{"title":"[工作环境测量用活性炭吸附剂萃取效率与有机溶剂浓度的关系]。","authors":"Hironobu Abiko","doi":"10.1539/sangyoeisei.2019-023-W","DOIUrl":null,"url":null,"abstract":"労働安全衛生法に基づく作業環境測定での有機ガス (厳密には,室温付近において液体である有機溶剤からの 蒸発により発生するものは有機溶剤蒸気とする定義があ るが,以降では既に気化した有機溶剤を指す語句として 有機ガスと記述する.)の測定方法には,活性炭などの捕 集剤が充填された捕集管(サンプリング・チューブ)と 吸引ポンプにより一定時間の濃縮捕集を行った後,管の 内部より捕集剤を取り出して,二硫化炭素をはじめとす る各種の有機溶媒で対象の有機ガス成分をこれから抽出 し,ガスクロマトグラフで測定を行う固体捕集法があ る.この方法における現状の課題のひとつとして,測 定対象である有機ガスの種類や濃度の低さによっては捕 集剤からの抽出効率(脱着率)が低下し,測定の精度に 影響を生じることが指摘されている. 以前に筆者は本誌等において,近年の日本国内での実 際の捕集管製品に用いられた各種の活性炭捕集剤,およ び一般の市場へ供給される高比表面積の成形活性炭を使 用して,活性炭試料の多孔性と脱着率との関係について 検討した結果を報告した .そこでは,高比表面積の活 性炭は表面積の発達による吸着能の強さが抽出を妨げる ために,特に低濃度の有機ガスでの高い脱着率を得るた めには適さないと考えられた.また,同程度の比表面積 の場合,石油系球状活性炭は椰子殻活性炭よりも安定し て良好な脱着率を示した.以上は脱着率の改善を捕集剤 の観点から検討することを目的としたものであったが, 前述の通り脱着率は測定の対象である有機溶剤の種類に よっても大きく変化することが以前から指摘されており, これらの関係についての調査・研究と議論は現在もなお 続いている.しかし,作業環境測定の対象となる有機溶 剤の種類は非常に多く,それぞれの脱着率を様々な種類 の捕集管および捕集剤に関して検討することは極めて大 きな労力と時間を要する作業である. ここで,これまでに報告されている活性炭捕集剤の脱 着率の測定結果については,ほとんどの場合に各有機溶 剤に対する具体的な平均値や標準偏差を一覧表として示 すかたちで議論が進められている.しかし,それらの 詳細な数値を別個の新たな作業環境測定にそのまま適用 できるかどうかについては難しい点が多いと考えられる. つまり,これらの脱着率は同一の捕集管製品,また同一 の捕集剤を用いた場合であったとしても,測定に用いる 分析機器(ガスクロマトグラフ)での個々の製品の特性 に基づく違い,使用する抽出溶媒(脱着溶媒)の違い, さらに一連の作業に対する測定者の習熟度の違いなどの 測定におけるさまざまな要素によって値に違いが生じる ことが予想されるためである.以上の観点より今後のこ れらのデータの活用においては,複数の実験および測定 者による結果を相互に比較したうえで,測定機器や実験 器材,測定条件の違いなどに起因する影響の出来るだけ 少ない,より普遍的な傾向を見出していくことが望まし く重要ではないかと考えられる. ここで本稿では,過去の活性炭捕集管(捕集剤)によ る脱着率の報告値を各有機ガス成分の濃度を基準として グラフ化し,それぞれの濃度に対する値の変化の傾向の 比較を試みた.その結果,それらの傾向についてはおお まかな区分がなされるように見受けられた.以降にその 結果を報告する. 産衛誌 2020; 62(5): 192–197","PeriodicalId":40039,"journal":{"name":"Sangyo eiseigaku zasshi = Journal of occupational health","volume":"62 5","pages":"192-197"},"PeriodicalIF":0.0000,"publicationDate":"2020-10-09","publicationTypes":"Journal Article","fieldsOfStudy":null,"isOpenAccess":false,"openAccessPdf":"https://sci-hub-pdf.com/10.1539/sangyoeisei.2019-023-W","citationCount":"1","resultStr":"{\"title\":\"[Dependence of the extraction efficiency of activated carbon adsorbents for work environment measurement on the concentration of organic solvents].\",\"authors\":\"Hironobu Abiko\",\"doi\":\"10.1539/sangyoeisei.2019-023-W\",\"DOIUrl\":null,\"url\":null,\"abstract\":\"労働安全衛生法に基づく作業環境測定での有機ガス (厳密には,室温付近において液体である有機溶剤からの 蒸発により発生するものは有機溶剤蒸気とする定義があ るが,以降では既に気化した有機溶剤を指す語句として 有機ガスと記述する.)の測定方法には,活性炭などの捕 集剤が充填された捕集管(サンプリング・チューブ)と 吸引ポンプにより一定時間の濃縮捕集を行った後,管の 内部より捕集剤を取り出して,二硫化炭素をはじめとす る各種の有機溶媒で対象の有機ガス成分をこれから抽出 し,ガスクロマトグラフで測定を行う固体捕集法があ る.この方法における現状の課題のひとつとして,測 定対象である有機ガスの種類や濃度の低さによっては捕 集剤からの抽出効率(脱着率)が低下し,測定の精度に 影響を生じることが指摘されている. 