小学体育三、四年级“身心释放练习”课程的研究

Michiyo Saeki, M. Fujita
{"title":"小学体育三、四年级“身心释放练习”课程的研究","authors":"Michiyo Saeki, M. Fujita","doi":"10.7219/JJSES.38.1_71","DOIUrl":null,"url":null,"abstract":"The purpose of this study was to verify the effects of team building through physical challenges in third and fourth grade of elementary school physical education. The participants were 5 classes of 126 schoolchildren in 2 elementary schools. The data for analysis were gathered by team building questionnaire focusing on school children’s interactive and cooperative behaviors in physical education class developed by Komatsuzaki and the others in 2001. The descriptions of children’s impressions in every class were analyzed by text mining with KH Coder. The “exercises for releasing body and mind” lessons of the unit consists of 5 times 45 minutes lessons with physical challenges. It was given from October to November in 2013 and in June of 2014. They got exercise of “the edge of a precipice (the rock)” and “giant ball carrying without using hands” in a group consisting of 6, 7, or 8 children in 4th and 5th class. The results were summarized as follows : 1) The total averages of team building in 5 classes were improved little by little. 2) There were significant differences under 5 % level (1st class < 5th class) in 3 classes. 3) There were increase tendency (1st class < 5th class) in 2 classes. 4) The number of words that were “voice”, “mind”, “cooperation”, “happy” and “can do” in descriptions of children’s impressions in 5th class increased to that in 3rd class. 5) Physical challenges produced good effects on team building. ス ポ ー ツ 教 育 学 研 究 <実践報告> 2018. Vol.38, No.1, pp. 71-82 スポーツ教育学研究 第 38巻 第 1号 平成 30年 5月 ─ 72 ─ I.緒言 平成 20年 3月に小学校学習指導要領の改訂が 行われ、平成 23年度から全面的に実施されてい る。体育科の改善の基本方針は、「基礎的な身体 能力を身に付け、実生活において運動を豊かに実 践していくための資質や能力の基礎を培う」(文 部科学省,2008,p.3)とされ、各学年の系統性 が図られ、指導する内容もより明確化・体系化さ れた。また、子どもの長期的な体力低下の傾向か ら、体力の向上を図る内容が低学年から示された。 具体的には、高学年のみの位置づけであった「体 つくり運動」が、低・中学年まで下り、低・中学 年の「体つくり運動」領域は、「体ほぐしの運動」 と「多様な動きをつくる運動(遊び)」の二つで 構成されることとなった。これは、子どもの体力 の低下傾向は深刻な課題であるが、低・中学年の 段階では体力を高めることを学習の直接の目的に することは難しく、この時期に様々な身体の基本 的な動きや各種の運動の基礎となる動きを培って おくことが重要であるからである。 村田は、「この改訂の背景には、年々深刻化す る子どもの体力低下とともに、近年の子どもの心 と体をめぐる多くの問題が今なお進行している状 況がある。特に、携帯やメールの急速な普及は、 身体的な遊びをますます減少させただけでなく、 生身の身体によるコミュニケーションの機会を奪 い、多くの歪みを生んでいる。それは『心は敏感 でピリピリ、でも身体は鈍感』という現代っ子の 心と体のアンバランスであり、身体感覚の欠如で ある。つまり問題なのは、低下した体力の数値で はなく、子ども自身が自らの体の有様に無頓着、 無自覚であるということではないだろうか。こう した『他者とうまくかかわれない子ども』『生き た体の実感に乏しい子ども』『どこかぎこちなく、 ぎくしゃくした動きの子ども』の心と体をどう解 きほぐし、本来あるべき『体の中のセンサー(身 体感覚)』を方針として、コミュニケーション能 力や論理的思考力を育み磨いていくか。子ども の心と体の自然と内なるパワーを取り戻す必要 性は、ますます増加しているのである。」(村田, 2009,p.24)と述べている。 こうした子どもの心と体の現実に対して、学校 体育に導入されたのが「体ほぐしの運動」であり、 小学校学習指導要領の体育目標に掲げられた「心 と体を一体としてとらえ」の趣旨を最も象徴的に 受けた内容でもある。 