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Calorimetry and Macromolecular Interaction Arising from Translational Motion of Solvent Molecules
蛋白質等の巨大分子と溶媒分子が混在する系における巨 大分子間相互作用が本解説のターゲットである。ただし, ここでいう相互作用は,例えば巨大分子間の直接の相互作 用ではなく,平均力ポテンシャルである。すなわち系の自 由エネルギーの巨大分子間距離依存性の事である。現実に 働く力はこの平均力ポテンシャルを距離で微分し,負号を つけたものである。1) 例として,細胞質を考える。その中では,蛋白質,脂質 分子,アミノ酸,ペプチド等が混み合って存在している。2) その中で,蛋白質と蛋白質の間の相互作用は,他の分子の 濃度と独立ではない。相互作用の濃度変化を理解する事は, 細胞の状態制御上重要である。3) もし,ゾルであるべき細胞 質が巨大分子間相互作用の変化によってゲルになれば,生 命の危機に係る。ありがたい機能を持っているはずの蛋白 質や薬物が一転して毒物となり得る。 こうした問題は実用上も重要である。例えばチーズ製造 時のゲルの形成(カード形成)がある。まず牛乳に添加さ れた凝乳酵素の働きで牛乳内の巨大粒子であるカゼインミ セルから親水性のκ-カゼインが外れる。その結果,疎水性 のパラカゼインミセルが分散した溶液となる。巨大分子間 相互作用の急変によりミセル同士が繋がり合って非酵素的 凝固反応が進みゲルが形成される。4,5) 実験的には水(溶媒)と蛋白質等の巨大分子に対して, 第3成分の添加実験が行われている。例えば,デキストラ ンなどの糖の分子を添加する事で,Human Apolipoprotein C-IIの会合が促進され,アミロイドを形成し易くなる。6) ま た,リゾチームの変性温度は,デキストランの添加で上昇 する。7) すなわち蛋白質間の引力相互作用や天然構造の安定 性は,デキストランの添加によって強化される事が知られ ている。後者では単量体間の引力相互作用が強められてい る。 従来,こうした実験の解釈において,溶媒分子等の様な 溶媒分子の並進運動由来の巨大分子間引力相互作用と熱測定