として 低い状況であると報告されている(スポーツ庁, 2018)。 このうち握力及びボール投げについては、 新体力テスト施行後 19年間の推移をみると男女 ともに、低下傾向を示していると報告されている (スポーツ庁,2018)。 握力は、簡便で安全に測定できる筋力指標であ るが、全身の骨格筋量と相関があることが広く受 け入れられている(Doyle et. al., 1970)とともに、 子供の握力と糖尿病との関連についても示唆され ている(Okumus et. al., 2006)など、握力を向上 させる重要性は大きいといえる。 こうした児童の 握力を向上させるための運動については、登り棒 やうんてい、鉄棒などの本邦小学校において日常 的に利用可能な教具を用い、1日 5分から 10分 程度の短時間でできる運動を用いた検証が行われ ている(古俣ほか,1999)。 しかし、これらの研 究において検証された握力は、等尺性筋収縮によ る「受動的握力」であり、通常の握力計を用いて 測定される求心性筋収縮による「能動的握力」に は効果がないことが明らかにされている(古俣ほ か,2001)。 またこれ以外の研究においても「能 動的握力」に寄与する効果的な運動プログラムを 検証したものは少ない。 また、小学校体育科にお ける指導内容のなかで、特に「能動的握力」を育 成できる内容は、ゲーム領域のベースボール型 ゲームの授業におけるボールの把持動作と投動作 の内容程度と考えられる。 一方でボール投げは、体力・運動能力テストの 項目としてソフトボール投げが、全身の動作の巧 緻性の指標として採用されているが、ここ近年特 に低下が危惧されている運動能力である。 尾縣ほ か(2001)は、小学 2・3年生児童を対象として、 オーバーハンドスロー能力を改善する 1日 10分 程度で実施できる学習プログラムを作成し、その 効果を検証した結果、遠投能力の改善に効果があ ること、学習プログラム前の記録が低い児童ほど 記録の向上が大きいことを示した。 また、中山ほ か(2014)も、小学 4年生児童を対象とした短時 間の運動指導が遠投力に与える影響を検討し、指 導前の遠投力が低い児童に効果的であったことを 明らかにした。 さらに奥野ほか(1989)は、小学 1年生から中学 3年生までの児童生徒を対象とし、 遠投距離を伸ばす練習効果は、低年齢層で大きい 傾向を示し、性別にみると、男子では低学年に、 女子では中学年に学習の適時期を迎えることを示 した。 これより、ボール投げの遠投距離の向上に ついては、発育による筋肥大等で改善されるもの ではなく、比較的早い年齢期における適切なスキ ル学習が重要であると考えられる。 また、小学校 体育科における指導内容のなかで、特にボール投 げの遠投距離を育成できる内容は、ゲーム領域の ベースボール型ゲームに加えて、平成 29年 3月 に告示された新小学校学習指導要領では、陸上運 動あるいは走・跳の運動の領域に児童の実態に応 じて補足的に取り扱うことができるようになって いるが、明確に位置付けられてはいない。 このように、握力については、10分程度の短 時間で能動的握力が改善される運動については、 いまだ検証されていない。 また、ボール投げにお いては、児童の記録向上に効果のある 10分程度 の短時間である運動については、その対象とする 学年や、具体的な実施内容については限定的であ り、学校教育現場に適用可能な運動内容として確 立されているとは言い難い。 一方で、2020年か ら完全実施される新小学校学習指導要領において は、外国語活動やプログラミング教育の必修化が 実施される(文部科学省,2018)こととなって おり、児童の身体活動に当てられる時間は減少す ることが予想される。 しかし、体育科の授業時間 の増大はないため、児童の体力向上には工夫が求 められるが、業間や放課後等の時間を用いて指導 をするといった教諭の負担が大きくなる方向は現 実的には非常に難しい。 そこで、本研究では、体 育科の学習指導要領に定められた授業内容及び時 間数を妨げない授業開始後の準備運動として用い られることが多い 5分間程度の短時間に着目して (井上,2014;森村ほか,2014)、この時間に実施 できる運動を短時間運動として整理し、これらが 個別の体力要素のうち、生涯を通じた育成が望ま れる筋力と児童期に育成が望まれる巧緻性に与え る効果を検討することを目的とした。具体的には、 近年児童において低下の傾向を示している筋力と ─ 3 ─ 上田:短時間運動が児童の握力及びボール投げならびに運動有能感に与える影響 しては握力に、巧緻性としてはボール投げに着目 し、それぞれの体力の測定結果や、児童の運動有 能感に与える効果について検討することとした。 これにより、児童期に育成が望まれる体力要素を 日々の体育授業時間内で効率的に向上させること ができる可能性を指し示すことができると考えら れる。\",\"PeriodicalId\":119114,\"journal\":{\"name\":\"Japanese Journal of Sport Education Studies\",\"volume\":\"8 1\",\"pages\":\"0\"},\"PeriodicalIF\":0.0000,\"publicationDate\":\"2020-01-31\",\"publicationTypes\":\"Journal Article\",\"fieldsOfStudy\":null,\"isOpenAccess\":false,\"openAccessPdf\":\"\",\"citationCount\":\"0\",\"resultStr\":null,\"platform\":\"Semanticscholar\",\"paperid\":null,\"PeriodicalName\":\"Japanese Journal of Sport Education 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摘要

