{"title":"合并严重肺动脉高压导致脓毒性休克的延误诊断1例","authors":"Yumi Yamamoto, M. Yamaoka, Eriko Minami, Ryoko Yamamoto, Naohisa Matsumoto, Daisuke Okabe, K. Nishimura, T. Kurasako","doi":"10.3918/JSICM.28_459","DOIUrl":null,"url":null,"abstract":"患者:71歳,女性,140 cm,47 kg 。 既往歴:特発性間質性肺炎,気管支喘息があり,在 宅酸素療法を導入中であった。モンテルカストナトリ ウム,テオフィリン,サルメテロールキシナホ酸塩, 塩酸プロカテロール,L-カルボシステインを内服中で あったが,ステロイドなどの免疫抑制薬の内服はな かった。 現病歴:定期受診2ヶ月前から安静時の呼吸困難が 出現し,1ヶ月前には乾性咳嗽を認めていた。定期診 察のために来院した呼吸器内科外来の待合室で突然の 嘔吐後,意識レベルが低下し,橈骨動脈触知不能となっ た。初期対応時,JCSでIII-300の意識障害を認め,呼 吸は浅く喘ぎ様であった。体温は36.9°C,心拍数は 82/minで,頸動脈の触知は可能であったが,非観血的 血圧測定と橈骨動脈の触知は不可能であった。経胸壁 心臓超音波検査では,右室の著明な拡大と,それに伴 う左室の圧排を認め(Fig. 1a),三尖弁圧較差は66 mmHg(4ヶ月前,40 mmHg)と上昇していた。経過か ら肺血栓塞栓症を疑い,ICUへ入室した。 ICU入室後,直ちに気管挿管・人工呼吸を開始した が,P/F比は396で酸素化は維持されていた。観血的 血圧測定による収縮期血圧は 40 mmHg未満であっ た。アドレナリンの静注を開始し,肺血栓塞栓症を念 頭に未分画ヘパリンを5,000単位投与した後,造影CT を撮影した。造影CTでは明らかな塞栓子を認めず (Fig. 1b),肺野条件では両肺野のすりガラス陰影の増 悪を認めた(Fig. 1c)。その後の肺動脈カテーテル検 査にて,肺動脈圧は体血圧 110/65 mmHgに対し, 75/40 mmHgと上昇していた。血液検査では,シアル 化糖鎖抗原KL-6 1,333 U/mL,脳性ナトリウム利尿ペ プチド 869.9 pg/mLと上昇を認めた。また,白血球数 14.9×103/μL,乳酸値6.4 mmol/Lと上昇を認めた が,膀胱温36.9°C,CRP値0.16 mg/dLと正常であり, 臓器不全を示唆する所見も認めなかった。前述の所見 から,肺血栓塞栓症を否定し,間質性肺炎の急性増悪 とそれに伴う重症肺高血圧症と診断し,メチルプレド ニゾロン1,000 mg/dayの投与を開始した。 しかし,ICU入室8時間後に39.8°Cの発熱とプロカ ルシトニン値の上昇(2.63 ng/mL)を認めたため,血 液培養・尿培養・喀痰培養を採取した後,ピペラシリ ン/タゾバクタムの投与を開始した。培養採取翌日に 血液培養2/2セットから大腸菌が検出され,菌血症で あったことが明らかとなった。来院時の造影CTでは 明らかな腸管虚血・逆行性尿路感染・肝胆道系異常・ 膿瘍形成を示唆する所見は認めず,喀痰培養,尿培養 は陰性であった。腹痛・関節痛などの局所異常所見も 重症肺高血圧症の存在により診断が遅れた敗血症性ショックの 1例","PeriodicalId":22583,"journal":{"name":"The Japanese Society of Intensive Care Medicine","volume":"78 1","pages":"459-460"},"PeriodicalIF":0.0000,"publicationDate":"2021-09-01","publicationTypes":"Journal Article","fieldsOfStudy":null,"isOpenAccess":false,"openAccessPdf":"","citationCount":"0","resultStr":"{\"title\":\"Delayed diagnosis of septic shock due to comorbid severe pulmonary hypertension: a case report\",\"authors\":\"Yumi Yamamoto, M. Yamaoka, Eriko Minami, Ryoko Yamamoto, Naohisa Matsumoto, Daisuke Okabe, K. Nishimura, T. Kurasako\",\"doi\":\"10.3918/JSICM.28_459\",\"DOIUrl\":null,\"url\":null,\"abstract\":\"患者:71歳,女性,140 cm,47 kg 。 