{"title":"磷脂双层相变热力学","authors":"H. Matsuki, S. Kaneshina","doi":"10.11311/JSCTA1974.33.74","DOIUrl":null,"url":null,"abstract":"生物の構成単位である細胞は細胞膜により外部と隔離さ れている。細胞膜の主構成成分はリン脂質であり,リン脂 質を水中に分散すると自発的に自己組織化し,ベシクルあ るいはリポソームと呼ばれる二分子膜構造の閉鎖型小胞体 を構築する。このため,リン脂質二分子膜構造体は生体膜 モデル系として幅広く利用されている。脂質二分子膜の最 も大きな特徴は,その周囲の環境変化(温度,圧力,塩濃 度,溶媒置換など)に鋭敏に応答し,その集合体構造を変 化させ相転移を起こすことである。脂質二分子膜相転移の 検出は様々な物理化学的手法で行われているが,中でも特 に有効なのは示差走査熱量(DSC)測定である。1,2) これま でに多数のリン脂質が形成する二分子膜の相転移がDSC測 定により調べられ,脂質二分子膜の温度感受性が明らかに されている。他方,温度と並んで重要な熱力学変数に圧力 がある。近年,麻酔作用の圧拮抗,深海生物の高圧力環境 適応,食品加工における高圧力殺菌などのような圧力変化 による膜物性変化への注目が高まってきている3,4)が,これ まで圧力を変数として脂質二分子膜の状態を解析した研究 は非常に少ない。 脂質二分子膜の圧力感受性を調べ,温度感受性と組み合 わせることにより,以下のことが可能となる。5,6) (1) DSC 測定から得られる相転移温度および相転移に伴う熱力学量 変化(相転移エンタルピーおよび相転移エントロピー)に 相転移圧力,相転移温度の圧力依存性および相転移に伴う リン脂質二分子膜相転移の熱力学","PeriodicalId":19096,"journal":{"name":"Netsu Sokutei","volume":"1 1","pages":"74-82"},"PeriodicalIF":0.0000,"publicationDate":"2006-03-31","publicationTypes":"Journal Article","fieldsOfStudy":null,"isOpenAccess":false,"openAccessPdf":"","citationCount":"4","resultStr":"{\"title\":\"Thermodynamics of Bilayer Phase Transitions of Phospholipids\",\"authors\":\"H. Matsuki, S. Kaneshina\",\"doi\":\"10.11311/JSCTA1974.33.74\",\"DOIUrl\":null,\"url\":null,\"abstract\":\"生物の構成単位である細胞は細胞膜により外部と隔離さ れている。細胞膜の主構成成分はリン脂質であり,リン脂 質を水中に分散すると自発的に自己組織化し,ベシクルあ るいはリポソームと呼ばれる二分子膜構造の閉鎖型小胞体 を構築する。このため,リン脂質二分子膜構造体は生体膜 モデル系として幅広く利用されている。脂質二分子膜の最 も大きな特徴は,その周囲の環境変化(温度,圧力,塩濃 度,溶媒置換など)に鋭敏に応答し,その集合体構造を変 化させ相転移を起こすことである。脂質二分子膜相転移の 検出は様々な物理化学的手法で行われているが,中でも特 に有効なのは示差走査熱量(DSC)測定である。1,2) これま でに多数のリン脂質が形成する二分子膜の相転移がDSC測 定により調べられ,脂質二分子膜の温度感受性が明らかに されている。他方,温度と並んで重要な熱力学変数に圧力 がある。近年,麻酔作用の圧拮抗,深海生物の高圧力環境 適応,食品加工における高圧力殺菌などのような圧力変化 による膜物性変化への注目が高まってきている3,4)が,これ まで圧力を変数として脂質二分子膜の状態を解析した研究 は非常に少ない。 脂質二分子膜の圧力感受性を調べ,温度感受性と組み合 わせることにより,以下のことが可能となる。5,6) (1) DSC 測定から得られる相転移温度および相転移に伴う熱力学量 変化(相転移エンタルピーおよび相転移エントロピー)に 相転移圧力,相転移温度の圧力依存性および相転移に伴う リン脂質二分子膜相転移の熱力学\",\"PeriodicalId\":19096,\"journal\":{\"name\":\"Netsu Sokutei\",\"volume\":\"1 1\",\"pages\":\"74-82\"},\"PeriodicalIF\":0.0000,\"publicationDate\":\"2006-03-31\",\"publicationTypes\":\"Journal Article\",\"fieldsOfStudy\":null,\"isOpenAccess\":false,\"openAccessPdf\":\"\",\"citationCount\":\"4\",\"resultStr\":null,\"platform\":\"Semanticscholar\",\"paperid\":null,\"PeriodicalName\":\"Netsu Sokutei\",\"FirstCategoryId\":\"1085\",\"ListUrlMain\":\"https://doi.org/10.11311/JSCTA1974.33.74\",\"RegionNum\":0,\"RegionCategory\":null,\"ArticlePicture\":[],\"TitleCN\":null,\"AbstractTextCN\":null,\"PMCID\":null,\"EPubDate\":\"\",\"PubModel\":\"\",\"JCR\":\"\",\"JCRName\":\"\",\"Score\":null,\"Total\":0}","platform":"Semanticscholar","paperid":null,"PeriodicalName":"Netsu Sokutei","FirstCategoryId":"1085","ListUrlMain":"https://doi.org/10.11311/JSCTA1974.33.74","RegionNum":0,"RegionCategory":null,"ArticlePicture":[],"TitleCN":null,"AbstractTextCN":null,"PMCID":null,"EPubDate":"","PubModel":"","JCR":"","JCRName":"","Score":null,"Total":0}
引用次数: 4
Thermodynamics of Bilayer Phase Transitions of Phospholipids
生物の構成単位である細胞は細胞膜により外部と隔離さ れている。細胞膜の主構成成分はリン脂質であり,リン脂 質を水中に分散すると自発的に自己組織化し,ベシクルあ るいはリポソームと呼ばれる二分子膜構造の閉鎖型小胞体 を構築する。このため,リン脂質二分子膜構造体は生体膜 モデル系として幅広く利用されている。脂質二分子膜の最 も大きな特徴は,その周囲の環境変化(温度,圧力,塩濃 度,溶媒置換など)に鋭敏に応答し,その集合体構造を変 化させ相転移を起こすことである。脂質二分子膜相転移の 検出は様々な物理化学的手法で行われているが,中でも特 に有効なのは示差走査熱量(DSC)測定である。1,2) これま でに多数のリン脂質が形成する二分子膜の相転移がDSC測 定により調べられ,脂質二分子膜の温度感受性が明らかに されている。他方,温度と並んで重要な熱力学変数に圧力 がある。近年,麻酔作用の圧拮抗,深海生物の高圧力環境 適応,食品加工における高圧力殺菌などのような圧力変化 による膜物性変化への注目が高まってきている3,4)が,これ まで圧力を変数として脂質二分子膜の状態を解析した研究 は非常に少ない。 脂質二分子膜の圧力感受性を調べ,温度感受性と組み合 わせることにより,以下のことが可能となる。5,6) (1) DSC 測定から得られる相転移温度および相転移に伴う熱力学量 変化(相転移エンタルピーおよび相転移エントロピー)に 相転移圧力,相転移温度の圧力依存性および相転移に伴う リン脂質二分子膜相転移の熱力学