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Abstract
アトピー性皮膚炎は,増悪と軽快を繰り返す瘙痒のある湿疹を主症状とする慢性的な皮膚疾患である。瘙痒に伴う精神的苦痛や睡眠障害,搔破行動やこれによる湿疹の更なる悪化や細菌性二次感染などはアトピー性皮膚炎患者の QOL を障害する主要因となっている。したがって,瘙痒に対してどのようなケアを行うかが重要となるが,そのためには各患者における瘙痒の程度やどのような状況下で瘙痒が出現しているかを正しく知る必要がある。しかしながら,Visual Analogue Scale(VAS)や Numerical Rating Scale(NRS)など現在一般的に行われている瘙痒評価法は,瘙痒の発生する状況分析にまでは踏み込んでいない。今回どのような状況下に瘙痒が出現するかアンケート調査を行ったところ,強い瘙痒が起床時,終業時,帰宅時,入浴前後や就寝時といった患者にほぼ共通した状況下(出現ポイント)に起こっていることが分かった。更に,このようなアトピー性皮膚炎における瘙痒の日内変動を科学的に評価する方法として,共通した瘙痒の出現ポイントに基づいた「かゆみ記入票」を作成し,各ポイントにおける瘙痒の強度をオンタイムでの自己評価によるスコア化を試みたところ,ある程度正確に実際の瘙痒の強度の日内変動を反映できた。この新規瘙痒評価法が,瘙痒の日内変動に合わせたきめこまかな薬剤投与時間の調整など,患者ごとに最適化した治療設計や各種治療の効果を評価するために有用と考えられ報告した。