既往歴:特発性間質性肺炎,気管支喘息があり,在 宅酸素療法を導入中であった。モンテルカストナトリ ウム,テオフィリン,サルメテロールキシナホ酸塩, 塩酸プロカテロール,L-カルボシステインを内服中で あったが,ステロイドなどの免疫抑制薬の内服はな かった。 現病歴:定期受診2ヶ月前から安静時の呼吸困難が 出現し,1ヶ月前には乾性咳嗽を認めていた。定期診 察のために来院した呼吸器内科外来の待合室で突然の 嘔吐後,意識レベルが低下し,橈骨動脈触知不能となっ た。初期対応時,JCSでIII-300の意識障害を認め,呼 吸は浅く喘ぎ様であった。体温は36.9°C,心拍数は 82/minで,頸動脈の触知は可能であったが,非観血的 血圧測定と橈骨動脈の触知は不可能であった。経胸壁 心臓超音波検査では,右室の著明な拡大と,それに伴 う左室の圧排を認め(Fig. 1a),三尖弁圧較差は66 mmHg(4ヶ月前,40 mmHg)と上昇していた。経過か ら肺血栓塞栓症を疑い,ICUへ入室した。 ICU入室後,直ちに気管挿管・人工呼吸を開始した が,P/F比は396で酸素化は維持されていた。観血的 血圧測定による収縮期血圧は 40 mmHg未満であっ た。アドレナリンの静注を開始し,肺血栓塞栓症を念 頭に未分画ヘパリンを5,000単位投与した後,造影CT を撮影した。造影CTでは明らかな塞栓子を認めず (Fig. 1b),肺野条件では両肺野のすりガラス陰影の増 悪を認めた(Fig. 1c)。その後の肺動脈カテーテル検 査にて,肺動脈圧は体血圧 110/65 mmHgに対し, 75/40 mmHgと上昇していた。血液検査では,シアル 化糖鎖抗原KL-6 1,333 U/mL,脳性ナトリウム利尿ペ プチド 869.9 pg/mLと上昇を認めた。また,白血球数 14.9×103/μL,乳酸値6.4 mmol/Lと上昇を認めた が,膀胱温36.9°C,CRP値0.16 mg/dLと正常であり, 臓器不全を示唆する所見も認めなかった。前述の所見 から,肺血栓塞栓症を否定し,間質性肺炎の急性増悪 とそれに伴う重症肺高血圧症と診断し,メチルプレド ニゾロン1,000 mg/dayの投与を開始した。 しかし,ICU入室8時間後に39.8°Cの発熱とプロカ ルシトニン値の上昇(2.63 ng/mL)を認めたため,血 液培養・尿培養・喀痰培養を採取した後,ピペラシリ ン/タゾバクタムの投与を開始した。培養採取翌日に 血液培養2/2セットから大腸菌が検出され,菌血症で あったことが明らかとなった。来院時の造影CTでは 明らかな腸管虚血・逆行性尿路感染・肝胆道系異常・ 膿瘍形成を示唆する所見は認めず,喀痰培養,尿培養 は陰性であった。腹痛・関節痛などの局所異常所見も 重症肺高血圧症の存在により診断が遅れた敗血症性ショックの 1例\",\"PeriodicalId\":22583,\"journal\":{\"name\":\"The Japanese Society of Intensive Care Medicine\",\"volume\":\"78 1\",\"pages\":\"459-460\"},\"PeriodicalIF\":0.0000,\"publicationDate\":\"2021-09-01\",\"publicationTypes\":\"Journal Article\",\"fieldsOfStudy\":null,\"isOpenAccess\":false,\"openAccessPdf\":\"\",\"citationCount\":\"0\",\"resultStr\":null,\"platform\":\"Semanticscholar\",\"paperid\":null,\"PeriodicalName\":\"The Japanese Society of Intensive Care