以前に筆者は本誌等において,近年の日本国内での実 際の捕集管製品に用いられた各種の活性炭捕集剤,およ び一般の市場へ供給される高比表面積の成形活性炭を使 用して,活性炭試料の多孔性と脱着率との関係について 検討した結果を報告した .そこでは,高比表面積の活 性炭は表面積の発達による吸着能の強さが抽出を妨げる ために,特に低濃度の有機ガスでの高い脱着率を得るた めには適さないと考えられた.また,同程度の比表面積 の場合,石油系球状活性炭は椰子殻活性炭よりも安定し て良好な脱着率を示した.以上は脱着率の改善を捕集剤 の観点から検討することを目的としたものであったが, 前述の通り脱着率は測定の対象である有機溶剤の種類に よっても大きく変化することが以前から指摘されており, これらの関係についての調査・研究と議論は現在もなお 続いている.しかし,作業環境測定の対象となる有機溶 剤の種類は非常に多く,それぞれの脱着率を様々な種類 の捕集管および捕集剤に関して検討することは極めて大 きな労力と時間を要する作業である. ここで,これまでに報告されている活性炭捕集剤の脱 着率の測定結果については,ほとんどの場合に各有機溶 剤に対する具体的な平均値や標準偏差を一覧表として示 すかたちで議論が進められている.しかし,それらの 詳細な数値を別個の新たな作業環境測定にそのまま適用 できるかどうかについては難しい点が多いと考えられる. つまり,これらの脱着率は同一の捕集管製品,また同一 の捕集剤を用いた場合であったとしても,測定に用いる 分析機器(ガスクロマトグラフ)での個々の製品の特性 に基づく違い,使用する抽出溶媒(脱着溶媒)の違い, さらに一連の作業に対する測定者の習熟度の違いなどの 測定におけるさまざまな要素によって値に違いが生じる ことが予想されるためである.以上の観点より今後のこ れらのデータの活用においては,複数の実験および測定 者による結果を相互に比較したうえで,測定機器や実験 器材,測定条件の違いなどに起因する影響の出来るだけ 少ない,より普遍的な傾向を見出していくことが望まし く重要ではないかと考えられる. ここで本稿では,過去の活性炭捕集管(捕集剤)によ る脱着率の報告値を各有機ガス成分の濃度を基準として グラフ化し,それぞれの濃度に対する値の変化の傾向の 比較を試みた.その結果,それらの傾向についてはおお まかな区分がなされるように見受けられた.以降にその 結果を報告する. 産衛誌 2020; 62(5): 192–197\",\"PeriodicalId\":40039,\"journal\":{\"name\":\"Sangyo eiseigaku zasshi = Journal of occupational health\",\"volume\":\"62 5\",\"pages\":\"192-197\"},\"PeriodicalIF\":0.0000,\"publicationDate\":\"2020-10-09\",\"publicationTypes\":\"Journal Article\",\"fieldsOfStudy\":null,\"isOpenAccess\":false,\"openAccessPdf\":\"https://sci-hub-pdf.com/10.1539/sangyoeisei.2019-023-W\",\"citationCount\":\"1\",\"resultStr\":null,\"platform\":\"Semanticscholar\",\"paperid\":null,\"PeriodicalName\":\"Sangyo eiseigaku zasshi = Journal of occupational health\",\"FirstCategoryId\":\"1085\",\"ListUrlMain\":\"https://doi.org/10.1539/sangyoeisei.2019-023-W\",\"RegionNum\":0,\"RegionCategory\":null,\"ArticlePicture\":[],\"TitleCN\":null,\"AbstractTextCN\":null,\"PMCID\":null,\"EPubDate\":\"2020/4/16 0:00:00\",\"PubModel\":\"Epub\",\"JCR\":\"Q4\",\"JCRName\":\"Medicine\",\"Score\":null,\"Total\":0}","platform":"Semanticscholar","paperid":null,"PeriodicalName":"Sangyo eiseigaku zasshi = Journal of occupational health","FirstCategoryId":"1085","ListUrlMain":"https://doi.org/10.1539/sangyoeisei.2019-023-W","RegionNum":0,"RegionCategory":null,"ArticlePicture":[],"TitleCN":null,"AbstractTextCN":null,"PMCID":null,"EPubDate":"2020/4/16 0:00:00","PubModel":"Epub","JCR":"Q4","JCRName":"Medicine","Score":null,"Total":0}
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[Dependence of the extraction efficiency of activated carbon adsorbents for work environment measurement on the concentration of organic solvents].