本研究的目的是调查5分钟的短期运动对提高儿童体育课单项体能(握力或远距离投球)的影响。研究对象为768名小学一至六年级的儿童。我们开发了一种与握力和远距离投球相关的短期运动,并使用了MEXT新体能测试和身体能力测试中评估握力和投掷垒球的方案。使用来自具有完整数据集的儿童的数据,采用双向重复测量方差分析,按性别和年级调查效果。结果显示,低年级男生的握力存在显著的主效应(F [1,144]= 33.793, p 2020)。39, 2,页1 - 11スポーツ教育学研究第39巻第2号2020年1月2──1。緒言我が国の児童の体力・運動能力は,緩やかな向上傾向にあるが,体力が最も高かったとされる昭和60年度の水準と比較すると,依然として低い状況であると報告されている(スポーツ庁,2018)。このうち握力及びボール投げについては,新体力テスト施行後19年間の推移をみると男女ともに,低下傾向を示していると報告されている(スポーツ庁,2018)。握力は,簡便で安全に測定できる筋力指標であるが,全身の骨格筋量と相関があることが広く受け入れられている(Doyle等人,1970)とともに,子供の握力と糖尿病との関連についても示唆されている(okumu等人。,2006)など,握力を向上させる重要性は大きいといえる。こうした児童の握力を向上させるための運動については,登り棒やうんてい,鉄棒などの本邦小学校において日常的に利用可能な教具を用い,1日5分から10分程度の短時間でできる運動を用いた検証が行われている(古俣ほか,1999)。しかし,これらの研究において検証された握力は,等尺性筋収縮による”受動的握力”であり,通常の握力計を用いて測定される求心性筋収縮による”能動的握力”には効果がないことが明らかにされている(古俣ほか,2001)。またこれ以外の研究においても”能動的握力”に寄与する効果的な運動プログラムを検証したものは少ない。また,小学校体育科における指導内容のなかで,特に”能動的握力”を育成できる内容は,ゲーム領域のベースボール型ゲームの授業におけるボールの把持動作と投動作の内容程度と考えられる。一方でボール投げは,体力・運動能力テストの項目としてソフトボール投げが,全身の動作の巧緻性の指標として採用されているが,ここ近年特に低下が危惧されている運動能力である。尾縣ほか(2001)は,小学2・3年生児童を対象として,オーバーハンドスロー能力を改善する1日10分程度で実施できる学習プログラムを作成し,その効果を検証した結果,遠投能力の改善に効果があること,学習プログラム前の記録が低い児童ほど記録の向上が大きいことを示した。また,中山ほか(2014)も,小学4年生児童を対象とした短時間の運動指導が遠投力に与える影響を検討し,指導前の遠投力が低い児童に効果的であったことを明らかにした。さらに奥野ほか(1989)は,小学1年生から中学3年生までの児童生徒を対象とし,遠投距離を伸ばす練習効果は,低年齢層で大きい傾向を示し,性別にみると,男子では低学年に,女子では中学年に学習の適時期を迎えることを示した。これより,ボール投げの遠投距離の向上については,発育による筋肥大等で改善されるものではなく,比較的早い年齢期における適切なスキル学習が重要であると考えられる。このように,握力については,10分程度の短時間で能動的握力が改善される運動については,いまだ検証されていない。また,ボール投げにおいては,児童の記録向上に効果のある10分程度の短時間である運動については,その対象とする学年や,具体的な実施内容については限定的であり,学校教育現場に適用可能な運動内容として確立されているとは言い難い。しかし、体育科の授業時間の増大はないため,児童の体力向上には工夫が求められるが,業間や放課後等の時間を用いて指導をするといった教諭の負担が大きくなる方向は現実的には非常に難しい。具体的には,近年児童において低下の傾向を示している筋力とスポーツ教育学研究第39巻第2号2020年1月2──1。緒言我が国の児童の体力・運動能力は,緩やかな向上傾向にあるが,体力が最も高かったとされる昭和60年度の水準と比較すると,依然として低い状況であると報告されている(スポーツ庁,2018)。このうち握力及びボール投げについては,新体力テスト施行後19年間の推移をみると男女ともに,低下傾向を示していると報告されている(スポーツ庁,2018)。握力は,簡便で安全に測定できる筋力指標であるが,全身の骨格筋量と相関があることが広く受け入れられている(Doyle等人,1970)とともに,子供の握力と糖尿病との関連についても示唆されている(okumu等人。