Medicine\",\"FirstCategoryId\":\"1085\",\"ListUrlMain\":\"https://doi.org/10.3918/JSICM.28_459\",\"RegionNum\":0,\"RegionCategory\":null,\"ArticlePicture\":[],\"TitleCN\":null,\"AbstractTextCN\":null,\"PMCID\":null,\"EPubDate\":\"\",\"PubModel\":\"\",\"JCR\":\"\",\"JCRName\":\"\",\"Score\":null,\"Total\":0}","platform":"Semanticscholar","paperid":null,"PeriodicalName":"The Japanese Society of Intensive Care Medicine","FirstCategoryId":"1085","ListUrlMain":"https://doi.org/10.3918/JSICM.28_459","RegionNum":0,"RegionCategory":null,"ArticlePicture":[],"TitleCN":null,"AbstractTextCN":null,"PMCID":null,"EPubDate":"","PubModel":"","JCR":"","JCRName":"","Score":null,"Total":0}
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Delayed diagnosis of septic shock due to comorbid severe pulmonary hypertension: a case report
患者:71歳,女性,140 cm,47 kg 。 既往歴:特発性間質性肺炎,気管支喘息があり,在 宅酸素療法を導入中であった。モンテルカストナトリ ウム,テオフィリン,サルメテロールキシナホ酸塩, 塩酸プロカテロール,L-カルボシステインを内服中で あったが,ステロイドなどの免疫抑制薬の内服はな かった。 現病歴:定期受診2ヶ月前から安静時の呼吸困難が 出現し,1ヶ月前には乾性咳嗽を認めていた。定期診 察のために来院した呼吸器内科外来の待合室で突然の 嘔吐後,意識レベルが低下し,橈骨動脈触知不能となっ た。初期対応時,JCSでIII-300の意識障害を認め,呼 吸は浅く喘ぎ様であった。体温は36.9°C,心拍数は 82/minで,頸動脈の触知は可能であったが,非観血的 血圧測定と橈骨動脈の触知は不可能であった。経胸壁 心臓超音波検査では,右室の著明な拡大と,それに伴 う左室の圧排を認め(Fig. 1a),三尖弁圧較差は66 mmHg(4ヶ月前,40 mmHg)と上昇していた。経過か ら肺血栓塞栓症を疑い,ICUへ入室した。 ICU入室後,直ちに気管挿管・人工呼吸を開始した が,P/F比は396で酸素化は維持されていた。観血的 血圧測定による収縮期血圧は 40 mmHg未満であっ た。アドレナリンの静注を開始し,肺血栓塞栓症を念 頭に未分画ヘパリンを5,000単位投与した後,造影CT を撮影した。造影CTでは明らかな塞栓子を認めず (Fig. 1b),肺野条件では両肺野のすりガラス陰影の増 悪を認めた(Fig. 1c)。その後の肺動脈カテーテル検 査にて,肺動脈圧は体血圧 110/65 mmHgに対し, 75/40 mmHgと上昇していた。血液検査では,シアル 化糖鎖抗原KL-6 1,333 U/mL,脳性ナトリウム利尿ペ プチド 869.9 pg/mLと上昇を認めた。また,白血球数 14.9×103/μL,乳酸値6.4 mmol/Lと上昇を認めた が,膀胱温36.9°C,CRP値0.16 mg/dLと正常であり, 臓器不全を示唆する所見も認めなかった。前述の所見 から,肺血栓塞栓症を否定し,間質性肺炎の急性増悪 とそれに伴う重症肺高血圧症と診断し,メチルプレド ニゾロン1,000 mg/dayの投与を開始した。 しかし,ICU入室8時間後に39.8°Cの発熱とプロカ ルシトニン値の上昇(2.63 ng/mL)を認めたため,血 液培養・尿培養・喀痰培養を採取した後,ピペラシリ ン/タゾバクタムの投与を開始した。培養採取翌日に 血液培養2/2セットから大腸菌が検出され,菌血症で あったことが明らかとなった。来院時の造影CTでは 明らかな腸管虚血・逆行性尿路感染・肝胆道系異常・ 膿瘍形成を示唆する所見は認めず,喀痰培養,尿培養 は陰性であった。腹痛・関節痛などの局所異常所見も 重症肺高血圧症の存在により診断が遅れた敗血症性ショックの 1例