高橋は、「なぜ『体ほぐし』が導入されるのか、 それは、今日の児童生徒に生じている諸問題に深 く関係している。児童生徒の日常生活において、 運動遊びなどによる基本的な身体活動の体験が減 少し、精神的なストレスが増大している。活発に 運動する者とそうでない者との二極化が進み、体 力や運動能力が低下している。さらに、児童生徒 の生育環境の変化に関わって、顕在的・潜在的に 子どもたちの体や心に深刻な影響が現れている。 『体ほぐし』は、こうした諸問題に対処する一つの 方略であった。」(高橋,1998,p.77) と述べている。 小学校学習指導要領解説体育編には、「体ほぐ しの運動は、手軽な運動や律動的な運動を行い、 体を動かす楽しさや心地よさを味わうことによっ て、自分の体の状態に気付き、体の調子を整えた り、仲間と豊かに交流したりすることができる ことをねらいとした運動である。」(文部科学省, 2008,p.40)と規定されている。このように「体 ほぐしの運動」では「体の気付き」「体の調整」「仲 間との交流」の 3つのねらいが挙げられている が、児童が楽しく学校生活を送るためには、学級 の仲間との良い人間関係の構築が最も重要である ため、本研究では「仲間との交流」に焦点をあて ることとした。 小松崎ら(2001)は、小学校 6年生の男女 364 名を対象として、ボール運動 (4授業)、陸上運動 (4授業)、器械運動 (1授業)、体ほぐしの運動 (3 授業) の授業を通して「仲間との交流」の評価法 について研究し、「集団的達成」、「集団的思考」、 「集団的相互作用」、「集団的人間関係」、「集団的 活動への意欲」の 5因子 10項目からなる簡便な 形成的評価票を作成している。また、中村・岩田 (2001)は、「集団的達成」、「集団的思考」、「肯定 的関係」、「協力的態度」、「集団学習意欲」の 5つ の評価次元 15項目で作成された「仲間づくり」 (集団的関わり合い)の評価票を作成し、小学校 6年生男女 32名を対象に「体ほぐしの運動」の 授業における「チャレンジ運動」(爆弾運び,崖っ ぷち危機一髪)の効果を実証している。5時間単 元の授業実践の結果、学級の総合的な平均得点が スポーツ教育学研究 第 38巻 第 1号 平成 30年 5月 ─ 72 ─ I.緒言 平成 20年 3月に小学校学習指導要領の改訂が 行われ、平成 23年度から全面的に実施されてい る。体育科の改善の基本方針は、「基礎的な身体 能力を身に付け、実生活において運動を豊かに実 践していくための資質や能力の基礎を培う」(文 部科学省,2008,p.3)とされ、各学年の系統性 が図られ、指導する内容もより明確化・体系化さ れた。また、子どもの長期的な体力低下の傾向か ら、体力の向上を図る内容が低学年から示された。 具体的には、高学年のみの位置づけであった「体 つくり運動」が、低・中学年まで下り、低・中学 年の「体つくり運動」領域は、「体ほぐしの運動」 と「多様な動きをつくる運動(遊び)」の二つで 構成されることとなった。これは、子どもの体力 の低下傾向は深刻な課題であるが、低・中学年の 段階では体力を高めることを学習の直接の目的に することは難しく、この時期に様々な身体の基本 的な動きや各種の運動の基礎となる動きを培って おくことが重要であるからである。 村田は、「この改訂の背景には、年々深刻化す る子どもの体力低下とともに、近年の子どもの心 と体をめぐる多くの問題が今なお進行している状 況がある。特に、携帯やメールの急速な普及は、 身体的な遊びをますます減少させただけでなく、 生身の身体によるコミュニケーションの機会を奪 い、多くの歪みを生んでいる。それは『心は敏感 でピリピリ、でも身体は鈍感』という現代っ子の 心と体のアンバランスであり、身体感覚の欠如で ある。つまり問題なのは、低下した体力の数値で はなく、子ども自身が自らの体の有様に無頓着、 無自覚であるということではないだろうか。こう した『他者とうまくかかわれない子ども』『生き た体の実感に乏しい子ども』『どこかぎこちなく、 ぎくしゃくした動きの子ども』の心と体をどう解 きほぐし、本来あるべき『体の中のセンサー(身 体感覚)』を方針として、コミュニケーション能 力や論理的思考力を育み磨いていくか。子ども の心と体の自然と内なるパワーを取り戻す必要 性は、ますます増加しているのである。」(村田, 2009,p.24)と述べている。 こうした子どもの心と体の現実に対して、学校 体育に導入されたのが「体ほぐしの運動」であり、 小学校学習指導要領の体育目標に掲げられた「心 と体を一体としてとらえ」の趣旨を最も象徴的に 受けた内容でもある。 高橋は、「なぜ『体ほぐし』が導入されるのか、 それは、今日の児童生徒に生じている諸問題に深 く関係している。児童生徒の日常生活において、 運動遊びなどによる基本的な身体活動の体験が減 少し、精神的なストレスが増大している。活発に 運動する者とそうでない者との二極化が進み、体 力や運動能力が低下している。さらに、児童生徒 の生育環境の変化に関わって、顕在的・潜在的に 子どもたちの体や心に深刻な影響が現れている。 『体ほぐし』は、こうした諸問題に対処する一つの 方略であった。」(高橋,1998,p.77) と述べている。 小学校学習指導要領解説体育編には、「体ほぐ しの運動は、手軽な運動や律動的な運動を行い、 体を動かす楽しさや心地よさを味わうことによっ て、自分の体の状態に気付き、体の調子を整えた り、仲間と豊かに交流したりすることができる ことをねらいとした運動である。」(文部科学省, 2008,p.40)と規定されている。このように「体 ほぐしの運動」では「体の気付き」「体の調整」「仲 間との交流」の 3つのねらいが挙げられている が、児童が楽しく学校生活を送るためには、学級 の仲間との良い人間関係の構築が最も重要である ため、本研究では「仲間との交流」に焦点をあて ることとした。 小松崎ら(2001)は、小学校 6年生の男女 364 名を対象として、ボール運動 (4授業)、陸上運動 (4授業)、器械運動 (1授業)、体ほぐしの運動 (3 授業) の授業を通して「仲間との交流」の評価法 について研究し、「集団的達成」、「集団的思考」、 「集団的相互作用」、「集団的人間関係」、「集団的 活動への意欲」の 5因子 10項目からなる簡便な 形成的評価票を作成している。