{"title":"NHCNickel(I)配合物催化交叉偶联的机理研究","authors":"Kouki Matsubara","doi":"10.4019/bjscc.75.66","DOIUrl":null,"url":null,"abstract":"ニッケルを用いた触媒的有機合成反応では,例えばハ ロゲン化アリールを用いた Kumada-Tamao-Corriu (KTC) カップリングや Suzuki-Miyaura (SM)カップリングなど のクロスカップリング反応で知られるように,0価のニ ッケル錯体にハロゲン化アリールの炭素-ハロゲン結合 が付加(酸化的付加)し,2価のハロゲノ(アリール) ニッケル錯体が生じる触媒サイクルが提案されている (Fig. 1)。 同族のパラジウムやその他に高い触媒活性を持つこと が知られるルテニウムやロジウム,イリジウムにおいて も,低原子価の金属錯体が有機分子の付加によって 2電 子酸化還元されるという反応経路が一般的であり,特別 な配位子設計などを施した特殊な環境におかれた金属で ない限り,酸化数がより高い,ましてや不対電子をもつ 金属中心が触媒として作用する反応経路は通常考慮され ない。ところが最近は,鉄やマンガン,コバルト,ニッ ケル等の第一遷移金属錯体を触媒に用いた様々な反応開 発が推進されており ,これらの遷移金属でしばしば観 察される常磁性の金属ラジカル活性種の働きについて注 目が集まっている 。その中でも特にニッケル 1価錯体 は,数は多くないものの比較的古くから知られている化 学種であり,特に生物無機化学の分野においては,ニッ ケル 1価 2核錯体を経由する酸素活性化プロセス等も提 案されている 。Fig. 2にはいくつかのニッケル 1価錯 体の例を示した。これらの錯体は,その電子的性質など に興味がもたれ,合成・単離されているが,我々が研究 を始めた 2004年頃には有機合成化学における触媒プロ セスに応用された例はほとんどなかった 。","PeriodicalId":72479,"journal":{"name":"Bulletin of Japan Society of Coordination Chemistry","volume":" ","pages":""},"PeriodicalIF":0.0000,"publicationDate":"2020-05-31","publicationTypes":"Journal Article","fieldsOfStudy":null,"isOpenAccess":false,"openAccessPdf":"","citationCount":"0","resultStr":"{\"title\":\"Mechanistic Studies on Catalytic Cross-Coupling Using Well-Defined NHCNickel(I) Complexes\",\"authors\":\"Kouki Matsubara\",\"doi\":\"10.4019/bjscc.75.66\",\"DOIUrl\":null,\"url\":null,\"abstract\":\"ニッケルを用いた触媒的有機合成反応では,例えばハ ロゲン化アリールを用いた Kumada-Tamao-Corriu (KTC) カップリングや Suzuki-Miyaura (SM)カップリングなど のクロスカップリング反応で知られるように,0価のニ ッケル錯体にハロゲン化アリールの炭素-ハロゲン結合 が付加(酸化的付加)し,2価のハロゲノ(アリール) ニッケル錯体が生じる触媒サイクルが提案されている (Fig. 1)。 同族のパラジウムやその他に高い触媒活性を持つこと が知られるルテニウムやロジウム,イリジウムにおいて も,低原子価の金属錯体が有機分子の付加によって 2電 子酸化還元されるという反応経路が一般的であり,特別 な配位子設計などを施した特殊な環境におかれた金属で ない限り,酸化数がより高い,ましてや不対電子をもつ 金属中心が触媒として作用する反応経路は通常考慮され ない。ところが最近は,鉄やマンガン,コバルト,ニッ ケル等の第一遷移金属錯体を触媒に用いた様々な反応開 発が推進されており ,これらの遷移金属でしばしば観 察される常磁性の金属ラジカル活性種の働きについて注 目が集まっている 。その中でも特にニッケル 1価錯体 は,数は多くないものの比較的古くから知られている化 学種であり,特に生物無機化学の分野においては,ニッ ケル 1価 2核錯体を経由する酸素活性化プロセス等も提 案されている 。Fig. 2にはいくつかのニッケル 1価錯 体の例を示した。