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Impacts of short-term exercises interventions on grip strength,ball throwing for distance and physical competence in school children
The objective of this study was to investigate the effect of 5-minute, short-term exercises that is expected to improve a single physical fitness (grip strength or ball throwing for distance) in a physical education class in childhood. The subjects were 768 children in the 1 to 6 grade of elementary school. A short-term exercise related to grip strength and ball throwing for distance was developed and evaluated using the protocols for assessing grip strength and throwing a softball in the MEXT new physical fitness test and physical competence. The effect was investigated by sex and grade using data from those children with complete data sets, employing two-way repeated measure analysis of variance. The results showed that a significant main effect was noted on grip strength in the lower-grade boys (F [1, 144]= 33.793, p<0.01), upper-grade boys (F [1, 92]= 3.977, p<0.05), lower-grade girls (F [1, 121]= 18.581, p<0.01), and upper-grade girls (F [1, 101]= 4.582, p<0.05), and significant interaction effect were noted between time and intervention group in the upper grade. Similarly, in ball throwing for distance, a significant main effect of time was noted in the lower-grade boys (F[1, 58]= 25.692, p<0.01), upper-grade boys (F [1, 92]= 40.666, p<0.01), lower-grade girls (F [1, 43]= 11.822, p<0.01), and upper-grade girls (F[1, 101]= 19.406, p<0.01), and no significant interaction effect were noted between time and intervention group, among the all grade and sex. Regarding physical competence, the total score (p<0.05) and acceptance (p<0.01) improved significantly in the lower-grade girls. Furthermore, in ball throwing for distance, the total score (p<0.05) and recognition of physical competence (p<0.05) improved significantly and the total score (p<0.05) improved significantly in the upper-grade girls. Based on these findings, it was clarified that short-term exercises improve grip strength and ball throwing for distance, but that the effect on physical competence varies among the grades. ス ポ ー ツ 教 育 学 研 究 <原著論文> 2020. Vol.39, No.2, pp. 1-11 スポーツ教育学研究 第 39巻 第 2号 2020年 1月 ─ 2 ─ 1 . 