また、中村・岩田 (2001)は、「集団的達成」、「集団的思考」、「肯定 的関係」、「協力的態度」、「集団学習意欲」の 5つ の評価次元 15項目で作成された「仲間づくり」 (集団的関わり合い)の評価票を作成し、小学校 6年生男女 32名を対象に「体ほぐしの運動」の 授業における「チャレンジ運動」(爆弾運び,崖っ ぷち危機一髪)の効果を実証している。5時間単 元の授業実践の結果、学級の総合的な平均得点が ─ 73 ─ 佐伯:小学校中学年体育における「体ほぐしの運動」の授業研究 漸進的に向上し、特に、第 3時以降の「チャレン ジ運動」において、「肯定的関係」と「集団的達 成」の次元得点が揃って大きく向上したことを明 示し、これらがとりわけ密接不可分に結びついて いる可能性があると述べている。しかし、1学級 32名の少ない実践のため、一般化という点で限 界がある。 本研究は、小学校学習指導要領の改訂によって、 「体ほぐしの運動」を低・中学年でも取扱うこと になった現況を受け、前述した先行研究の結果に 準拠しながら、小学校中学年を対象にして、仲間 づくりにおける「チャレンジ運動」の効果につい て再検討するものである。","PeriodicalId":119114,"journal":{"name":"Japanese Journal of Sport Education Studies","volume":"39 11","pages":"0"},"PeriodicalIF":0.0000,"publicationDate":"2018-05-31","publicationTypes":"Journal Article","fieldsOfStudy":null,"isOpenAccess":false,"openAccessPdf":"","citationCount":"0","resultStr":"{\"title\":\"A Study on \\\"Exercises for Releasing Body and Mind\\\" Lessons in Third and Fourth Grade of Elementary School Physical Education\",\"authors\":\"Michiyo Saeki, M. 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They got exercise of “the edge of a precipice (the rock)” and “giant ball carrying without using hands” in a group consisting of 6, 7, or 8 children in 4th and 5th class. The results were summarized as follows : 1) The total averages of team building in 5 classes were improved little by little. 2) There were significant differences under 5 % level (1st class < 5th class) in 3 classes. 3) There were increase tendency (1st class < 5th class) in 2 classes. 4) The number of words that were “voice”, “mind”, “cooperation”, “happy” and “can do” in descriptions of children’s impressions in 5th class increased to that in 3rd class. 5) Physical challenges produced good effects on team building. ス ポ ー ツ 教 育 学 研 究 <実践報告> 2018. Vol.38, No.1, pp. 71-82 スポーツ教育学研究 第 38巻 第 1号 平成 30年 5月 ─ 72 ─ I.緒言 平成 20年 3月に小学校学習指導要領の改訂が 行われ、平成 23年度から全面的に実施されてい る。体育科の改善の基本方針は、「基礎的な身体 能力を身に付け、実生活において運動を豊かに実 践していくための資質や能力の基礎を培う」(文 部科学省,2008,p.3)とされ、各学年の系統性 が図られ、指導する内容もより明確化・体系化さ れた。また、子どもの長期的な体力低下の傾向か ら、体力の向上を図る内容が低学年から示された。 具体的には、高学年のみの位置づけであった「体 つくり運動」が、低・中学年まで下り、低・中学 年の「体つくり運動」領域は、「体ほぐしの運動」 と「多様な動きをつくる運動(遊び)」の二つで 構成されることとなった。これは、子どもの体力 の低下傾向は深刻な課題であるが、低・中学年の 段階では体力を高めることを学習の直接の目的に することは難しく、この時期に様々な身体の基本 的な動きや各種の運動の基礎となる動きを培って おくことが重要であるからである。 村田は、「この改訂の背景には、年々深刻化す る子どもの体力低下とともに、近年の子どもの心 と体をめぐる多くの問題が今なお進行している状 況がある。特に、携帯やメールの急速な普及は、 身体的な遊びをますます減少させただけでなく、 生身の身体によるコミュニケーションの機会を奪 い、多くの歪みを生んでいる。それは『心は敏感 でピリピリ、でも身体は鈍感』という現代っ子の 心と体のアンバランスであり、身体感覚の欠如で ある。つまり問題なのは、低下した体力の数値で はなく、子ども自身が自らの体の有様に無頓着、 無自覚であるということではないだろうか。こう した『他者とうまくかかわれない子ども』『生き た体の実感に乏しい子ども』『どこかぎこちなく、 ぎくしゃくした動きの子ども』の心と体をどう解 きほぐし、本来あるべき『体の中のセンサー(身 体感覚)』を方針として、コミュニケーション能 力や論理的思考力を育み磨いていくか。