これらの錯体は,その電子的性質など に興味がもたれ,合成・単離されているが,我々が研究 を始めた 2004年頃には有機合成化学における触媒プロ セスに応用された例はほとんどなかった 。\",\"PeriodicalId\":72479,\"journal\":{\"name\":\"Bulletin of Japan Society of Coordination Chemistry\",\"volume\":\" \",\"pages\":\"\"},\"PeriodicalIF\":0.0000,\"publicationDate\":\"2020-05-31\",\"publicationTypes\":\"Journal Article\",\"fieldsOfStudy\":null,\"isOpenAccess\":false,\"openAccessPdf\":\"\",\"citationCount\":\"0\",\"resultStr\":null,\"platform\":\"Semanticscholar\",\"paperid\":null,\"PeriodicalName\":\"Bulletin of Japan Society of Coordination Chemistry\",\"FirstCategoryId\":\"1085\",\"ListUrlMain\":\"https://doi.org/10.4019/bjscc.75.66\",\"RegionNum\":0,\"RegionCategory\":null,\"ArticlePicture\":[],\"TitleCN\":null,\"AbstractTextCN\":null,\"PMCID\":null,\"EPubDate\":\"\",\"PubModel\":\"\",\"JCR\":\"\",\"JCRName\":\"\",\"Score\":null,\"Total\":0}","platform":"Semanticscholar","paperid":null,"PeriodicalName":"Bulletin of Japan Society of Coordination Chemistry","FirstCategoryId":"1085","ListUrlMain":"https://doi.org/10.4019/bjscc.75.66","RegionNum":0,"RegionCategory":null,"ArticlePicture":[],"TitleCN":null,"AbstractTextCN":null,"PMCID":null,"EPubDate":"","PubModel":"","JCR":"","JCRName":"","Score":null,"Total":0}
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Mechanistic Studies on Catalytic Cross-Coupling Using Well-Defined NHCNickel(I) Complexes
ニッケルを用いた触媒的有機合成反応では,例えばハ ロゲン化アリールを用いた Kumada-Tamao-Corriu (KTC) カップリングや Suzuki-Miyaura (SM)カップリングなど のクロスカップリング反応で知られるように,0価のニ ッケル錯体にハロゲン化アリールの炭素-ハロゲン結合 が付加(酸化的付加)し,2価のハロゲノ(アリール) ニッケル錯体が生じる触媒サイクルが提案されている (Fig. 1)。 同族のパラジウムやその他に高い触媒活性を持つこと が知られるルテニウムやロジウム,イリジウムにおいて も,低原子価の金属錯体が有機分子の付加によって 2電 子酸化還元されるという反応経路が一般的であり,特別 な配位子設計などを施した特殊な環境におかれた金属で ない限り,酸化数がより高い,ましてや不対電子をもつ 金属中心が触媒として作用する反応経路は通常考慮され ない。ところが最近は,鉄やマンガン,コバルト,ニッ ケル等の第一遷移金属錯体を触媒に用いた様々な反応開 発が推進されており ,これらの遷移金属でしばしば観 察される常磁性の金属ラジカル活性種の働きについて注 目が集まっている 。その中でも特にニッケル 1価錯体 は,数は多くないものの比較的古くから知られている化 学種であり,特に生物無機化学の分野においては,ニッ ケル 1価 2核錯体を経由する酸素活性化プロセス等も提 案されている 。Fig. 2にはいくつかのニッケル 1価錯 体の例を示した。これらの錯体は,その電子的性質など に興味がもたれ,合成・単離されているが,我々が研究 を始めた 2004年頃には有機合成化学における触媒プロ セスに応用された例はほとんどなかった 。