労働安全衛生法に基づく作業環境測定での有機ガス (厳密には,室温付近において液体である有機溶剤からの 蒸発により発生するものは有機溶剤蒸気とする定義があ るが,以降では既に気化した有機溶剤を指す語句として 有機ガスと記述する.)の測定方法には,活性炭などの捕 集剤が充填された捕集管(サンプリング・チューブ)と 吸引ポンプにより一定時間の濃縮捕集を行った後,管の 内部より捕集剤を取り出して,二硫化炭素をはじめとす る各種の有機溶媒で対象の有機ガス成分をこれから抽出 し,ガスクロマトグラフで測定を行う固体捕集法があ る.この方法における現状の課題のひとつとして,測 定対象である有機ガスの種類や濃度の低さによっては捕 集剤からの抽出効率(脱着率)が低下し,測定の精度に 影響を生じることが指摘されている. 以前に筆者は本誌等において,近年の日本国内での実 際の捕集管製品に用いられた各種の活性炭捕集剤,およ び一般の市場へ供給される高比表面積の成形活性炭を使 用して,活性炭試料の多孔性と脱着率との関係について 検討した結果を報告した .そこでは,高比表面積の活 性炭は表面積の発達による吸着能の強さが抽出を妨げる ために,特に低濃度の有機ガスでの高い脱着率を得るた めには適さないと考えられた.また,同程度の比表面積 の場合,石油系球状活性炭は椰子殻活性炭よりも安定し て良好な脱着率を示した.以上は脱着率の改善を捕集剤 の観点から検討することを目的としたものであったが, 前述の通り脱着率は測定の対象である有機溶剤の種類に よっても大きく変化することが以前から指摘されており, これらの関係についての調査・研究と議論は現在もなお 続いている.しかし,作業環境測定の対象となる有機溶 剤の種類は非常に多く,それぞれの脱着率を様々な種類 の捕集管および捕集剤に関して検討することは極めて大 きな労力と時間を要する作業である. ここで,これまでに報告されている活性炭捕集剤の脱 着率の測定結果については,ほとんどの場合に各有機溶 剤に対する具体的な平均値や標準偏差を一覧表として示 すかたちで議論が進められている.しかし,それらの 詳細な数値を別個の新たな作業環境測定にそのまま適用 できるかどうかについては難しい点が多いと考えられる. つまり,これらの脱着率は同一の捕集管製品,また同一 の捕集剤を用いた場合であったとしても,測定に用いる 分析機器(ガスクロマトグラフ)での個々の製品の特性 に基づく違い,使用する抽出溶媒(脱着溶媒)の違い, さらに一連の作業に対する測定者の習熟度の違いなどの 測定におけるさまざまな要素によって値に違いが生じる ことが予想されるためである.以上の観点より今後のこ れらのデータの活用においては,複数の実験および測定 者による結果を相互に比較したうえで,測定機器や実験 器材,測定条件の違いなどに起因する影響の出来るだけ 少ない,より普遍的な傾向を見出していくことが望まし く重要ではないかと考えられる. ここで本稿では,過去の活性炭捕集管(捕集剤)によ る脱着率の報告値を各有機ガス成分の濃度を基準として グラフ化し,それぞれの濃度に対する値の変化の傾向の 比較を試みた.その結果,それらの傾向についてはおお まかな区分がなされるように見受けられた.以降にその 結果を報告する. 産衛誌 2020; 62(5): 192–197