子ども の心と体の自然と内なるパワーを取り戻す必要 性は、ますます増加しているのである。」(村田, 2009,p.24)と述べている。 こうした子どもの心と体の現実に対して、学校 体育に導入されたのが「体ほぐしの運動」であり、 小学校学習指導要領の体育目標に掲げられた「心 と体を一体としてとらえ」の趣旨を最も象徴的に 受けた内容でもある。 高橋は、「なぜ『体ほぐし』が導入されるのか、 それは、今日の児童生徒に生じている諸問題に深 く関係している。児童生徒の日常生活において、 運動遊びなどによる基本的な身体活動の体験が減 少し、精神的なストレスが増大している。活発に 運動する者とそうでない者との二極化が進み、体 力や運動能力が低下している。さらに、児童生徒 の生育環境の変化に関わって、顕在的・潜在的に 子どもたちの体や心に深刻な影響が現れている。 『体ほぐし』は、こうした諸問題に対処する一つの 方略であった。」(高橋,1998,p.77) と述べている。 小学校学習指導要領解説体育編には、「体ほぐ しの運動は、手軽な運動や律動的な運動を行い、 体を動かす楽しさや心地よさを味わうことによっ て、自分の体の状態に気付き、体の調子を整えた り、仲間と豊かに交流したりすることができる ことをねらいとした運動である。」(文部科学省, 2008,p.40)と規定されている。このように「体 ほぐしの運動」では「体の気付き」「体の調整」「仲 間との交流」の 3つのねらいが挙げられている が、児童が楽しく学校生活を送るためには、学級 の仲間との良い人間関係の構築が最も重要である ため、本研究では「仲間との交流」に焦点をあて ることとした。 小松崎ら(2001)は、小学校 6年生の男女 364 名を対象として、ボール運動 (4授業)、陸上運動 (4授業)、器械運動 (1授業)、体ほぐしの運動 (3 授業) の授業を通して「仲間との交流」の評価法 について研究し、「集団的達成」、「集団的思考」、 「集団的相互作用」、「集団的人間関係」、「集団的 活動への意欲」の 5因子 10項目からなる簡便な 形成的評価票を作成している。また、中村・岩田 (2001)は、「集団的達成」、「集団的思考」、「肯定 的関係」、「協力的態度」、「集団学習意欲」の 5つ の評価次元 15項目で作成された「仲間づくり」 (集団的関わり合い)の評価票を作成し、小学校 6年生男女 32名を対象に「体ほぐしの運動」の 授業における「チャレンジ運動」(爆弾運び,崖っ ぷち危機一髪)の効果を実証している。5時間単 元の授業実践の結果、学級の総合的な平均得点が スポーツ教育学研究 第 38巻 第 1号 平成 30年 5月 ─ 72 ─ I.緒言 平成 20年 3月に小学校学習指導要領の改訂が 行われ、平成 23年度から全面的に実施されてい る。体育科の改善の基本方針は、「基礎的な身体 能力を身に付け、実生活において運動を豊かに実 践していくための資質や能力の基礎を培う」(文 部科学省,2008,p.3)とされ、各学年の系統性 が図られ、指導する内容もより明確化・体系化さ れた。また、子どもの長期的な体力低下の傾向か ら、体力の向上を図る内容が低学年から示された。 具体的には、高学年のみの位置づけであった「体 つくり運動」が、低・中学年まで下り、低・中学 年の「体つくり運動」領域は、「体ほぐしの運動」 と「多様な動きをつくる運動(遊び)」の二つで 構成されることとなった。これは、子どもの体力 の低下傾向は深刻な課題であるが、低・中学年の 段階では体力を高めることを学習の直接の目的に することは難しく、この時期に様々な身体の基本 的な動きや各種の運動の基礎となる動きを培って おくことが重要であるからである。 村田は、「この改訂の背景には、年々深刻化す る子どもの体力低下とともに、近年の子どもの心 と体をめぐる多くの問題が今なお進行している状 況がある。特に、携帯やメールの急速な普及は、 身体的な遊びをますます減少させただけでなく、 生身の身体によるコミュニケーションの機会を奪 い、多くの歪みを生んでいる。それは『心は敏感 でピリピリ、でも身体は鈍感』という現代っ子の 心と体のアンバランスであり、身体感覚の欠如で ある。つまり問題なのは、低下した体力の数値で はなく、子ども自身が自らの体の有様に無頓着、 無自覚であるということではないだろうか。こう した『他者とうまくかかわれない子ども』『生き た体の実感に乏しい子ども』『どこかぎこちなく、 ぎくしゃくした動きの子ども』の心と体をどう解 きほぐし、本来あるべき『体の中のセンサー(身 体感覚)』を方針として、コミュニケーション能 力や論理的思考力を育み磨いていくか。子ども の心と体の自然と内なるパワーを取り戻す必要 性は、ますます増加しているのである。」(村田, 2009,p.24)と述べている。 こうした子どもの心と体の現実に対して、学校 体育に導入されたのが「体ほぐしの運動」であり、 小学校学習指導要領の体育目標に掲げられた「心 と体を一体としてとらえ」の趣旨を最も象徴的に 受けた内容でもある。 高橋は、「なぜ『体ほぐし』が導入されるのか、 それは、今日の児童生徒に生じている諸問題に深 く関係している。児童生徒の日常生活において、 運動遊びなどによる基本的な身体活動の体験が減 少し、精神的なストレスが増大している。活発に 運動する者とそうでない者との二極化が進み、体 力や運動能力が低下している。さらに、児童生徒 の生育環境の変化に関わって、顕在的・潜在的に 子どもたちの体や心に深刻な影響が現れている。 『体ほぐし』は、こうした諸問題に対処する一つの 方略であった。」(高橋,1998,p.77) と述べている。 小学校学習指導要領解説体育編には、「体ほぐ しの運動は、手軽な運動や律動的な運動を行い、 体を動かす楽しさや心地よさを味わうことによっ て、自分の体の状態に気付き、体の調子を整えた り、仲間と豊かに交流したりすることができる ことをねらいとした運動である。」(文部科学省, 2008,p.40)と規定されている。このように「体 ほぐしの運動」では「体の気付き」「体の調整」「仲 間との交流」の 3つのねらいが挙げられている が、児童が楽しく学校生活を送るためには、学級 の仲間との良い人間関係の構築が最も重要である ため、本研究では「仲間との交流」に焦点をあて ることとした。 