緒言 我が国の児童の体力・運動能力は、緩やかな 向上傾向にあるが、体力が最も高かったとされ る昭和 60年度の水準と比較すると、依然として 低い状況であると報告されている(スポーツ庁, 2018)。 このうち握力及びボール投げについては、 新体力テスト施行後 19年間の推移をみると男女 ともに、低下傾向を示していると報告されている (スポーツ庁,2018)。 握力は、簡便で安全に測定できる筋力指標であ るが、全身の骨格筋量と相関があることが広く受 け入れられている(Doyle et. al., 1970)とともに、 子供の握力と糖尿病との関連についても示唆され ている(Okumus et. al., 2006)など、握力を向上 させる重要性は大きいといえる。 こうした児童の 握力を向上させるための運動については、登り棒 やうんてい、鉄棒などの本邦小学校において日常 的に利用可能な教具を用い、1日 5分から 10分 程度の短時間でできる運動を用いた検証が行われ ている(古俣ほか,1999)。 しかし、これらの研 究において検証された握力は、等尺性筋収縮によ る「受動的握力」であり、通常の握力計を用いて 測定される求心性筋収縮による「能動的握力」に は効果がないことが明らかにされている(古俣ほ か,2001)。 またこれ以外の研究においても「能 動的握力」に寄与する効果的な運動プログラムを 検証したものは少ない。 また、小学校体育科にお ける指導内容のなかで、特に「能動的握力」を育 成できる内容は、ゲーム領域のベースボール型 ゲームの授業におけるボールの把持動作と投動作 の内容程度と考えられる。 一方でボール投げは、体力・運動能力テストの 項目としてソフトボール投げが、全身の動作の巧 緻性の指標として採用されているが、ここ近年特 に低下が危惧されている運動能力である。 尾縣ほ か(2001)は、小学 2・3年生児童を対象として、 オーバーハンドスロー能力を改善する 1日 10分 程度で実施できる学習プログラムを作成し、その 効果を検証した結果、遠投能力の改善に効果があ ること、学習プログラム前の記録が低い児童ほど 記録の向上が大きいことを示した。 また、中山ほ か(2014)も、小学 4年生児童を対象とした短時 間の運動指導が遠投力に与える影響を検討し、指 導前の遠投力が低い児童に効果的であったことを 明らかにした。 さらに奥野ほか(1989)は、小学 1年生から中学 3年生までの児童生徒を対象とし、 遠投距離を伸ばす練習効果は、低年齢層で大きい 傾向を示し、性別にみると、男子では低学年に、 女子では中学年に学習の適時期を迎えることを示 した。 これより、ボール投げの遠投距離の向上に ついては、発育による筋肥大等で改善されるもの ではなく、比較的早い年齢期における適切なスキ ル学習が重要であると考えられる。 また、小学校 体育科における指導内容のなかで、特にボール投 げの遠投距離を育成できる内容は、ゲーム領域の ベースボール型ゲームに加えて、平成 29年 3月 に告示された新小学校学習指導要領では、陸上運 動あるいは走・跳の運動の領域に児童の実態に応 じて補足的に取り扱うことができるようになって いるが、明確に位置付けられてはいない。 このように、握力については、10分程度の短 時間で能動的握力が改善される運動については、 いまだ検証されていない。 また、ボール投げにお いては、児童の記録向上に効果のある 10分程度 の短時間である運動については、その対象とする 学年や、具体的な実施内容については限定的であ り、学校教育現場に適用可能な運動内容として確 立されているとは言い難い。 一方で、2020年か ら完全実施される新小学校学習指導要領において は、外国語活動やプログラミング教育の必修化が 実施される(文部科学省,2018)こととなって おり、児童の身体活動に当てられる時間は減少す ることが予想される。 しかし、体育科の授業時間 の増大はないため、児童の体力向上には工夫が求 められるが、業間や放課後等の時間を用いて指導 をするといった教諭の負担が大きくなる方向は現 実的には非常に難しい。 そこで、本研究では、体 育科の学習指導要領に定められた授業内容及び時 間数を妨げない授業開始後の準備運動として用い られることが多い 5分間程度の短時間に着目して (井上,2014;森村ほか,2014)、この時間に実施 できる運動を短時間運動として整理し、これらが 個別の体力要素のうち、生涯を通じた育成が望ま れる筋力と児童期に育成が望まれる巧緻性に与え る効果を検討することを目的とした。具体的には、 近年児童において低下の傾向を示している筋力と スポーツ教育学研究 第 39巻 第 2号 2020年 1月 ─ 2 ─ 1 . 緒言 我が国の児童の体力・運動能力は、緩やかな 向上傾向にあるが、体力が最も高かったとされ る昭和 60年度の水準と比較すると、依然として 低い状況であると報告されている(スポーツ庁, 2018)。 このうち握力及びボール投げについては、 新体力テスト施行後 19年間の推移をみると男女 ともに、低下傾向を示していると報告されている (スポーツ庁,2018)。 握力は、簡便で安全に測定できる筋力指標であ るが、全身の骨格筋量と相関があることが広く受 け入れられている(Doyle et. al., 1970)とともに、 子供の握力と糖尿病との関連についても示唆され ている(Okumus et. al., 2006)など、握力を向上 させる重要性は大きいといえる。 