小松崎ら(2001)は、小学校 6年生の男女 364 名を対象として、ボール運動 (4授業)、陸上運動 (4授業)、器械運動 (1授業)、体ほぐしの運動 (3 授業) の授業を通して「仲間との交流」の評価法 について研究し、「集団的達成」、「集団的思考」、 「集団的相互作用」、「集団的人間関係」、「集団的 活動への意欲」の 5因子 10項目からなる簡便な 形成的評価票を作成している。また、中村・岩田 (2001)は、「集団的達成」、「集団的思考」、「肯定 的関係」、「協力的態度」、「集団学習意欲」の 5つ の評価次元 15項目で作成された「仲間づくり」 (集団的関わり合い)の評価票を作成し、小学校 6年生男女 32名を対象に「体ほぐしの運動」の 授業における「チャレンジ運動」(爆弾運び,崖っ ぷち危機一髪)の効果を実証している。5時間単 元の授業実践の結果、学級の総合的な平均得点が ─ 73 ─ 佐伯:小学校中学年体育における「体ほぐしの運動」の授業研究 漸進的に向上し、特に、第 3時以降の「チャレン ジ運動」において、「肯定的関係」と「集団的達 成」の次元得点が揃って大きく向上したことを明 示し、これらがとりわけ密接不可分に結びついて いる可能性があると述べている。しかし、1学級 32名の少ない実践のため、一般化という点で限 界がある。 本研究は、小学校学習指導要領の改訂によって、 「体ほぐしの運動」を低・中学年でも取扱うこと になった現況を受け、前述した先行研究の結果に 準拠しながら、小学校中学年を対象にして、仲間 づくりにおける「チャレンジ運動」の効果につい て再検討するものである。\",\"PeriodicalId\":119114,\"journal\":{\"name\":\"Japanese Journal of Sport Education Studies\",\"volume\":\"39 11\",\"pages\":\"0\"},\"PeriodicalIF\":0.0000,\"publicationDate\":\"2018-05-31\",\"publicationTypes\":\"Journal Article\",\"fieldsOfStudy\":null,\"isOpenAccess\":false,\"openAccessPdf\":\"\",\"citationCount\":\"0\",\"resultStr\":null,\"platform\":\"Semanticscholar\",\"paperid\":null,\"PeriodicalName\":\"Japanese Journal of Sport Education 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摘要

摘要本研究旨在验证小学三、四年级体育挑战对团队建设的影响。参与者是来自两所小学的5个班级的126名学生。分析数据采用小松崎(Komatsuzaki)等人于2001年开发的以学校儿童体育课堂互动与合作行为为主题的团队建设问卷。利用KH Coder进行文本挖掘,对各班级儿童印象描述进行分析。该单元的“身心释放练习”课程由5次45分钟的体能挑战课程组成。接种时间分别为2013年10月至11月和2014年6月。他们在4、5年级的6、7、8名学生中进行了“悬崖边缘(岩石)”和“不用手拿大球”的练习。结果表明:1)5个班的团队建设总平均值逐渐提高。2) 3个类别在5%水平下(第1类<第5类)差异显著。3) 2个班均有增加趋势(1班< 5班)。4)“声音”、“心灵”、“合作”、“快乐”、“能做”四个词在描述幼儿印象时出现的次数在5班比3班有所增加。5)体能挑战对团队建设有良好的效果。2018。体育科の改善の基本方針は,”基礎的な身体能力を身に付け,実生活において運動を豊かに実践していくための資質や能力の基礎を培う”(文部科学省,2008年,p.3)とされ,各学年の系統性が図られ,指導する内容もより明確化・体系化された。“”“”“”“”“”“”“”“”“”“”“”“”“”“”具体的には,高学年のみの位置づけであった”体つくり運動”が,低・中学年まで下り,低・中学年の”体つくり運動”領域は,“体ほぐしの運動”と”多様な動きをつくる運動(遊び)“の二つで構成されることとなった。これは,子どもの体力の低下傾向は深刻な課題であるが,低・中学年の段階では体力を高めることを学習の直接の目的にすることは難しく,この時期に様々な身体の基本的な動きや各種の運動の基礎となる動きを培っておくことが重要であるからである。村田は”この改訂の背景には,年々深刻化する子どもの体力低下とともに,近年の子どもの心と体をめぐる多くの問題が今なお進行している状況がある。特に,携帯やメールの急速な普及は,身体的な遊びをますます減少させただけでなく,生身の身体によるコミュニケーションの機会を奪い,多くの歪みを生んでいる。それは“心は敏感でピリピリ,でも身体は鈍感”という現代っ子の心と体のアンバランスであり,身体感覚の欠如である。つまり問題なのは,低下した体力の数値ではなく,子ども自身が自らの体の有様に無頓着,無自覚であるということではないだろうか。こうした“他者とうまくかかわれない子ども”“生きた体の実感に乏しい子ども”“どこかぎこちなく,ぎくしゃくした動きの子ども”の心と体をどう解きほぐし,本来あるべき”体の中のセンサー(身体感覚)“を方針として,コミュニケーション能力や論理的思考力を育み磨いていくか。子どもの心と体の自然と内なるパワーを取り戻す必要性は,ますます増加しているのである。(中国,2009,p.24)。高橋は”なぜ”体ほぐし”が導入されるのか,それは,今日の児童生徒に生じている諸問題に深く関係している。児童生徒の日常生活において,運動遊びなどによる基本的な身体活動の体験が減少し,精神的なストレスが増大している。活発に運動する者とそうでない者との二極化が進み,体力や運動能力が低下している。さらに,児童生徒の生育環境の変化に関わって,顕在的・潜在的に子どもたちの体や心に深刻な影響が現れている。“体ほぐし“はこうした諸問題に対処する一つの方略であった。”(高橋,1998年,p.77)と述べている。(中国科学院学报,2008,p.40)このように”体ほぐしの運動”では”体の気付き”“体の調整”“仲間との交流”の3つのねらいが挙げられているが,児童が楽しく学校生活を送るためには,学級の仲間との良い人間関係の構築が最も重要であるため,本研究では”仲間との交流”に焦点をあてることとした。小松崎ら(2001)は,小学校6年生の男女364名を対象として,ボール運動(4授業),陸上運動(4授業),器械運動(1授業),体ほぐしの運動(3授業)の授業を通して”仲間との交流”の評価法について研究し,“集団的達成”,“集団的思考”,“集団的相互作用”,“集団的人間関係”,“集団的活動への意欲“の5因子10項目からなる簡便な形成的評価票を作成している。また,中村・岩田(2001)は,“集団的達成”,“集団的思考”、“肯定的関係”、“協力的態度”,“集団学習意欲“の5つの評価次元15項目で作成された”仲間づくり”(集団的関わり合い)の評価票を作成し,小学校6年生男女32名を対象に”体ほぐしの運動”の授業における”チャレンジ運動”(爆弾運び,崖っぷち危機一髪)の効果を実証している。体育科の改善の基本方針は,”基礎的な身体能力を身に付け,実生活において運動を豊かに実践していくための資質や能力の基礎を培う”(文部科学省,2008年,p.3)とされ,各学年の系統性が図られ,指導する内容もより明確化・体系化された。“”“”“”“”“”“”“”“”“”“”“”“”“”“”具体的には,高学年のみの位置づけであった”体つくり運動”が,低・中学年まで下り,低・中学年の”体つくり運動”領域は,“体ほぐしの運動”と”多様な動きをつくる運動(遊び)“の二つで構成されることとなった。これは,子どもの体力の低下傾向は深刻な課題であるが,低・中学年の段階では体力を高めることを学習の直接の目的にすることは難しく,この時期に様々な身体の基本的な動きや各種の運動の基礎となる動きを培っておくことが重要であるからである。村田は”この改訂の背景には,年々深刻化する子どもの体力低下とともに,近年の子どもの心と体をめぐる多くの問題が今なお進行している状況がある。特に,携帯やメールの急速な普及は,身体的な遊びをますます減少させただけでなく,生身の身体によるコミュニケーションの機会を奪い,多くの歪みを生んでいる。それは“心は敏感でピリピリ,でも身体は鈍感”という現代っ子の心と体のアンバランスであり,身体感覚の欠如である。つまり問題なのは,低下した体力の数値ではなく,子ども自身が自らの体の有様に無頓着,無自覚であるということではないだろうか。こうした“他者とうまくかかわれない子ども”“生きた体の実感に乏しい子ども”“どこかぎこちなく,ぎくしゃくした動きの子ども”の心と体をどう解きほぐし,本来あるべき”体の中のセンサー(身体感覚)“を方針として,コミュニケーション能力や論理的思考力を育み磨いていくか。子どもの心と体の自然と内なるパワーを取り戻す必要性は,ますます増加しているのである。(中国,2009,p.24)。高橋は”なぜ”体ほぐし”が導入されるのか,それは,今日の児童生徒に生じている諸問題に深く関係している。児童生徒の日常生活において,運動遊びなどによる基本的な身体活動の体験が減少し,精神的なストレスが増大している。活発に運動する者とそうでない者との二極化が進み,体力や運動能力が低下している。さらに,児童生徒の生育環境の変化に関わって,顕在的・潜在的に子どもたちの体や心に深刻な影響が現れている。“体ほぐし“はこうした諸問題に対処する一つの方略であった。”(高橋,1998年,p.77)と述べている。[中文],2008,p。 被规定为40)。像这样,“放松身体的运动”列举了“注意身体”、“调整身体”、“与同伴的交流”3个目的,但是,为了让孩子们快乐地度过学校生活,班级与同伴建立良好的人际关系是最重要的,因此本研究将重点放在“与同伴的交流”上。小松崎等人(2001)以小学6年级364名男女学生为对象,进行了球运动(4节课)、田径运动(4节课)、器械运动(1节课)、放松身体运动(3节课)。通过对“与同伴交流”的评价方法的研究,由“集体达成”、“集体思考”、“集体相互作用”、“集体人际关系”、“集体活动意愿”5个因素10个项目构成的简便方法。正在制作形成性评价表。另外,中村岩田(2001)以“集体达成”、“集体思考”、“肯定的关系”、“合作的态度”、“集体学习意愿”5个评价维度15个项目制作了“建立伙伴”。制作(集体关系)的评分表,以小学6年级的32名男女为对象,在“放松身体的运动”课程中,对“挑战运动”(搬运炸弹,千锤百音)的效果进行了验证。5小时一元教学实践结果,班级综合平均得分为——73——佐伯:小学中年级体育“放松运动”的教学研究逐步提高,特别是第3点以后的“挑战”在“自我运动”中,“肯定关系”和“集体达成”的维度得分都有了很大的提高,这可能是两者密不可分的联系。但是由于每个班级只有32名学生,所以在普及化方面存在一定的局限性。对制作过程中的“挑战运动”的效果进行再探讨。
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A Study on "Exercises for Releasing Body and Mind" Lessons in Third and Fourth Grade of Elementary School Physical Education
The purpose of this study was to verify the effects of team building through physical challenges in third and fourth grade of elementary school physical education. The participants were 5 classes of 126 schoolchildren in 2 elementary schools. The data for analysis were gathered by team building questionnaire focusing on school children’s interactive and cooperative behaviors in physical education class developed by Komatsuzaki and