こうした児童の 握力を向上させるための運動については、登り棒 やうんてい、鉄棒などの本邦小学校において日常 的に利用可能な教具を用い、1日 5分から 10分 程度の短時間でできる運動を用いた検証が行われ ている(古俣ほか,1999)。 しかし、これらの研 究において検証された握力は、等尺性筋収縮によ る「受動的握力」であり、通常の握力計を用いて 測定される求心性筋収縮による「能動的握力」に は効果がないことが明らかにされている(古俣ほ か,2001)。 またこれ以外の研究においても「能 動的握力」に寄与する効果的な運動プログラムを 検証したものは少ない。 また、小学校体育科にお ける指導内容のなかで、特に「能動的握力」を育 成できる内容は、ゲーム領域のベースボール型 ゲームの授業におけるボールの把持動作と投動作 の内容程度と考えられる。 一方でボール投げは、体力・運動能力テストの 項目としてソフトボール投げが、全身の動作の巧 緻性の指標として採用されているが、ここ近年特 に低下が危惧されている運動能力である。 尾縣ほ か(2001)は、小学 2・3年生児童を対象として、 オーバーハンドスロー能力を改善する 1日 10分 程度で実施できる学習プログラムを作成し、その 効果を検証した結果、遠投能力の改善に効果があ ること、学習プログラム前の記録が低い児童ほど 記録の向上が大きいことを示した。 また、中山ほ か(2014)も、小学 4年生児童を対象とした短時 間の運動指導が遠投力に与える影響を検討し、指 導前の遠投力が低い児童に効果的であったことを 明らかにした。 さらに奥野ほか(1989)は、小学 1年生から中学 3年生までの児童生徒を対象とし、 遠投距離を伸ばす練習効果は、低年齢層で大きい 傾向を示し、性別にみると、男子では低学年に、 女子では中学年に学習の適時期を迎えることを示 した。 これより、ボール投げの遠投距離の向上に ついては、発育による筋肥大等で改善されるもの ではなく、比較的早い年齢期における適切なスキ ル学習が重要であると考えられる。 また、小学校 体育科における指導内容のなかで、特にボール投 げの遠投距離を育成できる内容は、ゲーム領域の ベースボール型ゲームに加えて、平成 29年 3月 に告示された新小学校学習指導要領では、陸上運 動あるいは走・跳の運動の領域に児童の実態に応 じて補足的に取り扱うことができるようになって いるが、明確に位置付けられてはいない。 このように、握力については、10分程度の短 時間で能動的握力が改善される運動については、 いまだ検証されていない。 また、ボール投げにお いては、児童の記録向上に効果のある 10分程度 の短時間である運動については、その対象とする 学年や、具体的な実施内容については限定的であ り、学校教育現場に適用可能な運動内容として確 立されているとは言い難い。 一方で、2020年か ら完全実施される新小学校学習指導要領において は、外国語活動やプログラミング教育の必修化が 実施される(文部科学省,2018)こととなって おり、児童の身体活動に当てられる時間は減少す ることが予想される。 しかし、体育科の授業時間 の増大はないため、児童の体力向上には工夫が求 められるが、業間や放課後等の時間を用いて指導 をするといった教諭の負担が大きくなる方向は現 実的には非常に難しい。 そこで、本研究では、体 育科の学習指導要領に定められた授業内容及び時 間数を妨げない授業開始後の準備運動として用い られることが多い 5分間程度の短時間に着目して (井上,2014;森村ほか,2014)、この時間に実施 できる運動を短時間運動として整理し、これらが 個別の体力要素のうち、生涯を通じた育成が望ま れる筋力と児童期に育成が望まれる巧緻性に与え る効果を検討することを目的とした。具体的には、 近年児童において低下の傾向を示している筋力と ─ 3 ─ 上田:短時間運動が児童の握力及びボール投げならびに運動有能感に与える影響 しては握力に、巧緻性としてはボール投げに着目 し、それぞれの体力の測定結果や、児童の運動有 能感に与える効果について検討することとした。 これにより、児童期に育成が望まれる体力要素を 日々の体育授業時間内で効率的に向上させること ができる可能性を指し示すことができると考えら れる。
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小学校体育科の水泳運動における第4学年の児童を対象とした面かぶりクロールの観察的動作評価基準の作成とその信頼性・妥当性の検証 アスリートの視点から、第3期スポーツ基本計画に期待すること —スポーツ基本計画の実行を感じる瞬間が、増えること— 小学校低学年の体育授業において再適用した運動有能感を高める指導方略の有効性の検討:2年生のボール投げ単元を対象に Trend of Physical Education Classes Research with Mixed Methods Research in the English Literature 中学校保健体育教師の男女共習体育授業に対する認識に関する一考察:体育教師の職業的社会化の視点から
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