the others in 2001. The descriptions of children’s impressions in every class were analyzed by text mining with KH Coder. The “exercises for releasing body and mind” lessons of the unit consists of 5 times 45 minutes lessons with physical challenges. It was given from October to November in 2013 and in June of 2014. They got exercise of “the edge of a precipice (the rock)” and “giant ball carrying without using hands” in a group consisting of 6, 7, or 8 children in 4th and 5th class. The results were summarized as follows : 1) The total averages of team building in 5 classes were improved little by little. 2) There were significant differences under 5 % level (1st class < 5th class) in 3 classes. 3) There were increase tendency (1st class < 5th class) in 2 classes. 4) The number of words that were “voice”, “mind”, “cooperation”, “happy” and “can do” in descriptions of children’s impressions in 5th class increased to that in 3rd class. 5) Physical challenges produced good effects on team building. ス ポ ー ツ 教 育 学 研 究 <実践報告> 2018. Vol.38, No.1, pp. 71-82 スポーツ教育学研究 第 38巻 第 1号 平成 30年 5月 ─ 72 ─ I.緒言 平成 20年 3月に小学校学習指導要領の改訂が 行われ、平成 23年度から全面的に実施されてい る。体育科の改善の基本方針は、「基礎的な身体 能力を身に付け、実生活において運動を豊かに実 践していくための資質や能力の基礎を培う」(文 部科学省,2008,p.3)とされ、各学年の系統性 が図られ、指導する内容もより明確化・体系化さ れた。また、子どもの長期的な体力低下の傾向か ら、体力の向上を図る内容が低学年から示された。 具体的には、高学年のみの位置づけであった「体 つくり運動」が、低・中学年まで下り、低・中学 年の「体つくり運動」領域は、「体ほぐしの運動」 と「多様な動きをつくる運動(遊び)」の二つで 構成されることとなった。これは、子どもの体力 の低下傾向は深刻な課題であるが、低・中学年の 段階では体力を高めることを学習の直接の目的に することは難しく、この時期に様々な身体の基本 的な動きや各種の運動の基礎となる動きを培って おくことが重要であるからである。 村田は、「この改訂の背景には、年々深刻化す る子どもの体力低下とともに、近年の子どもの心 と体をめぐる多くの問題が今なお進行している状 況がある。特に、携帯やメールの急速な普及は、 身体的な遊びをますます減少させただけでなく、 生身の身体によるコミュニケーションの機会を奪 い、多くの歪みを生んでいる。それは『心は敏感 でピリピリ、でも身体は鈍感』という現代っ子の 心と体のアンバランスであり、身体感覚の欠如で ある。つまり問題なのは、低下した体力の数値で はなく、子ども自身が自らの体の有様に無頓着、 無自覚であるということではないだろうか。こう した『他者とうまくかかわれない子ども』『生き た体の実感に乏しい子ども』『どこかぎこちなく、 ぎくしゃくした動きの子ども』の心と体をどう解 きほぐし、本来あるべき『体の中のセンサー(身 体感覚)』を方針として、コミュニケーション能 力や論理的思考力を育み磨いていくか。子ども の心と体の自然と内なるパワーを取り戻す必要 性は、ますます増加しているのである。」(村田, 2009,p.24)と述べている。 こうした子どもの心と体の現実に対して、学校 体育に導入されたのが「体ほぐしの運動」であり、 小学校学習指導要領の体育目標に掲げられた「心 と体を一体としてとらえ」の趣旨を最も象徴的に 受けた内容でもある。 高橋は、「なぜ『体ほぐし』が導入されるのか、 それは、今日の児童生徒に生じている諸問題に深 く関係している。児童生徒の日常生活において、 運動遊びなどによる基本的な身体活動の体験が減 少し、精神的なストレスが増大している。活発に 運動する者とそうでない者との二極化が進み、体 力や運動能力が低下している。さらに、児童生徒 の生育環境の変化に関わって、顕在的・潜在的に 子どもたちの体や心に深刻な影響が現れている。 『体ほぐし』は、こうした諸問題に対処する一つの 方略であった。」(高橋,1998,p.77) と述べている。 小学校学習指導要領解説体育編には、「体ほぐ しの運動は、手軽な運動や律動的な運動を行い、 体を動かす楽しさや心地よさを味わうことによっ て、自分の体の状態に気付き、体の調子を整えた り、仲間と豊かに交流したりすることができる ことをねらいとした運動である。」(文部科学省, 2008,p.40)と規定されている。このように「体 ほぐしの運動」では「体の気付き」「体の調整」「仲 間との交流」の 3つのねらいが挙げられている が、児童が楽しく学校生活を送るためには、学級 の仲間との良い人間関係の構築が最も重要である ため、本研究では「仲間との交流」に焦点をあて ることとした。 小松崎ら(2001)は、小学校 6年生の男女 364 名を対象として、ボール運動 (4授業)、陸上運動 (4授業)、器械運動 (1授業)、体ほぐしの運動 (3 授業) の授業を通して「仲間との交流」の評価法 について研究し、「集団的達成」、「集団的思考」、 「集団的相互作用」、「集団的人間関係」、「集団的 活動への意欲」の 5因子 10項目からなる簡便な 形成的評価票を作成している。また、中村・岩田 (2001)は、「集団的達成」、「集団的思考」、「肯定 的関係」、「協力的態度」、「集団学習意欲」の 5つ の評価次元 15項目で作成された「仲間づくり」 (集団的関わり合い)の評価票を作成し、小学校 6年生男女 32名を対象に「体ほぐしの運動」の 授業における「チャレンジ運動」(爆弾運び,崖っ ぷち危機一髪)の効果を実証している。5時間単 元の授業実践の結果、学級の総合的な平均得点が スポーツ教育学研究 第 38巻 第 1号 平成 30年 5月 ─ 72 ─ I.緒言 平成 20年 3月に小学校学習指導要領の改訂が 行われ、平成 23年度から全面的に実施されてい る。体育科の改善の基本方針は、「基礎的な身体 能力を身に付け、実生活において運動を豊かに実 践していくための資質や能力の基礎を培う」(文 部科学省,2008,p.3)とされ、各学年の系統性 が図られ、指導する内容もより明確化・体系化さ れた。また、子どもの長期的な体力低下の傾向か ら、体力の向上を図る内容が低学年から示された。 具体的には、高学年のみの位置づけであった「体 つくり運動」が、低・中学年まで下り、低・中学 年の「体つくり運動」領域は、「体ほぐしの運動」 と「多様な動きをつくる運動(遊び)」の二つで 構成されることとなった。これは、子どもの体力 の低下傾向は深刻な課題であるが、低・中学年の 段階では体力を高めることを学習の直接の目的に することは難しく、この時期に様々な身体の基本 的な動きや各種の運動の基礎となる動きを培って おくことが重要であるからである。 村田は、「この改訂の背景には、年々深刻化す る子どもの体力低下とともに、近年の子どもの心 と体をめぐる多くの問題が今なお進行している状 況がある。特に、携帯やメールの急速な普及は、 身体的な遊びをますます減少させただけでなく、 生身の身体によるコミュニケーションの機会を奪 い、多くの歪みを生んでいる。それは『心は敏感 でピリピリ、でも身体は鈍感』という現代っ子の 心と体のアンバランスであり、身体感覚の欠如で ある。つまり問題なのは、低下した体力の数値で はなく、子ども自身が自らの体の有様に無頓着、 無自覚であるということではないだろうか。こう した『他者とうまくかかわれない子ども』『生き た体の実感に乏しい子ども』『どこかぎこちなく、 ぎくしゃくした動きの子ども』の心と体をどう解 きほぐし、本来あるべき『体の中のセンサー(身 体感覚)』を方針として、コミュニケーション能 力や論理的思考力を育み磨いていくか。子ども の心と体の自然と内なるパワーを取り戻す必要 性は、ますます増加しているのである。」(村田, 2009,p.24)と述べている。 こうした子どもの心と体の現実に対して、学校 体育に導入されたのが「体ほぐしの運動」であり、 小学校学習指導要領の体育目標に掲げられた「心 と体を一体としてとらえ」の趣旨を最も象徴的に 受けた内容でもある。 高橋は、「なぜ『体ほぐし』が導入されるのか、 それは、今日の児童生徒に生じている諸問題に深 く関係している。児童生徒の日常生活において、 運動遊びなどによる基本的な身体活動の体験が減 少し、精神的なストレスが増大している。活発に 運動する者とそうでない者との二極化が進み、体 力や運動能力が低下している。さらに、児童生徒 の生育環境の変化に関わって、顕在的・潜在的に 子どもたちの体や心に深刻な影響が現れている。 『体ほぐし』は、こうした諸問題に対処する一つの 方略であった。」(高橋,1998,p.77) と述べている。 小学校学習指導要領解説体育編には、「体ほぐ しの運動は、手軽な運動や律動的な運動を行い、 体を動かす楽しさや心地よさを味わうことによっ て、自分の体の状態に気付き、体の調子を整えた り、仲間と豊かに交流したりすることができる ことをねらいとした運動である。」(文部科学省, 2008,p.40)と規定されている。このように「体 ほぐしの運動」では「体の気付き」「体の調整」「仲 間との交流」の 3つのねらいが挙げられている が、児童が楽しく学校生活を送るためには、学級 の仲間との良い人間関係の構築が最も重要である ため、本研究では「仲間との交流」に焦点をあて ることとした。 小松崎ら(2001)は、小学校 6年生の男女 364 名を対象として、ボール運動 (4授業)、陸上運動 (4授業)、器械運動 (1授業)、体ほぐしの運動 (3 授業) の授業を通して「仲間との交流」の評価法 について研究し、「集団的達成」、「集団的思考」、 「集団的相互作用」、「集団的人間関係」、「集団的 活動への意欲」の 5因子 10項目からなる簡便な 形成的評価票を作成している。また、中村・岩田 (2001)は、「集団的達成」、「集団的思考」、「肯定 的関係」、「協力的態度」、「集団学習意欲」の 5つ の評価次元 15項目で作成された「仲間づくり」 (集団的関わり合い)の評価票を作成し、小学校 6年生男女 32名を対象に「体ほぐしの運動」の 授業における「チャレンジ運動」(爆弾運び,崖っ ぷち危機一髪)の効果を実証している。5時間単 元の授業実践の結果、学級の総合的な平均得点が ─ 73 ─ 佐伯:小学校中学年体育における「体ほぐしの運動」の授業研究 漸進的に向上し、特に、第 3時以降の「チャレン ジ運動」において、「肯定的関係」と「集団的達 成」の次元得点が揃って大きく向上したことを明 示し、これらがとりわけ密接不可分に結びついて いる可能性があると述べている。しかし、1学級 32名の少ない実践のため、一般化という点で限 界がある。 本研究は、小学校学習指導要領の改訂によって、 「体ほぐしの運動」を低・中学年でも取扱うこと になった現況を受け、前述した先行研究の結果に 準拠しながら、小学校中学年を対象にして、仲間 づくりにおける「チャレンジ運動」の効果につい て再検討するものである。
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